2016年8月30日火曜日

「日銀の損失ガー」は無意味

新聞マスコミは「国の借金ガー」のフレーズが大好きですが、御用エコノミストは「日銀の損失ガー」のフレーズが大好きなようです。「金融緩和で日銀の損失ガー」というやつです。しかし、日銀の損失は実質的に意味がありません。なぜでしょうか。

日銀は発券銀行だからです。日銀のバランスシートの上では、現金(銀行券および日銀当座預金)は負債として発行されるため、おカネを発行すればするほど日銀の負債が増加します。逆に言えば、日銀の負債が増えれば増えるほど、世の中のおカネが増えます。

とはいえ、ただ単に日銀が現金を発行すると負債だけが増えるので、日銀のバランスシートは損失だらけになってしまいます。なので、普通は資産を計上して、それに見合うだけ負債として現金を発行します。資産と負債のバランスを取るわけです。で、日銀に損失が出るとは、このバランスが崩れることを意味しますので、資産より負債が多くなる。つまり、資産総額よりも、発行した現金の総額が多くなるということです。極めて単純に言えばです。

つまり、バランスシートの上において、日銀の資産総額よりも、現金の発行額が多いというだけです。何か問題ですか?

日銀のバランスシート上に資産の不足があっても、それはバランスシート上の仕組みとして「美しくない」だけであって、実体経済にとっては、何の損失にもなりません。もちろん民間企業なら大問題です。民間企業はカネを増やすために存在しているのですから。

しかし日銀はカネを増やすための存在ではなく、貨幣システムの全体機能の一つに過ぎないからです。だから日銀の帳簿上の損失に損失としての意味はないのです。貨幣システムの機能を保持するためには、日銀のバランスシートの美しさは必要条件ではないからです。それでも、もし形式を整えるのであれば、何かを資産に計上してバランスシートを補修すればよいでしょう。

バーナンキよろしく、ケチャップを資産に計上してもいいんですよ。

「日銀の損失ガー」は、この事実を直視すべきだ。