2018年4月29日日曜日

新作著書「最強のベーシックインカム」

「最強のベーシックインカム」
AIとロボットが働く時代のおカネのシステム
毎月1万円から始めて10年後に1人10万円

単行本(ソフトカバー)
出版社: サンクチュアリ出版
発行:SIBAA BOOKS

Amazonのほか、書店にてお買い求めできます。

特長:
経済の初心者向けに基本的な部分をしっかり説明しました。親しみやすい会話形式で理解度もUP。おカネが不足すると経済が回らなくなるという、誰でもわかる簡単な話から始めて、人工知能やロボットにより大量失業が生じる問題を通じて、ベーシックインカムの必要性をスムーズにご理解いただけます。またベーシックインカムの導入方法や財源についてもご説明します。

<目次より一部を抜粋>

第一章 政府は今すぐおカネをばらまこう
・国民がおカネをもらえるワケ
 おカネを配って景気回復しよう
 インフレでも生活は困らない
・人工知能とロボットが仕事を奪う時代
 10~20年後に仕事の半分がなくなる?
 日本は人手不足じゃないのか?
・ベーシックインカムに増税は必要か?
 原則=より多く作れば豊かになる
 貯蓄ではなく循環が社会保障を維持する
・ベーシックインカムのサブタイプ
 ベーシックインカムの導入方法

第二章 「生活のための労働」の終焉
・通用しないこれまでの常識
 働けば働くほど賃金は下がる
 企業の生産性を高めても賃金は増えない
 最低賃金を上げるほど格差が広がる
・おカネを配ると社会がダメになるは本当か
 働く人が減って経済が衰退する?
 介護職の担う人がいなくなる?
 働いている人が損をする?
 人間が堕落して進歩しなくなる?

第三章 ベーシックインカムで問題解決
・ベーシックインカムのメリット
 チャレンジングで明るい社会
 経済の劇的な回復と安定化
 生産性の向上と所得の向上
 資源の効率的利用
 子供の貧困対策と人口増加
 地方経済と農業の活性化
 犯罪や自殺の発生率低下
 社会保障制度の効率化と充実
・グローバリズムや構造改革への対症療法

第四章 おカネに縛られない自由な社会
・ベーシックインカムの基本思想
 ユートピアとしての未来社会
 持続可能なベーシックインカム
・未来はディストピアになるのか?
・すぐ始められる月1万円からのベーシックインカム





誰でも理解できる通貨制度に改革しよう

量的緩和にしろマイナス金利にしろ、MBやMSにしろ、大多数の国民はほとんど理解できていないはずです。なぜなら「仕組みがややこしい」からです。誰でも理解できる簡単かつ自然な通貨制度へ変更すべきでしょう。

通貨制度を変更すると聞くと、私達の生活が激変するような不安を覚えるかも知れません。例えば今の紙幣や硬貨が使えなくなるとか、預金通帳が使えなくなるとか、今までのやり方が変わってしまうのではないか、という不安です。

しかし私達のやり方を今までとまったく変えることなく、通貨制度は変更可能です。なぜなら、私達が関係する部分よりもずっと川上の仕組み、つまり「おカネの発行の仕方」を変えるだけであって、企業や個人には直接関係しないからです。発行されるおカネは今までとまったく同じで、同じように流通します。

具体的に言えば、100%マネー制度あるいは政府通貨制度と呼ぶ方法です。

多くの国民は「おカネは日銀が発行する」と思っているでしょう。しかし、そんな単純な話であれば、量的緩和政策もマイナス金利政策も必要ありません。日銀がおカネを発行するだけで済むからです。実際には「おカネは日銀が発行する」のではなく、事実上「市中銀行がすべてのおカネを発行」しています。それだけでも十分にややこしい制度でしょう。

通貨改革の骨子は単純です。「おカネはすべて日銀が発行する」という制度にすれば良いだけです。日銀がすべてのおカネを発行する、これが100%(日銀)マネーです。市中銀行はおカネの発行を停止し、日銀あるいは政府がすべてのおカネを発行する。

例えば、量的緩和はなぜ効果がなかなか現れないのか?それは100%マネーではないからです。もし100%マネーであれば、日銀がおカネを増やせば即、世の中のおカネが増えます。しかし現在の金融制度では、日銀がおカネを増やしても、それが市中銀行によって市中(個人や企業)に貸し出されない限り、世の中のおカネは1円も増えない仕組みになっています。そのため日銀がおカネを発行しても、世の中のおカネがなかなか増えず、効果が現れにくいのです。

こうした例はたくさんあります。ならば何もややこしい制度を維持する必要などありません。わざわざ複雑な制度にすることで大多数の国民が理解できず、経済学者が複雑な数式や理論を駆使しなければ通貨供給を予測できなくなっています。国民に理解不能な通貨制度は、民主政治すら危うくするでしょう。

そして100%マネーは有名な経済学者であるフィッシャーやフリードマン氏らが提唱していた制度でもあり、理論の信頼性は十分あると言えるでしょう。

「おかねはすべて日銀(=国)が発行する」という、普通の国民が普通に考えているおカネの形を制度にすれば良いだけなのです。そうすればバブルとバブル崩壊の問題も解決できるのです。

2018年4月28日土曜日

社会主義失敗の原因は市場の否定

社会主義(ソビエト等)の失敗の原因は「市場原理の否定と排除」を行なったことであり、ベーシックインカムの推進が社会主義と同じ失敗を招くことはありません。

ベーシックインカムを社会主義的な政策であると考え、ゆえに、ベーシックインカム政策を推進すると社会主義と同じように経済が失敗すると考えている人がいるようです。しかし社会主義国(共産主義国)の経済が失敗した根本的な原因は「市場原理の否定と排除」にあります。

マルクスは当時の資本主義社会における労働者の悲惨な境遇を目の当たりにして、その原因が市場経済にあると考えたわけです。実際、何の対策も施さずに市場経済を放置すると、労働者は搾取され、貧富の格差が拡大することはあまりに明白です。つい最近でも中国を見ればそれは明らかでしょう。

そこでマルクスの影響を強く受けた共産主義国家では、諸悪の根源と考えた市場原理を否定し、市場原理を排除した経済を構築しました。計画経済です。しかし市場メカニズムを排除したことにより、資源の最適配分が機能しなくなりました。資源の利用効率が低下し、研究開発も生産も非効率化して、結果として資本主義経済の先進国に大きく遅れを取ることになったわけです。

資源の利用効率が低いにもかかわらず、それに加えてソビエトでは軍事産業が毎年のように巨大化して資源の多くを奪っていましたから、なおさら人々の生活を圧迫する結果となり、ソビエトは経済的に破綻してしまいました。

一方、今でも自らを社会主義国だと主張している中国は、実際には強烈な資本主義国であって、市場原理に基づいて経済が動いています。社会主義を主張したところで、市場原理を用いなければ、資源の配分を最適化することは難しいと考えられます。

とはいえ、中国における貧富の格差、労働搾取の実態は、むき出しの市場原理が社会に歪みをもたらすことも証明しています。ですから、市場原理を採用しつつも、それによって発生する社会の歪みを是正する政策が同時に必要となります。そのため多くの資本主義先進国では、市場原理に加えて再分配政策を併用することで社会の不安定化を防いでいるわけです。

ただし、再分配政策は市場原理の機能を損なう傾向もあるため、そのバランスに苦慮することになります。そうした中で、ベーシックインカム政策は市場原理の機能を大きく損なうことなく、市場原理がもたらす社会の歪みを解消する方法として注目されています。

一方、社会主義の失敗を「人々が働かなくなったから」と思っている人も多いような気がします。昔から新聞マスコミでは社会主義国における人々の労働モラルの低さを何度も何度も繰り返し報道してきましたから。そうした側面がないとは言えないでしょう。しかし仮に社会主義国において労働者のモチベーションが高い状況(ミクロ)であったとしても、資源の配分が適切でなければ(マクロ)、経済は停滞することになります。

また、社会主義国におけるモチベーションの低さは、「働いても働かなくても給料が同じ」ためであると何度も報道されてきましたから、そうだと思い込んでいる人も多いと思います。しかし、ソビエトでは生産が非効率的であると同時に、軍事産業へ資源を吸い取られた結果、「働いても働かなくても、生活が一向に良くならないどころか、ますます貧しくなる」という状況にあったと考えられます。これでは働かなくなるでしょう。

もし仮に、労働の結果として毎年のように生活が向上するのであれば、多少ズルしてサボっている奴が同じ給料を貰っているのを目撃したとしても、それで「働くのや~めた」となるとは思えません。年功序列時代の日本みたいなものです。

この場合でも、ベーシックインカムは「働かなくても所得は得られるが、働けばより多くの所得を得られる」わけですから、そもそも「働いても働かなくても給料が同じ」ではありません。

ベーシックインカムを社会主義的な政策であると誤解し、なおかつ、社会主義の失敗の原因も十分に理解しないまま「ベーシックインカムを実施すると社会主義と同じ失敗になる」と懸念することは、意味のないことです。

2018年4月25日水曜日

新・公共事業のすすめ

公共事業と聞けば新聞マスコミはパブロフの犬のように「バラマキだー」と大騒ぎしますが、そもそも公共事業の何が問題なのか不明確です。正しい公共事業なら供給力を向上して国民を豊かにします。

そもそも公共事業の何が問題なのか?それは公共事業そのものだけでは供給力を増やさない点にあります。例えば日本全国に新たな道路を作っても供給力は増えませんから、国民生活は豊かになりません。もちろんデフレであれば公共事業を通じて国民におカネが分配される効果はありますから必ずしもムダとは言えません。地震や台風などからの防災という点でもインフラは必要不可欠なものです。しかし供給力の点では効果は限定されますから、経済政策として従来型の公共事業を行うことはあまり効果的ではありません。

もし日本が開発途上であって、道路がないのであれば、公共事業によって道路を建設することで物流が活発化し、民間投資も巻き込んで、産業全体の拡大を促すはずです。それは供給力の増大を通じて国民生活を豊かにするはずです。ですからインフラの不足している国がインフラ投資を行なうことは供給力の拡大につながる効果的な支出です。

しかし、日本のようにインフラが十分に普及している場合、従来のインフラである道路、港湾、空港、鉄道のような公共事業を行っても、大幅な供給力の向上は期待できないわけです。しかしインフラはそれだけなのでしょうか?

例えばテクノロジーがあります。確かに民間によるテクノロジーへの投資は活発ですが、リターンが低くてリスクが大きい基礎研究には民間も躊躇するでしょう。そこで、基礎研究こそ新たな時代の「インフラ」であると考え、政府が積極的に公共事業(研究事業)を行うわけです。あたかも途上国の道路開発のように、基礎研究が完成すれば、そこに民間投資が集まってきて、大きな産業に育つ可能性があるわけです。それは供給力を高め、国民を豊かにします。

公共事業と聞けば条件反射で反対するのではなく、供給力を増やせるか増やせないか、といった観点からムダか、ムダではないかを客観的に判断すべきでしょう。その意味では従来型の公共事業に代わって、新・公共事業としての基礎研究事業にますますおカネを投入すべきだと思われます。少子高齢化に対応するためにも、人工知能やロボット、3Dプリンタ、あるいは再生可能エネルギーや資源リサイクルの分野における研究は、ますます拡大すべきです。

そして最も重要な点は「選択と集中をしない」ことです。研究において選択と集中をすれば、必ず失敗します。予期せぬことから大発明は生まれるのです。つまり「わけのわからない研究もどんどん予算を付けて」、とにかく研究させることが重要です。

もちろん、申し上げるまでもなく、財源は通貨を発行すれば良いだけですから。

2018年4月21日土曜日

引きこもりに社会変革の担い手を期待

多くの人々が日々の労働、残業に次ぐ残業に追われる毎日。社会問題あるいは経済問題をじっくり考える時間などほとんどないでしょう。実際、自分もそうでしたから。そんななか、日本に大勢いる引きこもりの皆さんの活躍に期待しているのです。

引きこもりと言えば、とかく一般の人には「ネガティブ」な印象しかないでしょうが、自分は正反対です。引きこもりには労働者には無い「自由な時間がある」。つまり、考える時間がたっぷりあるのです。この「考える」行為は非常に重要であり、一般大衆のように、短絡的にマスコミの印象操作に載せられて右往左往するのではなく、自分の頭でじっくり考えて判断できる。

現代はインターネット時代であり、ネットを利用することによって、マスコミに頼るだけでは得られない、多面的で深い知識を得ることができます。情報を収集分析する点において、引きこもりはハンデがあるどころか、明らかに一般の人よりも優れているとさえ考えられます。

他人とのコミュニケーションがないことが、考え方に偏りを生じると思うかもしれません。しかしフェイス・トゥ・フェイスがないだけであって、ネット世界におけるコミュニケーションはむしろ現実世界よりも多様かつ活発であり、それは最近の若者のSNSへの対応を見てもわかるでしょう。

むしろ、同じような話を何回も何回も繰り返すだけのマスコミの報道に依存しないだけ、より客観的で多面的な判断も可能だと思います。

ですから、引きこもりの皆さんこそ、社会変革のための意識を持ち、自分の頭でその方法を考える担い手になれるはずだと考えているのです。もちろん、彼らが国会前に集まって騒いだりすることはないでしょう。しかし現代はインターネットの時代であり、社会変革のためにデモをやらなきゃならないわけではありません。インターネットを利用して、自らの考えを発信し続け、あるいは他の人々とバーチャル空間で連携することで十分に活動できるはずです。

引きこもりは日本の改革をリードする担い手となる可能性を秘めています。一人ひとりの力は弱いかも知れませんが、彼らの活動が日本を変えることをひそかに期待しています。引きこもり、大いに結構です。できれば、その立場を生かしてネットによる社会変革への参画をお願いしたいのです。


2018年4月19日木曜日

緊縮に反対だから安倍しか居ない

安倍がどうなろうと知った事ではないが、安倍政権が崩壊すれば緊縮政権が誕生することになる。極めて深刻だ。もしさらなる緩和政権が誕生するなら、いつ政権崩壊してもかまわないのだが。

安倍政権が政治週刊誌ネタのような問題で支持率が低下している。野党はどうせ政権など取れるはずもなく、とにかく中国と韓国に譲歩しない安倍を引きずり下ろせば、あとは首相が自民党の誰であろうと構わないのだろう。だから「自民党を許さない」ではなく「アベを許さない」という個人攻撃になる。

野党はアベさえ降ろせば目的達成だろうが、国民はその後が困る。自民党内では次期首相の座をを狙って水面下の動きが活発化しているらしい。しかし次期首相候補とされる石破、岸田、野田氏らはいずれも財政緊縮派だという。ちなみにこの機に乗じて庶民の人気取り発言に忙しい小泉進次郎氏も緊縮だ。

普通に考えて次期政権が「緊縮政権」になることはほぼ間違いない。つまり、金融緩和の縮小、財政支出の抑制、増税である。結果としてマネーストックの伸びが減少し、通貨の供給不足は経済をデフレへ逆戻りさせることになる。恐らく株式市場は下落し、円高になる。それはますますデフレを悪化させる要因となるでしょう。

こんな緊縮シナリオが目に見えているのに、野党やマスコミと来たら、とにかく目の前のこと、安倍が、安倍が、で先のことなど考えていないとしか思えない。あとは野となれ山となれである。まあマスコミにとって為政者を叩くのはある種のお祭り騒ぎなのだろう。こんな新聞やテレビが報道の公平性などと「放送法改定」に反対しているのだから、笑うしかないw。まさにマスコミ主導で国民が振り回されるポピュリズム政治も極まった感じですね。

こんなお祭りマスコミしかない日本じゃあ、まともな民主主義など機能しないでしょうけど、それにしても、与党も野党も政治家のほとんどが「緊縮派」だという異常な政治はいい加減にして欲しい。これでは日本の衰退は決まったようなものです。

既存の殻を打ち破るべく新しい政党の登場が待たれますが、ところが最近、新党として出てくる政党もことごとく「緊縮派」とくるからすごいw。なぜ人工知能やロボットのようなテクノロジーの時代に相応しい「明るい未来の描ける政党」が出てこないのか?そういう政党が出てくれば、安倍政権を支持する必要はまったくないのだが。

こんな調子だと、自民党に投票しても野党に投票しても日本はおしまい。いよいよ選挙で投票する先がなくなり、投票を「積極的に棄権」をするしか選択肢が無くなるのかも知れませんね。



2018年4月16日月曜日

増税するなら消費税じゃなく金融資産課税

基本的にデフレ期に増税する必要はまったくないと思います。それでも増税したいのであれば、消費税は大間違いであり、膨れ上がり続ける金融資産に課税すべきでしょう。

なぜ消費税の増税が間違いなのか。勤労世帯における有業者1人当たりの給与と、世帯1人当たりの消費金額の長期推移をみます(単位は月額円)。給与所得者の所得が低下し、消費も下がり続けています(消費支出には税も含むので、実消費は消費税の分だけさらに減少している)。このような状況で消費税を増税すれば国民が貧困化するだけでなく、間違いなく消費が減って景気が悪くなるでしょう。



一方、金融資産の推移をみます(単位は億円)。ここでは金融資産から金融負債を引いた純資産の額で示しています。企業がカネを貯めこんでいるといわれますが、貯め込む企業がある一方で、カネを借りる企業も増えているため純資産としてはそれほど増えていません。家計の金融資産はどんどん増加して続けています。家計の純資産としては1500兆円を超える勢いです。こんなにおカネがあるのに景気は良くなりません。なぜなら「貯めこまれたまま使われていない」からです。



こうした状況ですから、死蔵されているおカネ(金融資産)に課税して吸い上げ、低所得者の所得支援あるいはベーシックインカムとして全国民に再分配すれば、消費が増加して景気も良くなると考えられます。例えばわずか1%課税するだけで15兆円(消費税6%に匹敵する)も再分配が可能になります。

もちろん、デフレの現在、増税の必要があるとは一切思えません。通貨発行によるヘリコプターマネーで「増税なき財政再建」も十分に可能でしょう。しかし、そんなに財務省や新聞マスコミが増税したいのであれば、消費税の増税は大間違いであり、正しい方法は膨れ上がり続ける「金融資産への課税」だと思うのです。

2018年4月8日日曜日

マクロから見た脱時間給の欠陥

労働時間ではなく成果によって賃金を決める脱時間給が推進されようとしています。マクロ的な観点から見て、これが欠陥制度(欺瞞)である点を指摘したいと思います。

成果に応じた報酬は、一見すると正しいように見えます。成果がなければ報酬は払えない。企業の立場から言えばまったくその通りです。では成果とは何かと問えば、それは企業の売り上げに貢献することだと言うでしょう。

ミクロの観点から言えば、企業は商品の販売によって売り上げ利益を出し、そこから従業員への給料を支払います。そのため、いくら従業員が優れた労働をしたとしても、売り上げ利益の範囲でしか給料を払うことはできません。つまり企業の売り上げが拡大しない限り、逆立ちしても給料は増えないことを意味します。

一方、マクロの観点から言えば、企業の売り上げが増えるということは、世の中を循環する通貨量が増加することを意味します。これは同時に名目GDPの増加(1人当たりGDPの増加)でもあります。そして世の中のおカネの量(マネーストック)が増えなければ、世の中を回るおカネが増えないのは当然ですから、企業の売り上げはマネーストックの伸び率に大きく左右されます。

以上より、労働の成果はマネーストックの伸び率に大きく左右されることが必然なのです。こうした点を何ら考慮しない「脱時間給制度」は欠陥制度であると言えます。

極端な例で言えば、どれほど天才的な頭脳を持った社員であったとしても、デフレが続けば会社の売り上げは増えないため、成果(売り上げの拡大)は望めず、給料は増えないのです。そうした社員はどうすれば給料を増やせるか?デフレを放置する日本から脱出して、インフレ傾向の国に移民すれば確実に給料が増えるでしょう

すなわち、デフレの国で長時間労働するよりも、インフレの国で短時間労働するほうが、はるかに高い成果(企業の売り上げ)に結びつくのです。これは極端な話ですが、傾向としては間違いないはずです。こんな馬鹿げたことをしていると、優秀な人材は海外にどんどん流出するでしょう。

日本は官民挙げてやっていることが支離滅裂です。各政策間の整合性がありません。「総合戦略」という視点が欠落しています。多くの新聞マスコミ、政治家が金融緩和を批判し、消費増税と緊縮財政によって世の中を循環するおカネの量を減らそうとする一方で、売り上げ依存の脱時間給を導入しようとする。

総合戦略なき烏合の衆に成り果てた日本の行く末に、
危機感を覚えるのです。

2018年4月7日土曜日

輸出拡大より内需拡大を急げ

日本は貿易立国だから輸出拡大は当然だ。そう考えている人は多いかも知れません。しかし貿易立国だとしても輸出拡大の必然性はありません。

そもそも貿易の基本は「国内で調達できない資源を手に入れるため」です。例えば石油を買うためには外貨が必要であり、その代表格が米ドルです。たとえば資源1単位=1ドルとして、日本で100の資源が必要なのであれば、輸出によって100ドルの黒字を稼ぎ出し、その100ドルで100の資源を買えばよいわけです。すると輸出の黒字100は輸入代金100と相殺されますから、それで貿易は成り立ちます。それ以上の貿易黒字は必要ないのです。

生産の国際分業の観点(比較生産費説)から言えば、貿易は資源の調達ではなく多国間における生産コストを抑えるためにありますが、しかしこの場合においても貿易黒字を必要とするわけではありません。輸出ばかりどんどん増やしても意味がないのです。

もちろんそれは基本であって、貿易黒字で稼ぎ出した外貨を外国に投資すれば、日本の企業などは海外に資産を有することになり、これが金利等を稼ぎ出しますから、悪いことではありません。いわゆる対外純資産です。しかし日本の対外純資産はすでに世界最大クラスですから、もう十分かも知れません。

あるいは、開発途上国の段階であればより多くの外貨を必要とします。なぜなら資源だけではなく、先進国から多くの生産設備(資本)、技術などを導入する必要があるからです。ですから途上国はより多くの外貨を必要とします。しかし日本はその段階をすでに過ぎています。

その一方、輸出が増大すれば国内の景気が良くなることは明らかです。その意味では輸出拡大に頼りたくなる気持ちはわかります。しかし、なぜ輸出が増えると景気が良くなるのか?その理由は通貨循環量の増加にあります。

輸出企業が儲かれば、外貨を得られます。その外貨は為替市場で円に戻されますが、その円が輸出企業の従業員、あるいは仕入先、関連企業などに流れます。こうして貿易黒字は国内の通貨循環量を増加させます。これが国内の経済を刺激すると考えられます。しかし、もし貿易黒字によらなくとも、企業の売り上げが増加し、従業員等におカネが流れるのであれば同じことが言えるでしょう。

つまり、外需によって輸出を増やしておカネを回しても、内需によって国内消費を増やしておカネを回しても、同じなのです。国内のおカネの循環を増やすために、必ずしも外貨を稼ぐ必要はありません。むしろ「必要以上に外貨を稼ぐ」からこそ、貿易不均衡だと非難されるのです。

輸出によって外貨を稼ぐことは必要ですが、必要以上に外貨を獲得しても意味がありませんし、貿易摩擦を拡大するだけです。日本は内需を拡大し、内需主導でおカネを回して景気を回復するべきでしょう。

内需拡大とはすなわち国民がそれだけ多くの消費をすることであり、それは国民生活が豊かになることを意味します。その具体的な方法は何も難しくありません。単純におカネを発行し、それを国民に広く公平に配れば良いだけなのですから。


2018年4月3日火曜日

更新日を変更します

今のところ本ブロクの更新は主に平日に行なっておりますが、今後は土日の二日間に変更しようと考えております。同時にツイッター(のらねこま)でも、主に土日を中心に適当に呟きますwので、よろしければそちらもご覧ください。よろしくお願い申し上げます。

まず長期的なグランドプランが必要

政治家もマスコミも「アベノミクスの成果のあるなし」で大騒ぎしていますが、そんな短期的な動きで騒いでも意味ありません。その前にもっと長期的なマクロの動きを確認し、グランドプランを構築する必要があります。

日本の経済は高度成長期からオイルショック、バブル期、バブル崩壊後の失われた20年、そしてアベノミクスの時期と、連続的に流れてきたわけです。その間、良いことも悪いことも様々ありながら、日本経済が推移してきた状況がマクロ的な観点から理解することができるでしょう。

それらの各経済ステージにおいて良かった点と悪かった点、そしてその原因を分析することで、反省や学習に基づき、これからのあるべき経済政策をまず立案することが先決のはずです。いまの短期的な変化を捕まえて騒いでいても意味ありません。グランドプランが必要だと思います。

その上で、そのグランドプランに対して安倍内閣のやっていることはどうなのか?これが問われなければなりません。もしプランとして疑問のある方法を行なっているのであれば、その点において攻撃されるべきでしょう。まずは確たる経済のグランドプランありきです。

グランドプランを理解するには、少なくとも1960年代からの日本の経済の推移と、その理解が重要だと思います。しかし今日においてそれが十分に理解されているとは思えません。マスコミの話は単に「オイルショックはインフレで大変だった」とか「バブルは良くない」とか、そういう程度でしょう。オイルショックのインフレと高度成長期のインフレとは何が違うのか、あるいはバブル経済を全否定して騒ぐだけでなく、その功罪をきちんと考えるべきでしょう。

その中で、現代はますます金融緩和のような、おカネの政策、マネーストックやマネタリーベースといった指標が重視される時代なのですから、「通貨政策」「通貨供給量」の観点から過去の経済を見直す必要があると思うのです。

ここ数年のマクロ指標を取り出して、アベノミクスは成功しただの、失敗しただのと騒ぐ与党も野党もマスコミも、まるでお話にならないと思うのです。