2016年8月26日金曜日

人工光合成の実現加速に政府投資を

子供の頃に夢見ていた人工光合成がいよいよ現実に近づきつつあるようです。現在はエネルギー変換効率が2%~4%と低いものの、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)によれば、2020年には効率10%を達成し、実用化段階に入る計画らしいです。しかも今のところ研究では日本が世界をリードしているといいます。すばらしい。こうした分野にどんどん政府が投資、支援を行って開発を加速すべきでしょう。

人工光合成のすごいところは、植物と同じように、水と二酸化炭素から有機化合物を直接に合成するところです。メタンガスやアルコールが光と水と二酸化炭素から生産される。これは人工知能と同じくらいに、とんでもなく革新的な技術です。何がすごいかといえば、いくつもあります。

太陽光で燃料を作るといえば、太陽光発電の電力で水を電気分解して水素を生産することを思い浮かべるでしょう。しかし太陽光から電気を介して水素を生産する際には、エネルギー変換ロスが生じるため効率が良くないですし、装置も複雑化します。人工光合成なら光から直接に燃料を生産するため、ロスはありません。しかも水素のように取り扱いの面倒な物質ではなく、アルコールが生産されてくるので、ペットボトルでも保存できます。今までと同じように燃料として利用できます。

太陽光発電と違い、電気エネルギーではなくてアルコールが生産されるので、タンクに詰めるだけで長期的に保存ができ、運搬も簡単です。晴れているときに燃料を生産しておけば、燃料電池で発電できるので、夜でも曇りでもエネルギーに困らない。

化石燃料の使用で二酸化炭素が増加して大問題になっていますが、その二酸化炭素を吸収して燃料に戻すわけですから、ある意味で、無限の燃料が手に入るようなものです。同じ再生可能エネルギーでも太陽光発電で水素を作る場合は、二酸化炭素を吸収しません。しかし、人工光合成は二酸化炭素を吸収するので、世界中で大規模に人工光合成が行われれば、世界の二酸化炭素濃度は低下します。未来の国際環境会議は二酸化炭素排出削減目標ではなく、二酸化炭吸収目標となるでしょう。

人工光合成は、いわば光から石油を作っているようなもの。だから、将来的にはプラスチックや合成繊維なども人工光合成から生産することが可能になると思われます。この研究が進めば、エネルギーとしての石油だけではなく、原材料としての石油の輸入も必要なくなり、石油資源の枯渇も心配なくなるのです。

これは究極の話ですが、人工光合成が高度に進化すると、ブドウ糖も生産できるようになります。人工植物です。もしこれが実用化されれば、もし何らかの原因で食糧危機になっても、人工光合成でブドウ糖を生産することで、とりあえず餓死を免れられます。まあ、半分冗談ですが。

人工光合成が低コストで全世界に普及すれば、間違いなく世界が変わるはずです。地球的な環境破壊が深刻な今日、気長に研究をやっている場合ではありません。人工知能と同じくらいに重要な技術であり、政府がもっと投資して開発を加速すべきだと思います。世界が変わります。