2018年8月19日日曜日

ベーシックインカム7万円の是非は?

ある有名人がベーシックインカム7万円だけで生活できると発言したことから、ベーシックインカムはブラック政策だとの印象を持った人も多数あったようです。さて7万円は是か非か?

結論から言えば是でも非でもない、つまり「7万円は小額ベーシックインカムに過ぎない」と考えます。つまり、生活保障として考えるにはまったく不十分な水準です。7万円は「生活補助的なベーシックインカム」であり、いわゆる生活保障制度としてのベーシックインカムではないと考えます。給付金あるいはヘリマネといった段階としてのベーシックインカムです。

もちろん、7万円であっても全国民に支給することは十分に効果があるでしょう。しかし小額ベーシックインカムの場合は「社会保障も同時に必要である」ことは当然です。つまり7万円を支給しつつ、社会保障も同時に行なわなければなりません。もし社会保障制度まで含めるなら、最低でも毎月15万円の支給が必要でしょう。もちろん、その場合でも健康保険は現行のままです。本質的に医療保障と生活保障は違うからです。

ですから、7万円はあくまで「初期段階での小額ベーシックインカム」であれば問題はないと思います。7万円支給しつつ社会保障も同時に維持する。そして、7万円から支給額を毎年のように増額し続け、10万円、15万円へと増やしてゆく、7万円とはその過程における一時的な金額の目安に過ぎないわけです。

しかし、もし「7万円が生活保障である」と主張するなら、笑止です。そんなものは生活保障ではありません。あくまで生活補助です。

そして、もし仮に「ベーシックインカムは7万円支給で十分であり、継続的に増やす必要は無い」と主張する論者が居るならば、これはまさに「ブラックなベーシックインカム」であり、貧困の蔓延する未来社会を意図する連中であると言えるでしょう。こうしたブラックな、悪いベーシックインカムの主張に対しては、ベーシックインカムの本来の趣旨を歪曲する考えであるとして、断固として戦わねばならないでしょう。


そもそもベーシックインカムのベーシックとは最低ではなく「基本」であり、最低生活を意味するものではありません。基本生活を保障するものです。そして社会の基本水準はテクノロジーの進化と共にどんどんベースアップするものだからです。

20世紀は生産力の乏しい時代だったこともあり、ベーシックインカムは「最低生活を保障せよ」がスローガンだったでしょうが、いまや時代が違います。ましてこれからの未来では、まるで意味が違います。十分にゆとりある生活が「基本」になるでしょう。

ベーシックインカムの政策内容は政治家や識者が決めることではなく「国民が決める」ことです。大多数の国民が「支給額は15万円かつ社会保障も維持でなければならない」と政府に求めるなら(選挙でそうした政党が勝利すれば)、それが政策になるわけです。それがベーシックインカムです。

結局のところ、ベーシックインカム政策を良くするも、悪くするも、国民の知識と判断力によって決まることになるでしょう。



2018年8月14日火曜日

復興支援には通貨発行も国債発行も同じ

日本では毎年のように大規模災害が発生し、復興支援のための予算が必要になっています。その財源をどうするか。もし国債を発行するのならば、むしろ通貨を発行すべきでしょう。どちらも実質的にほどんど同じだからです。

災害の復興支援として、財務省の役人ならば直ぐに「増税だ」と騒ぐでしょう。しかし、長期デフレから脱却していない日本経済にとって、増税はますます景気を悪くするだけです。そうではなく、増税をせずに、復興支援のために財政出動を増やすほうが、復興需要の拡大によって長期デフレからインフレへと経済局面をかえるきっかけになるかもしれません。

では、増税せずに災害復興の財源をどのように確保すべきか。これまでの常識から言えば、大抵の政治家やマスコミは「国債を発行すべし」と考えるでしょう。しかし、国債を発行するとなれば、すでに大量に発行されている国債をさらに増やすことになりますから、財務省の役人がまたまた出てきて「国のシャッキンガー」と騒ぐことになります。

ですから、国債を発行するのではなく、通貨を発行して財政出動の財源とするべきだと考えます。

ところが、「国債を発行するのよいが、通貨を発行するとインフレになるから良くない。あくまで国債にすべきだ。」と主張する人もいるでしょう。これは認識としては、完全に間違いです。なぜなら、国債を発行した場合でも、結果的には通貨が発行され、世の中のおカネが増えるからです。

つまり、国債を10兆円発行しても、政府・日銀が通貨を10兆円発行しても、世の中のおカネ(マネーストック)は同じ10兆円増えます。ですから、もしインフレを引き起こす経済状況であれば、国債発行であろうと通貨発行と同様なインフレを引き起こします。

では、こうした「国債はインフレにならない」という誤解を招いている原因は何でしょうか。それはマスコミの垂れ流す「国債は民間が貯めているおカネを再利用する方法だ」という、間違った常識があるからでしょう。ところが実際には、銀行が国債を購入すると、おカネ(預金)が発行されることになるのです。これはバランスシートの仕組みから言って明白です。

ですから、復興財源として国債を発行するのではなく、通貨を発行して財源としたとしても、大きな問題はないのです。むしろ通貨発行によって財源を確保すれば、財務省の役人がしゃしゃり出てきて「国のシャッキンガー」「消費税をどんどん上げろ」などと騒ぐ心配はありません。

では、国債発行と通貨発行はまったく同じなのか?通貨供給という点では同じですが、実際には大きな違いがあります。

国債を発行した場合、例えば10年国債の10兆円であれば10年後に10兆円を返済しなければなりません。返済のためには、10兆円のおカネを税金として世の中から回収しなければなりません。すると、世の中のおカネが10兆円減ることになります。つまり、国債の場合は、世の中のおカネを必ず減らすのです。これは10年後の社会にデフレを招く強烈な原因になります。

一方、通貨発行の場合、例えば10年後に、発行したおカネを世の中から回収する必要はありません。世の中のおカネは減らないのです。とはいえ、もしインフレが酷いのであれば、10年後といわず、いつでも増税等によって世の中のおカネを減らすことが可能です。つまりインフレでなければ、無理に世の中のおカネを減らす必要はありませんし、インフレならおカネを減らせばよい。

と、考えてみれば、国債よりも通貨発行の方が政策として柔軟性が高いと思われますね。ですから、国債ではなく通貨発行によって財源を確保するほうが賢いと思われるのです。

国債によって財源を確保する方法は、もはや時代遅れです。生産性が低く、慢性的にインフレを警戒しなければならなかった、昔の時代の手法だと思います。前世紀の遺物ですね。

いまや生産性が飛躍的に向上し、これからは人工知能やロボットによって、ますます供給力過剰な社会になると考えられます。そうした時代の変化に対応し、これからの財源は国債発行に頼るのではなく、通貨発行によって賄う必要があると思うのです。


2018年8月9日木曜日

自由貿易より大切なのは「ヘリマネ」

トランプ米大統領による保護主義的な貿易政策を受けて、新聞テレビは「自由貿易の危機」であると大騒ぎ。しかし、自由貿易が堅持されたところで、庶民の生活が良くなるわけではありません。大切なのは国民所得です。

新聞テレビは、トランプ米大統領による保護主義的な政策によって景気が押し下げられ、経済成長に悪影響があると盛んに喧伝しています。自由貿易の毀損が国民生活を圧迫するといわんばかりです。しかし、冷静に考えてみると、これまで自由貿易の推進が日本の景気を押し上げた実績はあるのでしょうか。この20年間、少なくとも庶民にそんな実感はありませんね。

バブル崩壊後、日本は自由貿易をどんどん推し進め、生産拠点を海外にドンドン移転して、海外で生産された財が日本に自由に輸入されるようになりました。しかし、国内産業は空洞化し、低賃金のサービス業、派遣業が増加し、ブラック企業が跋扈して労働者の国民所得は減り続ける結果となりました。

もちろん、その間、自由貿易によってグローバルな取引を行なうグローバル企業は大儲けしたのでしょうが、それらの儲けは大企業の株主役員、あるいは一部の社員に分配されただけで、庶民に分配されたわけではありません。つまり、自由貿易によって庶民の生活は何も良くならないどころか、むしろ悪化したと思われるのです。

そうした状況から言えば、新聞テレビが「自由貿易の堅持を!」とワンワン叫んだところで、白々しい響きしかありません。庶民の生活のためではなく、財界やマスコミ自身の権益を守るために、必死になって叫んでいるとしか思われないからです。

とはいえ、長い年月をかけて自由貿易を推進してきた結果、サプライチェーンおよび、おカネの循環は、いまやグローバルに依存した状態になっています。ここで急激な保護主義に舵を切れば、そうしたモノやカネの流れを阻害することで、世界経済を悪化させるリスクは否定できないでしょう。すでに世界は自由貿易にドップリ「依存した体質」なのですから、例えるなら薬物依存と同じように、急に抜くことはむしろ危険です。何十年もかけて変えた体質は、戻すのに何年も必要になります。

ところがトランプ米大統領は、何十年もかけて自由貿易依存になった世界経済を、わずか数ヶ月で元に戻そうとするのですから、世界経済に混乱を引き起こす危険性があります。これは避けるべきでしょう。

しかし、ここで重要な点は、必ずしも「自由貿易がよいから守る必要があるのではない」ということです。そもそも自由貿易が推進されたことで、庶民の生活が良くなって来た実績はありません。庶民の生活にとって自由貿易の恩恵はほとんどありませんでした。ただし、もはや自由貿易依存体質になってしまった社会では、急に自由貿易を抜けば害悪だけが出るリスクがある。

つまり、自由貿易を堅持したところで、庶民にとってはマイナスにならないだけであって、何らプラスの側面は無いわけです。最低ですねw。だから新聞テレビが「自由貿易の堅持を!」といくら叫んだところで、白々しい響きしかありません。

では、こうした保護主義的な動きの中で、国民生活を向上するためには何が必要でしょうか?「内需拡大」でしょう。家計消費が景気にとって重要であることは、しばしばマスコミの記事にも登場します。消費を拡大するとは、すなわち国民生活を向上することに他なりません。そして、消費つまり内需によって景気を押し上げれば、マスコミがさかんに騒ぐ「保護主義による経済成長への悪影響」も軽減されます。

消費の拡大は国民所得を引き上げるだけで可能です。拝金主義の経団連をみれば、賃上げによる国民所得の向上はあまり期待できません。ここは国民の通貨発行権を行使することで、ヘリコプターマネーを実施すればよいでしょう。全国民、1人当たり毎月1万円を給付する(年額12万円一括給付でもよい)わけです。これは政治によって可能です。

自由貿易を堅持したところで、グローバル企業の利益は守られるでしょうが、庶民の生活はちっとも良くなりません。ここは自由貿易に固執するより、むしろ、保護主義の台頭を絶好の機会としてヘリマネを実施し、内需を強化して国民生活を向上する政策に方向転換すべきだと思います。


2018年8月7日火曜日

インフレ暴走が心配ならソブリンマネー

国民におカネを給付する政策「ヘリコプターマネー」に対して、インフレが止まらなくなると騒ぐ人々が居ます。それならソブリンマネーを導入すれば良いでしょう。

ソブリンマネーとは、政府(ソブリン)通貨(マネー)のことです。これはとんでも理論などではありません。スイスでは本年、ソブリンマネーの導入の是非を巡って国民投票が行なわれました。残念ながら否決されましたが、国民投票に掛けられるほどの政策なのです。その考え方の起源は世界大恐慌の後にまで遡ることができ、今日の経済学の基礎を築いたフッシャーやフリードマンらが提唱していたほどです。

基本的な内容は簡単です。市中銀行(主に民間銀行)が行なっている通貨発行である「信用創造」を禁止して、政府(基本的には日銀のような中央銀行)だけに、信用創造に基づく通貨発行の権限を限定する、というものです。

早い話が、今は民間銀行が世の中のほぼすべての流通通貨(預金)を発行しているのですが、そうではなく、通貨はあくまでも政府が発行して流通すべきだとする考えです。これがソブリンマネーです。

これによって、民間銀行が恣意的に通貨を発行することを禁止し、民間銀行が通貨を発行することで引き起こされる「資産バブル」を防止し、また信用創造の暴走による通貨供給の過多が引き起こす「ハイパーインフレ」を防ぐことが出来ます。

ところで、多くの人は新聞マスコミの識者に脅されています。つまり通貨を発行して国民におカネを配ると、ハイパーインフレになるという脅かしです。しかし、考えてみればそんな心配はありません。もし仮に世の中のおカネの量が2倍になったら物価は2倍になるかもしれませんが、それ以上に高くなるはずはありません。なぜなら、もし世の中のおカネが2倍になって、物価が10倍になるとすると、おカネが足りなくて、モノが売れなくなってしまいます。すると、市場では物価が下落します。つまり市場原理が働くので、インフレが止まらなくなることは理論的にあり得ないのです。

仮に世の中のおカネの量が2倍になるとすれば、およそ900兆円のおカネを国民に配ることになります。900兆円は1億2000万人の国民1人当たりにして、750万円です。例えば、4人家族の家庭なら3000万円を配ると、物価は2倍になるかも知れません。いきなり3000万円配るなどという、馬鹿げたことをしたとしても、その程度であり、実際にヘリコプターマネーを実施するとすれば、国民1人当たりにして、年間12万円とか、24万円とか、そういうレベルでしょう。ですから「ヘリコプターマネーによるハイパーインフレはまったく心配ない」と考えられるわけです。

それでも、恐らく一部のマスコミ識者がこう言うでしょう「一旦、インフレになると巨石が坂道を転げ落ちるようにインフレが止まらなくなるぞー、タイヘンダー」と。しかし、こういう感情論には理論がありません。巨石が坂道を転げるのは、引力という物理法則であって、経済学とはまるで関連性がありません。

もし、インフレが止まらなくなることを経済理論的に説明できるとすれば、それは「民間銀行による信用創造の暴走」です。なぜなら、政府・日銀の発行した現金の量が、民間銀行の信用創造によって何十倍にも膨れ上がるからです。これがハイパーインフレの原因です。

ですから、ソブリンマネーを導入することで民間銀行の信用暴走を禁止すれば、ハイパーインフレの心配は皆無になると断言できるでしょう。物価が上がるのは、おカネの量が増えるからです。しかし、おカネの増えるペースを遥かに超えて、いつまでも物価が上昇し続けることは、理論的にありえません。民間銀行の信用暴走がなければ、ハイパーインフレはあり得ない。ソブリンマネーを導入しましょう。

2018年8月4日土曜日

ヤル気ない日銀の独立性に疑問

日銀がまたまた物価目標の達成目標を遅らせた。インタゲを達成する政策は他にもあるのだが、日銀にやる気が無いのである。これは日銀の独立性に疑問を持たざるを得ない。

物価目標(インフレターゲット)を達成する方法が打ち止めになったわけではない。あるのだが日銀にやる気が無いのである。マスコミは物価目標の達成が難しいなどと、相変わらず経済音痴ぶりをさらけ出しているが、強力な政策は他にもある。しかしマスコミが報道することはない。

方法は恐ろしく簡単である。おカネを発行して国民に給付金を配り、国民の購買力を高めることで消費を引き上げるのである。実際のところ、手続きが面倒なだけであって、方法論は極めて単純明快であり、小学生でもわかる。逆に言えば、あまりにもわかりやすいから、かえって、いまさらそんな政策を行なえば「なぜもっと早く行なわなかったのか?と国民から叱責されるかも知れないほどだ。いや、逆に言えば、それが怖くて「いまさら言い出せない」のかもしれないw。

それはさておき、それはいわゆる「ヘリコプターマネー政策」(ヘリマネ)である。この政策は「副作用がー」と騒ぐ連中も居るが、なにせこの副作用は「インフレ」である。つまり、ヘリマネを行なうとインフレ目標を達成してしまうのである。これは大変だ。

ただし、ヘリマネは日銀だけでは政策を完結できない。なぜなら、日銀は通貨を発行できるが、それを国民に給付することはできない(そういう役割を担っていない)からだ。一方、政府は過去にも給付金を支給していることを見ればわかるが、国民に直接おカネを給付する立場にある。だから、日銀と政府がきちんと連携して「政府・日銀」として、国民のための役割を果たすべきところだ。

しかし、日銀の独立性を過剰に意識するがゆえに、日銀と政府が連携することを嫌う向きがあるのではないか。「日銀の独立性ガー」である。日銀は日銀で政府とは無関係に政策を行い、政府は政府で日銀とは無関係に政策を行なうのが、独立性だと思っているのである。

しかし、こうした過度な「独立性信仰」のような考えが、日銀・白川総裁と民主党政権の時代にあって、マスコミもそれを奉り、当時の世界的な大規模緩和の流れに乗らない、日銀の金融緊縮を容認してきたといえる。それが日本の景気回復を遅らせた一つの要因でもある。

そして、安倍政権以後、「日銀は神聖にして侵すべからず」といった、気味の悪い独立性信仰をある程度脱して、政府と日銀の連携による金融緩和がようやく実現した。しかし、まだまだ、国民主権から独立したような、気味の悪い日銀の独立性が存在しているのだろうか。

もしそうだとすれば、日銀の独立性には大きな疑問を持たざるを得ないだろう。デフレを脱却し、経済成長を実現するためには、おカネを回すことが有効であり、それはヘリコプターマネーによって実現することは間違いない。にもかかわらず「日銀が政府から独立しているから、ヘリコプターマネーが推進できない」のだとすれば、そんな独立性は害になるだけである。

大規模金融緩和に踏み切って5年になろうとするが、いまだ物価目標2%すら達成できないようなスローペースである。その間、ヘリマネに関する議論があったにも関わらずこれを無視し続け、「もう一息で達成できる」といい続けて5年も過ぎたのであれば、ほとんど「無策・無能」と言われても仕方の無いレベルだろう。