2012年9月30日日曜日

金融緩和ってなに、役に立つの?

<金融緩和で景気が良くなるの?>

Q:金融緩和ってなんなのにゃ。なんでそんなことするにゃ。

A:金融緩和ってのは、日本銀行が現金を発行しておカネの量を増やすことなんだぜ。
おカネを増やすと、おカネを使う人が増えるよな。つまりだ、おカネを使う人が増えると商品(パソコン・車・マンション)やサービス(商業活動・美容院・病院)が売れるようになる。景気が良くなるって寸法だ。そして、たくさん売れるようになるから、たくさん作る必要がでてくる。たくさん作ればたくさん売れて、儲かるってわけだ。そこで、工場でも商店でも、従業員をもっと増やそうとして、人を採用するんだ。すると失業している人が減る。失業している人が就職して給料をもらえるようになると、その人はもらった給料を使って何かを買おうとするだろう。すると、さらに商品やサービスが売れて景気が良くなる。経済は連鎖反応なんだ。つまり、カネが増えると、景気が良くなるっつーわけだ。

Q:なんで言葉遣いがべらんめぇなのにゃ?

A:そういうキャラ設定なんだからしょーがねーだろ。なにせ、オレは江戸前だからな。

Q:お前はサカナかにゃ!江戸っ子だろが。こいつアホにゃ。大丈夫かにゃ。

A:細かい事にうるさいネコだな、いちいち絡んでないで質問しろってんだよ。

Q:んにゃ。日本銀行が現金を発行するって、お札をいっぱいいっぱい刷っているのかにゃ?

A:札なんかほとんど刷っていないぜ。電子的に発行してるだけなんだ。
つまり、コンピューター上にあるだけ。ちなみに自分の預金通帳を見てみろよ。預金額が書いてあんだろ?あの数字と同じ額のお札が銀行に保管されてると思うか?答えはノーだ。現代のおカネってのは札じゃない、コンピューター上の数字なんだ。だから、輪転機なんか回さなくても、一瞬で10兆円とかのおカネが出来てしまうんだ。


<現代社会は借金依存だ>

A:ふ~ん。じゃあ、日銀が増やしたおカネは、そのあと、どうなるの?どうやって社会に流れるの?

Q:日銀が民間銀行に貸すんだ。民間銀行は、借りたおカネを企業や個人に貸したり、国債を買って国に貸したりするんだ。すると、民間銀行が日銀から借りたおカネが、誰かのところに行く。つまり、誰かに貸し付ける事で、「貸しつけ」として世の中に流れ出すんだぜ。日銀の発行したカネは、誰かが民間銀行から借金して初めて世の中に流れ出し、世の中のおカネを増やすんだ。

Q:それなら、銀行から誰も借金しなかったら、世の中のおカネは増えないのかにゃ。

A:あったりめーよ。つまり、世の中のカネってのは、すべて銀行からの借金でできてるんだ。だから誰も借金しなくなったら、世の中のカネがすべて消えてなくなるって寸法だ。そうなったら経済はパーだ。つまり、資本主義ってのは「借金依存経済」なんだぜ。まず、そこを理解しなきゃ経済の事は何も理解できねぇ。今の世の中は、借金なしじゃ成り立たない経済なんだ。

Q:なんか変な感じだにゃ。ネコは永久に銀行からの借金に依存し続け、永久に銀行へ金利を払い続ける運命にいきているんだにゃ。その仕組みから決して逃れる事はできない束縛された社会なのにゃ。これが自由主義の社会なの?

A:「自由」とは、そういう意味なんだよ。


<量的緩和ってなに?>

Q:国債ってなんにゃの?

A:国債ってのは、政府の借金の一種だな。単なる借金じゃなくて、それを「債権」って形にして、誰でも売買できるようにしたのが国債だ。国債を買っておくと、定期的に利息がもらえて、満期には全額が返済される。民間銀行ってのは、預金を運用するために様々な債権を買って保有しているんだ。国債もその一つで、その利息が銀行の儲けになるってわけだ。

Q:日銀が国債を買うと景気が良くなるって、どういうことにゃ?

A:日銀が民間銀行の保有する国債を買い取る事を「量的緩和」っていうんだぜ。どういう仕組みかってえと、まず、民間銀行がすでに保有している国債を日銀が買い取るんだ。その買った代金を日銀が民間銀行に支払うんだが、その時、日銀が現金を発行して、その現金で民間銀行に代金を支払うんだ。支払いのために新たに現金を発行するから「おカネの量が増える」わけ。すると民間銀行は手持ちの現金が増えるので、それを元に企業や個人に貸付を行い、世の中に借金としておカネが流れ出す。世の中の借金が増える事で、景気が良くなるって寸法だ。借金=カネだからな。

A:あいかわらずクセのある言いかただにゃあ。借金が増えて景気が良くなるって、微妙だにゃ。

Q:でも、本当の事だぜ。マスコミや識者が「腫れ物にさわるように遠まわしに」話していた事を、ズケズケ言ったまでの事よ。カードに表と裏があるように、世の中の全ての事にも表と裏がある。もし、表の理論で問題が解決できなかったとしたら、裏の理論を覗いてみることも必要なんだぜ。まあ、そういう人間は「変人」扱いされるんだがな。いずれにしろ、真実は「世の中の借金が増えれば景気が良くなり、世の中の借金が減れば景気が悪くなる」ということ。

A:ひねくれてるのにゃあ。


<量的緩和は効かないの?>

Q:新聞には「日銀が国債を買っても効果は疑問」みたいな記事がいっぱい出てるけど、本当かにゃ。

A:このあたりは議論が分かれてるけど、ある意味では本当だ。何回も繰り返してるけど、日銀が民間銀行に供給する現金は、必ず「借金」として世の中に流れ出す。今の日本はデフレ不況で、表面上の経済成長率はゼロあるいはマイナスという悲惨な状況だ。こんな状況だから、「借金して事業を拡大しよう」なんて考える企業は出てこない。おまけにマスコミが盛んに「日本は成長しない」「これからは中国だ」とか言ってるから、ますますもって「ああ、借金してまで日本に投資しても無駄だな」と思う。そうなると、いくら民間銀行に現金がたくさんあっても、借りる人がいないから世の中におカネは流れ出さない。だから日銀が国債を買っても効果が薄いんだ。これが「借金依存経済」という現代社会の最大の弱点。


<日銀の国債直接引き受けとは?>

Q:それじゃあ、もうダメなのかにゃ。景気が悪くなってネコも捨てられてしまうにゃ。

A:そんなことはまったく無いから安心しろ。借金に頼らなくても、直接的に世の中のおカネをふやす方法があるんだ。それが日銀の「国債引受け」だ。これは量的緩和と異なり、すでに保有している民間銀行の国債を日銀が買い取るのではない。政府が新規に発行した国債を、民間銀行を経ず、直接に日銀が買い取る方法だ。

Q:日銀が直接に国債を買うと、何がいいのかにゃ?

A:日銀が直接に政府から国債を買い取ると、そのおカネは政府に入るんだ。量的緩和の場合は、おカネは民間銀行へ入るから、誰かが銀行に借金をしなければおカネは銀行でストップしてしまう。ところが直接引き受けの場合は、おカネは政府に入るから、そのおカネを政府が使う事で世の中におカネを直接に流す事ができるって寸法だ。たとえば、東北の被災地の復興を大規模に行うためにおカネを使ったり、脱原発のための研究開発や発電施設の建設におカネをつかったりすれば、被災地の人も喜ぶし、雇用が増えて景気も回復する。まさに一石二鳥というわけだな。

Q:すごいすごいネコにゃあ。すぐに日銀が国債を引きけるのにゃ。

A:ところがそうはいかねぇんだな、これが。抵抗勢力が既得権益を守るために必死に抵抗してくるんだ。やつらの論点は「そんなことすると、おカネの発行に歯止めが利かなくなってハイパーインフレになる」というものだな。そんなもの法律で上限を規制すれば済むだけなんだがな。ところが、法治国家なのに「一度始めたら歯止めが利かなくなる」のだそうだ。法律でコントロールできないってんなら、そんなもん先進国じゃねえだろっつーの。

Q:既得権益との戦いなんだにゃ。

A:まあ、人類の歴史だからね。国債引受とインフレの話はまた今度にしよう。

Q:ところで、政府が国債を発行するって、借金することにゃん。国債をこれ以上増やして大丈夫かにゃ。

A:大丈夫だ。なぜなら日銀は政府の銀行だからだ。確かに日銀の持っている国債には、政府が利息を支払わなければならない。だから政府は日銀に利息を支払う。それは日銀の収益になる。日銀の収益は政府に納めなければならない。つまり政府の支払った利息は政府に戻ってくる。国債が満期になった場合も大丈夫だ。満期になって政府が日銀に払い戻す際に、再び同額の国債を発行すればよいだけのこと。借金を借金で返せるから、絶対に返済不能な状態にはならないんだ。財政破綻は絶対に起こらないしくみなんだよ。

Q:でも、それって自転車操業にゃ?

A:と思うだろ。でも、これで世の中のおカネが増えておカネが回り始めると、税収もどんどん増加し始めるんだ。すると、国債の発行額をどんどん減らす事ができるようになる。財政はどんどん健全化の方向へ向かうんぜ。そもそも政府にとって国債は借金だけど、日銀にとって国債は貸しつけだからね。同じ政府内部で借金と貸付があるんだから帳簿上は相殺されて、国の借金は何も増えていないってわけだ。何が変化したのかといえば、おカネが増えただけなんだよ。

Q:日銀引受は、おカネが増えるだけにゃん?

A:その通り。唯一の問題は「インフレのコントロール」だけなんだ。でも、その話はまた今度にしようぜ。

2012年9月2日日曜日

「成熟社会」という欺瞞

「今の日本は成熟社会だ、だから成長しないのは当然だ」という話がマスコミから流されている。だが本当に日本は成熟社会なのだろうか?単に成長できない事を「成熟した」と言っているに過ぎないのではないか、むしろ、成熟社会という言葉のイメージを利用して日銀や政府の無策を正当化しているに過ぎないのではないでしょうか。

<あきらめの支配する無気力な「成熟社会」>

 もちろん成熟社会という考えが間違いだとは思わない。しかし問題はその言葉のイメージを用いて「人々が貧しくなるのは仕方が無い」「格差が生まれるのは仕方が無い」というような、社会的問題の発生を「不可避なもの」と思い込ませ、人々に諦めさせようとするネガティブな姿勢が日本をおかしくしていると思われるのです。

諦めの状況に置かれた人々は、努力が無駄に感じられ、無気力となり、受動的で、自ら生み出すより与えられるものを待つようになります。これは成熟社会ではなく、単にあきらめが支配する堕落した社会にすぎません。生活保護が蔓延し、失業者が溢れ、年間自殺者が3万人もいる社会のどこが成熟社会なのか? 

成熟社会とは社会の一つの行き着く先として、人々が幸福に生活できる状態に達した社会をいうべきであって、今の日本が成熟社会などという主張は欺瞞にすぎません。単に停滞し、ダメになった社会なのです。その欺瞞を順にみて行きましょう。 

<GDPは成長しない、だから貧しくなるのは仕方が無い?>

 成熟社会では、GDPが成長しないのは当然でしょう。GDPは国内で生み出される財の総量ですが、労働人口が減少を続ければ生み出される財の総量が減少傾向に向かう事は明白です。官僚もマスコミもこの段階で諦めて「思考停止」するようです。実に情けない話ですね。

 GDPが増加しなくとも国民は豊かになれます。なぜならGDPは総額に過ぎないからです。私たちの生活が豊かになるかどうかは国民一人当たりのGDP、つまり一人一人が産み出すことの出来る財の量で決まるからです。人々の生産性を高め、失業している人に労働の機会を与える事で、国民一人一人の生産力は高まります。ですから国民に対して「一人一人の生産性を高めればGDPが成長しなくとも大丈夫だ!」そのようなビジョンを示す事が大切なのです。国民のモチベーションを高める必要があるのです。ところがその様な着想がまったくない。

「日本は成長しない、もうダメ」みたいな論がマスコミから流布される。そのために人々は無気力になり働く意欲を失います。 

<人口減少・高齢化は止まらない、だから増税は仕方が無い?>

 今の日本では、人口減少・高齢化は当分続くかも知れません。より少ない労働人口で高齢者を支える必要に迫られるのは当然です。官僚もマスコミもこの段階で諦めて「思考停止」するようです。実に情けない話ですね。

 増税などしなくても高齢者を支えられます。厚生労働省の予測する労働人口の推移を見ると確かに労働人口が減少を続けるのですが、実際には人口が減っても、生産性の向上により一人当たりが生み出す財の量が増加する事で、より少ない人数で高齢者を支える事が可能となります。一人一人の動労者をパワフルにするということです。ですから国民に対して「増税なんかしなくとも、一人一人の生産性を高めれば高齢者を支える社会ができるぞ!」というビジョンを示し、国民の奮起を促さねばならないのです。ところがその様な鼓舞はまったくなし。

「成長しないに決まってるから増税せよ」みたいな論がマスコミから流布される。人々はどうでもよい気持ちになり、努力しようとする意欲を失います。

 <心の時代だから成長しなくても豊か、だからこのままで良い?>

 成熟社会では、物質的な満足ではなく精神的な満足を求めるようになるとの論はある意味で正しいでしょう。しかし心の時代に年間自殺者3万人とはどういうことなのか?OECD諸国の中で、貧困率がアメリカに次いで高い15%もの数値を示しているのはどういうことか?官僚もマスコミもダンマリを決め込み、心の時代の価値観のお話をする。実に情けない話ですね。

 ワーキングプアの人々にとっては、心の時代などという呑気なことを言っているゆとりはない。つまり格差社会を是正しなければ「心の時代」など一部の人々の自己満足であり、成熟社会など絵に書いた餅に過ぎないのです。貧困は犯罪や疾病を増やし、社会を不安定化させ、経済活動にも悪影響を与えますし、当然ながら心の時代の指標とさせる人々の幸福度も下げてしまうでしょう。

心の時代なら必要以上のおカネはいらないはずです。ですから「おカネを貯め込んで使わない人々から「資産税」として分けてもらいましょう!」。そういうと、とたんに大騒ぎになるでしょう。心の時代といいながら実はウソなのです。人間はエゴの塊です。だから課税して再分配するのは至難の業です。

ですから国民に対して「本当の成熟社会のために格差を是正しましょう、そのためには増税で再分配するのではなく、名目成長すれば良いのです!」という解決策を力強く提示する必要があるのです。名目成長とはおカネの量を増やしてカネのめぐりを良くする事です。するとおカネの行き届かなかった人々にもおカネが回るようになります。もちろん、高額所得者への課税強化と再分配で格差を是正するのか、それとも名目成長で格差を是正するのか、そのどちらでも可能なのですが、官僚も政治家も何ら国民にビジョンを示しません。

「貧困層への生活保護はばら撒きだ」といい、おカネを増やせば「インフレ地獄になる」というだけで、結局は格差是正の出来ない理由をマスコミが流布しているだけ。人々は絶望してやる気を失い、困難に挑戦しなくなります。 

 <言葉だけが踊る「成熟社会」は欺瞞>

 結局のところ「成熟社会」という言葉は「成熟社会だから○○○○なのは、仕方が無いんだよね」という文脈で使われる、つまりいいわけの便利な道具として使われているにすぎません。こんな間抜けな話をマスコミが振りまいていて、いったい誰がやる気を出してリスクを負って挑戦しようとするでしょうか?

もし本当に成熟社会を語るのであれば、暗い、陰鬱とした成熟社会ではなく、明るく、活気に満ちた成熟社会でなければなりません。そのような前途の希望を信じる信念こそが政治にとっては最重要であり、そのためのビジョンを示す事が政治家の使命なのです。


ネガティブな言い訳など聞きたくない。
アグレッシブに未来を掴み取る方法を示せ。
それが国民のモチベーションを高め、
日本を劇的に変える。