2015年11月3日火曜日

杭工事 不安を煽る報道はダメ

旭化成建材による杭工事の検査データ不正問題で、世間が大騒ぎになって居ます。確かにこれは大きな問題であり、不正を行った工事担当者と管理責任者である旭化成建材は厳しく責任を追及されねばなりません。

しかし、各地で次々に発覚している不正工事の案件をTVで報道する際に、必ず住民のインタビューが放映されるのですが、全員口をそろえて「不安です、不安です」と発言します。おそらくインタビューした人のすべてが不安を口にするわけではないでしょうから、不安を発言した人の映像を選んで使用していると思われます。これでは世の中の不安を煽るだけです。

ハッキリ言って危険性はほとんどありません。今回の問題は建物が沈下して傾く危険性ですが、これは建物が完成した直後から始まる現象ですので、現在において沈下していない物件が、新たに沈下を始める可能性は極めて低いと言えます。もちろん巨大地震のような外圧が加えられた場合にまったく影響がないとは言い切れませんが、杭の2~3本が支持層に届かなかったとしても、建物が倒壊するとは考えられません。つまり居住者の安全性には何の問題もありません。

もちろん、これは建物の瑕疵ですから、損害賠償の対象になるでしょう。分譲マンションであれば購入者は資産を棄損されたのであり、怒るのは当たり前です。しかし学校や公営住宅などの施設は建物の瑕疵によって建物の利用者や居住者が瑕疵による直接の損失を被ることはありません。居住が不安になって騒ぐ必要はないのです。

にもかかわらず、不安の声をことさら取り上げて報道すれば、社会不安を煽るだけです。物価高のニュースも似たような傾向があります。インタビューされた人が口々に「モノの値段が上がって大変です」と言う。するとテレビを見た人は大変な気分になるのです。これが不必要な買い控えに影響する可能性は十分あります。同様に、建築に関する不安を煽れば、必ず不必要な動きに繋がります。

もちろん、杭データの不正は大問題であって、責任の追及と厳正な処分、そして再発防止が不可欠であることは間違いないのです。ですが、そこはきちんと区別して考えないと、社会に不必要な混乱を招くことは間違いないと思うのです。