2011年6月19日日曜日

陰謀論の薦め


陰謀論というと胡散臭いというのが世間の常識です。もちろん私の常識でもありました、最近までは。しかし、世界の常識とあまりにかけ離れた政治・金融の政策が次々に打ち出される様を観察していると、その理由の説明がつかないのです。もちろん「政治家や日銀がとてつもない馬鹿」という仮説も考えられますが、それは酷すぎます。ところが陰謀論を仮定すると非常にスムーズな説明が可能となります。

そもそも世の中は陰謀だらけ

陰謀論を否定することが善であるかのような常識を語る人が多いですが、世の中の実態はどうなのでしょうか。40年以上も生きていると、実は陰謀で社会が成り立っていることに気が付きます。笑い事ではありません。政局は陰謀なしの美しいものでしょうか?民間の社内権力争いも陰謀なしの美しいものでしょうか?はては恋敵を蹴落とすための陰謀が無いとでも?素直な、謙虚な気持ちになって事実をよく観察し直すなら、程度の差があっても、そこに陰謀を見出すことができるはずです。信じたくありませんが陰謀とは人間の真理です。それを拒絶して誠実だけで生きようとすることは尊いことですが、だからと言って「陰謀が無い」とするのは、あまりにナイーブに過ぎます。

警察の捜査は「陰謀論」が前提

疑わしきは罰せず。確かにそうですが、疑いを掛けなければ警察の捜査も進みません。人間がすべて誠実であると考えて捜査をすれば、すべての事件は迷宮入りしてしまうでしょう。犯人と思しき人物に疑いを掛け、尾行して行動を観察し、状況を積み上げます。科学も仮説を立てることで成り立ちます。疑いを掛けるわけです。そして注意深く観察し、再現性を検証します。「背景に何かある」と考えなければ、科学すら成り立ちません。とりわけ人間の社会は人間が動かしていますから、誰かが何かのために行動することが社会現象を決定付けます。周知の事ですが人間の行動を決定するのは残念ながら理論ではなく欲求です。陰謀論が説得力を持つのもそのためです。

陰謀論の着眼点は「誰が得をしているか」

何をしているか、何を発言しているかを観察しても真実は何も見えてきません。どんな行動をし、誰がどんな得をしているかという「結果」に着目し、仮説を立てます。日本銀行はバブル崩壊後「日銀はデフレ脱却のために努力しています」と15年も発言し続けてきましたが、結果は一度としてデフレ脱却に成功していません。知的レベルの高い官僚の間では、何の結果が出なくとも「努力しています」といえば高い評価が得られるようですが、知的レベルの低い民間では「努力しています」と言って結果が出ない場合は「努力していない」と評価されます。つまり、民間の常識で言えば、日銀が「デフレ脱却に努力しています」と言い続けて出てきた結果が「15年のデフレ継続」であれば、そもそも日銀はデフレに誘導する目的があったのではないかと疑います。それが警察の立場であり、科学的立場です。そうすると、なぜデフレに誘導する必要があったかを説明する必要がありますが、それは、日本の長期デフレが誰に利益をもたらしたかを観察することで説明できます。

日本がデフレや円高で苦しむ中、まるで国策のごとく産業が中国へ移転し始めました。デフレ不況で引き起こされる「より安い商品が売れる」という状況は、人件費の安い中国への産業移転を加速させる誘因となります。また、デフレは必ず円高を引き起こしますので、デフレにより日本から海外へ輸出することがコスト的にどんどん厳しくなります。これも産業の移転を加速させます。つまり、長期のデフレ維持は、日本の産業を中国に移転し、中国の発展をもたらす結果になりました。

また、産業が移転するためには「投資」が必要となります。資金です。多くの場合これは銀行からの借り入れによってまかなわれる事になります。これにより銀行は莫大な利益を得ることができます。日本はデフレ不況のままなので、国内への投資はすすまず、銀行は金利を稼ぐことができません。企業がこぞって中国へ移転すれば、そのための資金需要は半端でありません。中国への産業移転で日本国民は仕事を奪われ苦しんでいますが、銀行は大儲けしたはずです。また産業移転で中国へ流れ込んだおカネはバブルという連鎖反応を引き起こし、金融関連企業に莫大な利益をもたらしています。

肯定する証拠を出すことも、否定する証拠を出すことも困難です。だからといって「証拠が無いから嘘だ」という考えは、ナイーブに過ぎます。証拠が無いのであれば、状況を用いて真偽の評価をするのが普通です。日銀の行動は何も変化しておらず、一貫しています。過去15年にわたってデフレが改善されなかったにもかかわらず、その方策を一切改めようとせず、なおも同じ方策を継続しています。普通は結果が出せないなら方針を転換し、様々なアプローチを行います。しかし、日銀はまったく同じ事を繰り返すだけ。つまり日銀にはデフレ脱却の意図が無いことを意味します。中国や金融社会との関連性については、日銀の方針が転換したときに、誰かが何かの行動を起こすという形で表面化するはずです。注意深い観察が必要です。

真実は「ある」のではなく「作られる」

私たちが真実と信じているものの多くは作られたものです。目に見えているものは、まさに目に見えているままなのですが、目に見えないもの、抽象的な概念、社会の常識などは「それが真実である」と思い込まされることによって真実となります。人間がある事象を信じるか信じないかは無意識下に刷り込まれた暗示が決定します。催眠術で嘘を信じ込まされるのは、催眠術により無意識下に暗示を埋め込むことができるためです。人の意思と行動は無意識が支配します。これは変な考えではなく、心理学のごく初歩的な知識です。その無意識の暗示を打ち破る手段は一つだけ。「疑うこと」です。暗示は本人がそれを疑った瞬間に解けます。

「陰謀論は胡散臭い」という常識も作られた真実です。もちろん陰謀を信じるか信じないかは個人の自由です。しかし、陰謀が社会を動かすということを否定してなお、すべての社会現象に説明が付く人が居るとすれば、もはや神の領域に達しているとしか思えないのです。

人を疑わない態度は美しく見えますが、それは暗示のままにコントロールされて生きることを嬉々として受け入れている姿勢にすぎません。出来ることなら人など疑いたくもありませんが、そういう人間は利用され、淘汰さえる社会であることを忘れてはいけないと思います。