2016年6月15日水曜日

脱長時間残業と脱時間給を混同するな

読売新聞の社説を読んでいたら、さらっと変なことが書いてありました。長時間残業を解消すべきだと主張した後、長時間労働を抑制するために労働基準法の改正~残業代ゼロ法~が必要と、話を持ち出しましたw。

この強引な流れにさすがに呆れましたが、これに騙される人はいるでしょうね。しかし、脱長時間残業と脱時間給はまったく別ですし、何の関連性もありません。都合の良い解釈にすぎないのです。

確かに長時間残業の残業時間を減らすのは非常に重要です。そもそも一日8時間労働が基本ですから。労働衛生の観点から残業を減らすのは当然です。しかも、残業を減らせばその分だけ企業は労働力が不足しますから、その分だけ多くの労働者を雇用する必要が生じるため、失業者が減ります。完全雇用になれば、労働市場で賃金が増加を始めます。

とはいえ、残業をしたなら、残業代を払うのがあたりまえ。労使関係では残業はあくまで「会社の指示で行う」ことになっているはずです(少なくとも建前は)。ところが脱時間給では長時間残業しても残業代は払わないのです。

残業代を払わなくなれば、残業する労働者が減るというが、それは机上論です。なぜなら、残業しなければ終わらないほどの仕事を会社が労働者へ課すなら、残業代がゼロでも働かざるを得ないし、しかも賃金を払わずに働かせても違法にならない。これは合法的にサービス残業や幽霊社員を増やすための方法でしかありません。あくまでリスクを労働者へ押し付ける方法論だ。

これが「生産性の向上」とは笑わせる主張だ。
単に賃金カットで見かけの生産性を向上しているだけ。

もし本気で残業をなくして、長時間残業を解消したいなら、残業代ゼロではなく「残業を法的に禁止」すべきです。これは確実に残業を無くします。残業を禁じられて企業の労働力が不足するなら、企業は雇用を増やすべきでしょう。「残業代を払わなければ残業が減る」などという論法は、企業の負担だけを減らすための、もってまわった方法論です。

なお、残業を減らせば社員の年収が減少し、労働者の購買力が低下します(名目賃金の低下)。すると生活防衛のために貯蓄を増やしたり消費を大きく減らす可能性もある。そうすると世の中の景気に影響してしまいます。ただ闇雲に残業を減らすのではなく、何らかのマクロ的な対策も同時に講じる必要があると思われます。

また、時間当たりの生産性が向上しても、日本の総生産量が増加するとは限らない。