2016年7月7日木曜日

「ポピュリズム」は両義性ある言葉 気を付けよう

最近、新聞・マスコミ・御用学者が好んで「ポピュリズム」という言葉を使いだした。こうした一つのフレーズを持ち出して連呼するのは、マスコミの誘導手法の一つであるが、このポピュリズムという言葉は非常に定義があいまいで、両義性を持っています。それを逆手にとってマスコミが都合よく利用している危険性があると思われます。

どれくらいあいまいなのか?ネットのコトバンクの検索結果から、いくつかコピペしてみました(文末に引用掲載)。

ざっくり言えば、次の両義性があると思われます。

①政治家が大衆の不満を扇動して権力を得て、
  政治が行われる動き。
②政治家が大衆の不満を支持基盤として、
  社会改革を目指す動き。

ほとんど同じような動きだが、①は悪②は善と捉えられる。こうした両義性のある言葉、「ポピュリズム」を安易に批判に利用するのは極めて問題がある。なぜか、

ポピュリズムを批判することで、①だけでなく②も暗に批判することになる。つまり同時に、「大衆による社会改革運動」を批判しているのです。これは意図して行われている可能性があると思います。

大衆の不満とは、支配層つまり政治エリートによる抑圧です。昔の政治エリートは貴族や王族だったわけです。こうしたエリート支配層による抑圧からの解放こそ民主主義運動であったことは明白な事実です。これが②です。これを否定することは、エリートによる支配を正当化する「エリート独裁主義」に他なりません。

これは、新聞・マスコミ・御用学者が自らをエリートと考えているからなのかも知れません。エリート支配を正当化するマスコミ。そう勘繰りたくなります。

今日における政治運動において、真に批判されるべきは①つまり「扇動」です。扇動とは、不満や不安を煽りたてて、人々の意識をそこだけに集中させ、正常なバランスのとれた思考を失わせる活動です。反対意見を報道せず、一つのフレーズを連呼する。あやしいウソまがいの情報を流す。こうして大衆を操作することです(今日のマスコミのように)。

ですから、現在、世界で起きている大衆運動を、両義性のある「ポピュリズム」という言葉で称して批判することは非常に問題がある。むしろ「扇動政治」あるいは、そんなに外来語が好きなら「アジテーション」を用いるべきと思います。

そして扇動政治に陥らないためには、そもそも扇動の動機づけとなる不満や不安を解消する努力、つまり政治に改革が求められるはずです。


(以下、コトバンクから引用)

>ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説
ポピュリズム
ポピュリズム
populism

人民主義と訳されるが,その意味は適用範囲によって異なる。 19世紀後半のロシアにおいて発生したナロードニキ運動はツアー体制打倒を目指す知識人たちが農村を拠点として展開した社会主義運動である。
本文は出典元の記述の一部を掲載しています。

>知恵蔵2015の解説
ポピュリズム

政治に関して理性的に判断する知的な市民よりも、情緒や感情によって態度を決める大衆を重視し、その支持を求める手法あるいはそうした大衆の基盤に立つ運動をポピュリズムと呼ぶ。ポピュリズムは諸刃の剣である。庶民の素朴な常識によってエリートの腐敗や特権を是正するという方向に向かうとき、ポピュリズムは改革のエネルギーとなることもある。しかし、大衆の欲求不満や不安をあおってリーダーへの支持の源泉とするという手法が乱用されれば、民主政治は衆愚政治に堕し、庶民のエネルギーは自由の破壊、集団的熱狂に向かいうる。例えば、共産主義への恐怖を背景にした1950年代前半の米国におけるマッカーシズムなどがその代表例である。民主政治は常にポピュリズムに堕する危険性を持つ。そのような場合、問題を単純化し、思考や議論を回避することがどのような害悪をもたらすか、国民に語りかけ、考えさせるのがリーダーの役割である。
(山口二郎 北海道大学教授 / 2007年)

>朝日新聞掲載「キーワード」の解説
ポピュリズム

一般的に、「エリート」を「大衆」と対立する集団と位置づけ、大衆の権利こそ尊重されるべきだとする政治思想をいう。ラテン語のポプルス(populus)=「民」が語源。こうした考えの政治家はポピュリストと呼ばれる。複数の集団による利害調整は排除し、社会の少数派の意見は尊重しない傾向が強い。「大衆迎合」「大衆扇動」の意味でも使われる。ただ、有権者の関心に応じて主張を変えたり、危機感をあおったりする手法は、ポピュリストとみなされない政治家も用いる。
(2015-12-23 朝日新聞 朝刊 2外報)

>デジタル大辞泉の解説
ポピュリズム(populism)

1 (Populism)19世紀末に米国に起こった農民を中心とする社会改革運動。人民党を結成し、政治の民主化や景気対策を要求した。
2 一般に、労働者・貧農・都市中間層などの人民諸階級に対する所得再分配、政治的権利の拡大を唱える主義。
3 大衆に迎合しようとする態度。大衆迎合主義。

>大辞林 第三版の解説
ポピュリズム【populism】


民衆の情緒的支持を基盤とする指導者が,国家主導により民族主義的政策を進める政治運動。1930年代以降の中南米諸国で展開された。民衆主義。人民主義。

政治指導者が大衆の一面的な欲望に迎合し,大衆を操作することによって権力を維持する方法。大衆迎合主義。

>日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
ポピュリズム
ぽぴゅりずむ
populism

大衆の支持を基盤とする政治運動。一般庶民の素人(しろうと)感覚を頼りに、政権や特権階級、エリート層、官僚、大地主、大企業などの腐敗や特権を正す政治エネルギーとなることもあるが、一方で人気取りに終始し、大衆の不満や不安をあおる衆愚政治に陥ることもある。このため「人民主義」「民衆主義」などと肯定的に訳される場合も多いが、日本では「大衆迎合主義」「衆愚政治」などと否定的に使われることがある。なお、アメリカでは肯定的に、ヨーロッパでは否定的な意味で使われる傾向がある。ポピュリズムの特徴は、(1)理性的な議論よりも情念や感情を重視する、(2)政治不信や既存の社会制度への批判を背景に広がることが多い、(3)集団的熱狂、仮想敵への攻撃、民主主義の否定などに向かいやすい、(4)有権者の関心に応じて主張が変わり一貫性がない、(5)多くの場合一過性の運動である、などである。
 ラテン語の「ポプルス(人々、人民)」が語源である。もともとは19世紀末にアメリカ南西部で農民層を中心に結党され、民主化、景気対策、土地所有制限、大企業の寡占防止、所得再分配、貧富の差是正などを要求した人民党(People's Party、Populist Party)の政治運動をさす。1930年代以降、都市化の進んだ中南米諸国で相次いで出現し、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、ペルー、ボリビアなどに広がった。1950年代前半にアメリカで起きた反共産主義運動「マッカーシズム」や、オバマ政権を批判する草の根保守運動「ティーパーティー運動」などは、ポピュリズムの一種とされている。
 日本では2000年代初頭の小泉純一郎政権の誕生以降、ポピュリズムということばが多用されるようになった。抵抗勢力との対決を掲げた小泉政権の構造改革路線や、大阪市長の橋下徹(はしもととおる)(1969― )を中心とする「維新の会」の動きなどがポピュリズムにあたるとされる。こうしたポピュリズムの動きは、既存政治システムへの不満や批判ばかりを繰り返すマスコミや知識層への不信の表れであるという指摘もある。[編集部]
[参照項目] | 構造改革 | ティーパーティー運動 | マッカーシズム

>世界大百科事典内のポピュリズムの言及
【ポプリスモ】より

…英語ではポピュリズムPopulismという。大衆を支持基盤とした政治運動。…
※「ポピュリズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。