2016年7月27日水曜日

ベーシックインカム財源のモデル例

ベーシックインカムの財源については、いろいろ言われているようです。一つのモデルについて考えてみます。人工知能やロボットによる生産性の向上は、総必要労働時間を減少し、失業者を増加させます。これにより家計の総所得が減少し、家計の総購買力が企業の総生産力を下回ることとなり、これが企業と家計の間の通貨の循環不全を引き起こして、経済のデフレスパイラルを引き起こします。

これを防ぐためには、通貨循環を維持しなければならず、家計の購買力を維持するために家計への給付金(ベーシックインカム)を必要とします。これにより家計の購買力と企業の生産力がバランスされ、デフレを防ぎ、かつ生産された財を国民へ円滑に分配します。

ところで、家計に給付したおカネはどこへ流れるか。当然ですが企業へ流れます。このおカネの一部は従業員の給与として家計へ支払われます。一方、企業は従業員を解雇してロボットを導入することでコストが大幅に削減されています。コストが削減されても、売り上げの量は維持されていますから、企業の利益が増大します。企業の利益は株主への配当金と剰余金の2種類に流れます。

つまり、ベーシックインカムで給付したおカネは家計の貯蓄と企業の内部留保に変化します。従って、家計の貯蓄と企業の内部留保に課税することで、これを財源としてベーシックインカムを用いた通貨循環を永久に維持することが可能です。

この際、フロー(所得あるいは利益)ではなくストック(貯蓄あるいは内部留保)に課税するほうが良いと考えます。その理由の一つは機械化によって給与所得を得られる人数が極端に減ることにより、課税対象者が少なくなってしまうこと。このためフローの税収は継続的に減り続けます。

もう一つは、フローに課税してもストックが増え続ける可能性が高いからです。家計や企業のストック(貯蓄)が増えるとおカネが死蔵され、通貨が循環しなくなり、デフレ化します。これを補うには、どのような形にしろ世の中のおカネを増やすしか方法がなくなります。その結果、貯蓄を無制限に許せば、通貨は永遠に膨張し続けます。通貨膨張速度が大きすぎるのは望ましいことではないと思われます。

ですから、フローではなくストックに課税することで、ストックの伸びをある程度の量で抑えておくことが理想だと思われます。なお、脱税によって完全には補足できませんから、不足分については通貨発行により世の中のおカネを増やすことで対処できます。この通貨発行が今で言えばヘリマネに該当します。

結論としては、ベーシックインカムの財源として
「通貨発行」「金融資産課税」
通貨発行で放出し、金融資産課税で回収する。

導入に当たっては、金融資産課税を先に行う必要はないでしょう。税の目的は供給したおカネを回収することにありますから、最初はおカネの供給。世の中のおカネが増えたところで、増えたおカネを回収するための増税、という手順です。