2020年8月23日日曜日

コロナ経済危機の真相とは?第7回

 企業や家計の貯蓄が必要

 今回のコロナ危機によって明らかになったことは、企業の内部留保の重要性です。感染拡大防止のために企業の活動が制限されると、企業の売り上げが減少し、利益がなくなり、経営が赤字になります。その状態が続くと、企業は倒産してしまいますので、経費を削減するために社員を解雇します。それにより失業者が増大する恐れがあります。今日のように、国民におカネを給付する制度が整っていない場合、失業者の増大は経済に深刻な悪影響を及ぼします。

 ところで、もし、企業が十分な内部留保を保有していたなら、仮に売り上げが激減して経営が赤字に陥ったとしても、内部留保を切り崩して社員の賃金に充てることで、雇用を維持し続けることが可能です。ですから、企業の内部留保は、コロナ危機や金融危機のような一時的な経済危機、不況に対して「雇用を維持する」意味において重要であることがわかります。もちろん、内部留保が十分あるにも関わらず、ためらいもなく従業員を解雇する企業もあるでしょうが、そうした企業は社会的な批判・制裁を受けて然るべきでしょう。

 内部留保のない場合であっても、銀行が融資に応じるのであれば、借り入れによって、社員の雇用を維持することは可能です。今回のコロナ危機の対策として、政府が企業に対する無担保、無利子の貸し出し支援を行いました。しかし、それは企業の借金を大きく膨らませることになってしまいます。仮に雇用を維持できたとしても、企業は将来においてその借金を銀行に返済しなければなりませんので、企業の経営は厳しいものになります。将来へのツケです。感染終息後も、長期にわたって利益の多くを借金の返済に回すことになり、利益を再投資に振り向けることができません。従って、日本の経済成長が長期にわたって鈍化するでしょう。

 ですから、経済危機がしばしば起きる時代にあって、危機に備えて企業が内部留保を厚くすることは、雇用維持のためにむしろ良い事であると言えます。そもそも日本の企業が内部留保を貯め込むようになったのは、バブル崩壊による経済危機で多くの企業が苦労した際に、政府の支援が十分でなかったと企業が感じているからではないでしょうか。危機の際に政府に期待できないのであれば、自ら危機に備えることは企業として当然の選択です。危機の再来が避けられないのであれば、むしろ企業に対して、危機の際の雇用維持を目的とする内部留保の積み立てを推奨すべきかも知れません。雇用維持のための積立金については、法人税を非課税にするなどです。

 企業だけでなく、家計においても貯蓄は危機に対する備えとして重要です。国民の各家計が十分な貯蓄を有していれば、仮に給与所得が減少あるいは失業しても、貯蓄を切り崩すことで生活できます。もちろん、先ほどご説明したような国民への給付金制度、すなわち、すべての国民に無償でおカネを支給する制度が実現していれば、危機に備えておカネを貯めこむ必要はないでしょう。しかし、現在はそうした給付金制度はありませんので、自衛手段として、国民が貯蓄を増やす必要があると思われます。

 とはいえ、家計全体としては、貯蓄がないわけではなく、むしろ過剰なほどあります。家計の貯蓄であるところの、「家計の金融資産」は総額で1800兆円を超えて、ますます増え続けています。総額としては、日本の家計は、ものすごい金持ちです。ところが、その一方で、無貯金の世帯数が増加し続けていることから、貯蓄が一部の富裕層に偏在していることがわかります。こうした「国民の資産格差」を是正しなければ、一部の富裕層がおカネを貯め込んだところで、危機に対する経済リスクを軽減することはできないでしょう。

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