2017年8月31日木曜日

通貨の再分配はシステムとして必然

貯め込まれている通貨を回収し、通貨を再循環させる処置はシステムの維持に必然であり、それは人体システムにおける血液に例えるなら誰でもわかるでしょう。

通貨は経済の血液に例えられることがあります。その例えを用いてちょっと考えてみれば、貯蓄に対する資産課税が当然である理由が分かります。

人体システムにおいて血液は体の各臓器に酸素や栄養を運ぶ役割を担います。そのため、循環する血液が減ると各臓器が衰弱して、人体システムが破綻します。

人体システムには血液を貯める臓器もあります(脾臓)が、基本的には体のどこかに血液が貯めこまれてしまうことはありません。しかし、もし仮に体のどこかに血液が貯まってしまう(うっ血)と、全身に流れる血液の量が減ってしまうため、各臓器は酸素や栄養が不足した状態になってしまいます。

もしそうなったらどうするか?血液のたまっている部分に人工血管を接続して血液を回収し、全身の血管に血液を戻そうとするでしょう。そういうバイパスを作ってやれば、全身を回る血液の量が減ってしまうことはありません。全身を回る血液の量が、人体を支えているのです。

これを経済で言えば、貯めこまれて動かなくなっているカネ、つまり貯蓄に課税し、これを経済の通貨循環へ投入する処置であることは容易に理解できるでしょう。だからこそ、金融資産への課税は不可欠なのです。こうした処置がまるで成されていない、現在の税制は、明らかに欠陥税制であり、人体の臓器を弱らせることと同様に、国民を衰弱させる原因になっています。カネが回らないために、国民に酸素や栄養が届かないのです。

ところが、資産課税はすでに2年も前に、ピケティ教授が提唱したにも関わらず、新聞マスコミが批判し、自民党の議員が批判し、野党議員が無視する始末でした。官民あげて資産課税ではなく、消費税の増税を推進をしようとしているのですから、呆れて開いた口も塞がりません。

先ほどの人体システムに例えると、消費税を増税するとは、体のどこかでうっ血している血液をそのまま放置して、いままさに体を循環している血液・血管に人工血管をつなぎ、新たな血管網を用いて各臓器に血液を分配しようとする方法です。これは単に、各臓器への血液の分配量を調整するに過ぎません。

すぐおわかりのように、これでは血液の流れるルートが変わるだけで、全身を回る血液の総量はまったく増えないのです。ですから、酸素や栄養の不足は解消されることは絶対にありません。極端に貧血の臓器はなくなりますが、せいぜい「全身が平等に貧血になる」のが関の山なのです。

もし、どうしても血管のバイパス手術をしたくないのであれば、血液を増やすことによって、全身を回る血液量を増やすしかありません。それが金融政策です。

ところが驚くべきことに、この金融政策に反対する勢力が日本には大勢いるようです。全身を回る血液が不足しているのに「出口戦略がー」「インフレ目標がー」と言っている連中です。彼らは、うっ血している血液を放置するのみならず、血液を増やすことにも反対しているのです。

おそらく、血液を膨大に貯め込んでいるガン組織があるに違いありません。あなたが名外科医なら、バイパスではなく、血液を貯め込んでいるガン組織を切除する根治療法を選択するかも知れませんねw。

話はそうとうに外れましたが、経済の血液であるおカネが循環不全を起こしている今日において、それを解決する方法は、うっ血している部分から血液を回収するバイパス手術か、血液を増やすか、そのどちらかしか方法はありません。自然にうっ血が解消する見通しはまったくないのですから。