2018年5月27日日曜日

高プロ成立をベーシックインカムの好機に

高度プロフェッショナル制度は脱時間給へ向けた「蟻の一穴」になる恐れがあります。しかし、ただ反対しても世界的な時流に押されてしまうでしょう。これに対抗するには「ベーシックインカム」が有効です。

企業が求める「脱時間給」の手始めとして、高度プロフェッショナル制度が導入されました。高プロは対象が限定されるため、これそのものはあまり問題ありません。しかしこれまでの流れから言えば、これが蟻の一穴となり、なし崩し的に「脱時間給」がすべての職種に拡大される恐れがあります。

グローバル資本主義の国際競争社会にあっては、企業のコストダウン競争がますます激化する一方であり、脱時間給もその流れに沿ったものと思われます。こうした動きに対して徹底的に反対し、脱時間給を無きものにしようとする試みは、相当に苦戦を強いられると思います。仮に脱時間給を廃止に追い込んだとしても、日本がグローバル競争で敗退してしまう恐れもあります。

こうした世界的な流れに対しては、新たな社会ステムの導入によって対抗することが賢明だと思います。それが「ベーシックインカム」です。ベーシックインカムは脱時間給がもたらす労働者の不利益を補い、場合によっては脱時間給をむしろ労働者のメリットに代えてしまう可能性もあると思われるからです。もしベーシックインカムが導入されたならどうなるか。

①導入前:成果が出なければ賃金が下がるため、長時間労働してまで会社の要求する成果を出す必要がある。→導入後:ベーシックインカムによって所得が上昇するので、残業して成果を出さなくても生活レベルは維持できる。むしろ労働時間の拘束がないので、毎日6時間労働でも文句は言われない。

※もちろん、長時間労働して成果を出し、会社から多額の報酬を貰うのも自由。

②導入前:脱時間給でブラックな労働環境の会社でも、辞めたら生活できなくなるので、ブラックと知っても働かざるを得ない。→導入後:所得が保障されるので、ブラックな労働環境の会社は、いつでも退職できる。社会からブラック企業を一掃できる。

③導入前:転職したくても失敗すると路頭に迷うので、できない。→導入後:万一失敗しても、所得が保障されているので転職しやすくなる。チャレンジできる。雇用の流動化を促進して社会の生産性を向上させる。

④導入前:景気が悪いと、いくら労働しても成果が出ない。→導入後:国民の購買力上昇によって好景気になり、労働の成果が出易くなる。

最終的には、労働時間と無関係に所得が保障されるので、働いても、働かなくても生活できる社会になります。長時間労働して成果を出せば、リッチな生活にも道は開かれています。社会全体として所得レベルを引き上げるため、大企業だけに偏りがちな賃上げメリットを、すべての労働者に与えることができます。

もちろん、明日から完全にそういう社会が実現できる、という話ではありません。しかし、そのようなビジョンを持って、着実に「脱時間給への対抗策」を進めてゆかなければ、またしても後手に回るだけでしょう。脱時間給の適用範囲が拡大されてから騒いでも遅すぎるのです。

例えば、毎月1万円の小額ベーシックインカムから始めるなら、直ぐにでも始められます。そのようなくさびを打ち込んでおけば、それこそ、それを蟻の一穴にして、完全なベーシックインカムを実現できると思うのです。