2018年6月1日金曜日

竹中氏はなぜ嫌われるのか?

例の竹中氏がテレビで高プロに関する発言をし、ネット界隈では非難の声があがっています。なぜ竹中氏が嫌われるのか、それなりの理由があるでしょう。

竹中氏の考え方そのものは奇抜なものではありません。例えば「派遣労働」に関しては、雇用の流動化の考え方があり、これは現在の経済学から言って大間違いの話ではありません。しかし考え方に間違いがなければ、それでどんどん推進すれば良いかと言えば、まったくそうではありません。

様々な政策は、その政策を行なうタイミング、優先順位や同時に行なわれる政策との相互作用が極めて重要になってきます。つまり、個々の政策が一般論として正しい場合でも、その運用を間違えるならかえって社会に害悪を与えることもある、そうした点を考慮することがとても大切です。

こうした考慮を欠き、一般論として正しいからといって強引に推し進め、自らがその改革の結果として利益を得るようなポストに収まっていることが、竹中氏の嫌われる原因であると思います。

では、どうすればよかったのでしょうか?

竹中氏は優先順位として「デフレ脱却」を最優先に推し進めるべきだったのです。もちろん当時は金融緩和も推し進められましたが、デフレ脱却を実現するには至らず、日本の景気はまだ十分に回復していない状況でした。そのため労働者は好むと好まざるとに関わらず、派遣業を利用して仕事を探すしか方法がなく、派遣業者にいいように利用されることになったのです。そして派遣業は大儲けしました。

もし、デフレから完全に脱却し、インフレの状態になり、人手不足によって賃金がどんどん上昇する、労働者にとって売り手市場である経済局面になれば話は別です。こうなれば労働者が派遣業に頼る必要はなく、正社員の雇用も増えます。それでも派遣社員を選択する労働者が居たとしてもそれは個人の自由でしょう。

ですから、もしデフレ脱却を強力に推進してそれを達成し、日本が好景気になってから派遣を解禁したなら、問題はそれほど拡大しなかったと思われます。ただし、その場合は派遣業が儲かるとは限りません。もし、派遣業を儲けさせるために、デフレであるにも関わらず、先行して派遣を解禁したのだとすれば、これは悪質ですが、真相は誰にもわかりません。

一つだけ言える事は、政策の優先順位が間違っていたのであり、高プロのような「脱時間給」にしても同様の傾向が見られます(まだデフレ脱却は不十分、セイフティーネットも不十分)。その点において竹中氏は非難されるに値するし、またそれゆえに嫌われて当然だと思うのです。