2018年5月19日土曜日

プライマリーバランスではなくインタゲが正解

新聞マスコミは財務省の意を受けて「プライマリーバランスの黒字化」をさかんに喧伝します。しかしプライマリーバランスを黒字化しても財政が均衡するだけであり、日本経済にとって何のメリットもありません。インフレターゲットこそ正しい方法です。

プライマリーバランスとは、税収と歳出を均衡させること、つまり税収の範囲で歳出を考えるものです(財政均衡主義)。プライマリーバランスのメリットがあるとすれば、それはいま以上に国債の発行残高が増えることを防げる点です。国のシャッキンガーと年中騒いでいる人たちにとっては良い方法かも知れません。

しかし、プライマリーバランスの均衡にこだわれば、財政は果てしなく収縮する危険性が非常に高いと言えます。なぜなら、貯蓄によって循環するおカネの一定量が常に退蔵(貯めこまれて使われなくなる)されるため、循環するおカネは常に減り続ける性質があるからです。

今日の税制においては、循環するおカネに課税する方式がほとんど(消費税、所得税、法人税など)であるため、通貨の退蔵によって循環する通貨が減ると、必然的に税収が減る仕組みになっています。そのため、税収は毎年必ず減少を続け、それにつれて歳出も毎年縮小せざるを得なくなります。

ですから、もし歳出額を毎年減らすことなくプライマリーバランスの額を均衡させるためには、貯蓄によって退蔵される通貨を上回る量の通貨を通貨循環に投入する必要があります。そのためには、従来、経済成長による通貨量の増加、つまり「信用創造貸し出し)による通貨の増加」が必須でした。

しかし、経済成長に必要とされる投資を促進するには、金利が必要であり、先進諸国の均衡金利がマイナスである今日では、信用創造(貸し出し)で金利をプラスにするだけのインフレを起こすことは難しいと思われます。これが流動性の罠の状態です。

その一方、高齢化に伴って医療費・年金などに必要とされる社会保障費は必ず増大します。毎年のように税収が減る一方で社会保障費は必ず増加する状況でプライマリーバランスを維持するためには、増税(税率の引き上げ・新たな税の導入)しか方法はありません。

しかし、増税は明らかに消費を冷やして経済をデフレへ向かわせてしまいます。これは通貨循環をますます縮小する結果を招き、仮に税率の引き上げによって一時的にプライマリーバランスを保てたとしても、増税が引き起こす景気後退によって徐々に税収が減り、再び増税が必要となるのです。

これは「増税緊縮スパイラル」とも呼ぶべき現象であり、増税→経済不況→増税→経済不況と連続的に経済が収縮し、やがてデフレ恐慌によって破綻し、日本経済は崩壊します。

すなわち、プライマリーバランスは日本経済を崩壊させます。

ではどうすれば良いのでしょうか?そこでプライマリーバランスに代わって用いられる政策が「インフレターゲット政策とヘリコプターマネー政策の併用」です。ヘリコプターマネーによって、毎年のように退蔵される通貨の減少および経済成長に伴い必要とされる循環通貨を投入しつつ、インタゲによってその投入量をコントロールします。

例えば小額ベーシックインカムとして全国民に毎月1万円(年間財政支出15兆円)を実施し、インフレを3%程度に設定しつつ、給付金額を毎年徐々に増やしてやれば、消費拡大によって景気が回復するだけでなく、実質金利がマイナスになって投資も促進されますから、供給力の向上も期待できます。

この方法であれば、日本経済がデフレ恐慌に陥る心配はなく、またハイパーインフレになる心配もなく、しかも国民所得が向上し、日本の供給力も向上を続けることで、間違いなく日本は成長軌道に乗ることができます。

プライマリーバランスはデフレ恐慌への道です。インフレターゲットとヘリコプターマネーの組み合わせにより、景気をやや過熱気味にしたまま、税収も安定させ、社会保障による再分配をフルに活用できる強い日本経済を目指すべきだと思うのです。