2018年5月12日土曜日

世代間対立の原因は緊縮主義

若者が「自分達は高齢者に搾取されている」と批判し、高齢者が「俺たちは苦労して働いたのだから、若者も苦労しろ」と批判する。実に不毛な世代間対立です。しかし対立の原因は緊縮主義にあります。

日本はバブル崩壊以降、失われた20年の間に賃金が低下し続け、ブラック企業がはびこってしまったため、若い世代には不満を持つ人々も少なくないでしょう。バブル以前の人々だけがいい思いをしたと感じるのです。それに輪をかけて若者に不満を抱かせる事例があります。年金制度です。

新聞マスコミが好んで用いる表が「世代ごとの年金保険料支払い額と支給額のバランス」です。この図では、世代ごとに生涯支払うことになる年金保険料の総額と、生涯受け取ることになる年金支給額の総額の差を計算し、比較しています。

それによれば、今の20~30代の若者世代は負担が大きく、2000万円以上も損するとの試算がされています。それに対して65歳以上の高齢者は2000万円以上も得すると試算されています。こんな表をこれ見よがしに見せられれば、それでなくとも所得の伸び悩んでいる若者は怒るでしょう。そして高齢者を敵視し、悪者扱いし、なかには「若者は高齢者に搾取されている」と主張する者まで現れてきます。

「若者は高齢者に搾取されている」。こうした批判を受けた高齢者もまた、怒るでしょう。高齢者だって昔は若者だったわけで、その時代には、生活するために相当な苦労を強いられてきたわけです。戦後の荒廃した国土の復興に寄与してきたのは、紛れもなく今は高齢者となられた方々です。その彼らには高齢となったいま、ゆっくりと余生を送る権利があって当然でしょう。それを軽率な若者が「高齢者に搾取されている」とわめけば、怒るのは当然です。

その一方、若者に火をつけて、世代間対立を引き起こしている新聞マスコミは、ほくそ笑んでいるでしょう。もちろん、これを消費増税や年金支給額の引き下げに結びつけるためです。したり顔で上から目線でこう言うのです「若者の負担を軽減するため、広く、高齢者にも応分の負担を求める必要があるだろう」。

はあ?

しかし、良く考えてください。生産性、生産能力は向上し続けています。機械化がこれだけ進化した時代、さらには人工知能やロボット、無人工場がますます急速に普及されると予測される時代にあって、なぜ若者の負担が年々増加するのか?高齢化が進行していることは間違いない事実ですが、テクノロジーの進化により、それに見合うだけ生産性は向上しているのです。

単純化して言えば、支えるべき高齢者の数が増えたとしても、それを人工知能やロボットが支えるなら、若者の負担が増えるはずがないし、それが未来の社会の姿のはずなのです。

にもかかわらず、現在の年金システムでは、どんなにテクノロジーが進化しても、そうした未来には到達できません。これは現在の年金システムそのものに、重大な瑕疵があると判断せざるを得ないでしょう。そして年金システムはマクロ経済の大きな部分を占めているのであり、現在の年金システムはマクロとしても大きな欠陥を内在していると思わざるを得ないでしょう。

このような問題に解決方法を提示してくれるのも、ベーシックインカムとその財源に関する考え方でしょう。テクノロジーの進化がもたらす恩恵、高い生産性を、高齢者の生活保障にどうすれば十分に活用できるのか?新しい発想とシステムが求められています。それこそが本質です。

新聞マスコミと財務省連合による、増税、福祉切捨ての誘導に載せられ、世代間で対立している場合ではないと思うのです。