2018年11月9日金曜日

賃金UPのチャンスも、移民で台無しに

資本主義社会において、賃金は市場原理で決まります。ですから、まさに昨今の人手不足は、待ちに待った賃金UPのチャンス到来であり、経済の好循環のスタートになるはずですが、移民政策がこのチャンスを台無しにします。

これまでの20年以上に及ぶ長きデフレの期間において、人手はずっと余剰であったため、平均的な労働者の賃金は20年以上に渡って下がり続けてきました。労働力が商品である以上、労働力が余れば値下がりは当然です。

しかしついに、人手不足時代の到来です。賃金が上昇するチャンスが巡ってきたのです。人手不足こそ、労働者にとって待ちに待ったシーズンです。なぜなら、マクロ経済から言えば、いくら一生懸命に働こうと、短時間ですごい量の仕事をこなそうと、そんなことで賃金は決して上昇しません。「人手が不足すること」こそが賃金上昇の条件なのです。

実際、バブル景気の日本では、人手不足が問題だと大騒ぎされ、どの企業もやっきになって人を採用しました。そのため、賃金がぐんぐん上昇し、とりわけアルバイトのような非正規雇用の賃金も高くなり、フリーアルバイターが豊かで自由な生活を謳歌していました。ワーキングプアなど、考えられない時代です。

さすがにそこまで回復するのは大変ですが、そのように、労働者が大切にされる時代が再び到来しようとしています。そして労働者の賃金が上昇すれば、消費者の購買力も上昇し、消費が増えて景気が回復し、企業の利益が増加して、再投資が増え、生産が増え、さらに景気を押し上げるという「賃上げによる景気の好循環」がスタートするのです。

ところが、移民政策はこれを台無しにします。今、安倍政権は「人手不足の解消」をやろうとしています。人手不足が解消すると、労働市場では賃金が上昇しなくなります。せっかく巡ってきた賃上げの時代を潰そうというのです。これでは、安倍政権が主張する「賃金の上昇による景気の好循環」は望めません。企業は賃金を上げる必要がなく、外国人労働者を採用すれば良いからです。

そこまでして、労働者に賃金を払いたくないのか?

恐ろしいほどのデフレマインドです。消費者が少しでも高い商品を買うことを避け、安い中国製品をこぞって買い求めることとおなじく、企業も少しでも高い日本の労働者を買うことを避け、安い外国人労働者を買おうとしているわけです。移民依存は企業のデフレマインドです。

企業が外国人労働者を求める理由は、
人手不足なのではなく「カネ不足」です。

賃上げするだけの、売り上げ高、原資が企業にないからです。カネがあるのは一握りの巨大企業だけです。もし、バブル経済の頃のように、多くの企業にカネがあれば、当時と同じように賃金を上げて人手を確保しようとするはずです。しかし、企業にカネがなければ、賃金を上げたくても、上げることは不可能なのです。

そこでヘリコプターマネーです。

ヘリコプターマネーによって、すべての国民に毎月おカネを給付すれば、国民の購買力が向上して消費が拡大し、企業の利益も増加します。企業がカネを持てば、賃金を上げる事が可能になります。まして人手不足なのですから、企業間の賃金UP競争がスタートします。

中小企業は大企業に人材を取り負けるから、やはり困るだろうと考える人もいるでしょう。しかし、中小企業の人材難は、バブルの当時も同じでした。だからといって、当時の中小企業がバタバタ倒産したなんて話は、まるで聞いたことがありません。そんなことより、その後、バブルが崩壊してデフレ不況になったため、中小企業はバタバタ倒産することになったわけです。バブルが崩壊したあとは、人手が余って、いくらでも人を採用できましたが、景気が悪くて利益が落ち込み、社員を採用するどころではなくなったのです。

企業は人手不足で倒産しない、デフレ不況で倒産する。

もし、人手不足で倒産するとすれば、まず真っ先にブラック企業が倒産するでしょう。ブラックな職場を嫌って、労働者がみんな逃げてしまうからです。何か問題でも?

市場がきちんと機能していれば、人々の生活にとってより必要性が高い企業の売り上げが増加し、必要性の低い企業の売り上げが減り、ゆえに、必要性の低い企業からは社員が逃げ出して倒産することになります。必要のない企業(ゾンビ企業)が倒産しても、何の問題もありません。

それどころか、必要性の低い企業が淘汰され、必要性の高い企業が増えますから、必要性の高い企業へ労働力が再配分され、日本の生産性が向上し、企業の競争力も高まります。

こうした労働力の再配分の動きは、カネを潤沢に供給し、インフレ傾向に誘導しなければ機能しないでしょう。おカネがどんどん回って、市場がきちんと機能しなければダメです。

ところが、インフレを極度に嫌っておカネの供給をケチり、代わり移民政策によって、安い労働力に頼るなら、労働力の再配分は行なわれず、ゆえに、生産性の向上が遅れることになるのです。これは、日本の企業の成長戦略とってもマイナスになるでしょう。

労働者の賃上げ、それによる経済の回復、投資の増加、税収増、企業の生産性の向上、すべてを台無しにする移民政策は断じて認められません。