2018年11月13日火曜日

金融政策が難解である理由

大多数の国民は、今日、マスコミに出てくる金融の話(マネタリーベースとマネーストック、量的緩和、予想インフレ率、マイナス金利など)をほぼ理解していません。なぜならそれが「難解」だからです。そして、その難しさの原因は現在の金融制度そのものにあります。

現在の金融制度は、信用創造によって世の中におカネを供給する準備預金制度です。しかも、中央銀行と市中銀行という、二重のシステムから成るため、非常に複雑です。

それに対して、江戸時代やローマ時代のように、時の政府が通貨を発行する方法は非常にシンプルです。これが政府通貨制度です。政府通貨制度とは、政府が通貨を発行し、それをお城の建設や兵士の給料などに支出することで、世の中に流れ出し、それらのおカネが経済活動に使われるものです。ですから、世の中のおカネの量は、政府が発行した通貨の量によって決まります。

しかし、普通の国民は現在の制度でも、日本銀行が発行した通貨(現金)の量によって、世の中の通貨の量が決まるのだと思い込んでるでしょう。それが、一般人の感覚です。

ところが、現在の通貨制度は一般人の感覚とは、およそかけ離れた形でおカネが供給されています。つまり、日銀が発行した通貨(現金)の量よりも、多くのおカネが世の中に流通しているのです。なぜなら、市中銀行が、日本銀行の発行する通貨をはるかに上回る量の通貨(預金)を発行しているからです。

そのことは、取りも直さず、日銀がおカネの供給量を正確にコントロールできないことを意味します。

つまり、日銀が通貨(現金)を増やしても、世の中のおカネの量(マネーストック)が増えるとは限らず、逆に、日銀が通貨の量を増やさなくても、世の中のおカネが勝手に増え続けることが起こりえるのです。

これは、恐らく、一般人の感覚とかけ離れているはずです。日銀の通貨(現金)の発行量によって、世の中のおカネの量が一意に決まるわけではないのです。これこそが、一般国民にとって、現在の金融政策の理解を困難にしている原因です。

準備金制度の場合、世の中のおカネの供給量は、日銀が発行した通貨の量によって決まるわけではない。では何で決まるのか?市中銀行が家計や企業などに貸し出すおカネ(預金)の量によって決まります。その貸出量は金利によってコントロールされます。ゆえに、世の中のおカネの供給量は、日銀の発行する通貨(現金)の量で決まるのではなく、金利で決まるのです。

そのため、世の中のおカネの量をコントロールする目的で、量的緩和やらマイナス金利やら、実質金利やらイールドカーブやら、複雑な話がわんさと出てきます。これが、ますます金融政策を難解にします。

その原因は、すべて「金利を操作して間接的に世の中のおカネの量をコントロールする」ためです。しかしこれでうまく世の中のおカネの量がコントロールできるはずがなく、量的緩和をやって日銀がおカネを発行しても世の中のおカネが増えず、インフレ目標に届かなかったりします。

一方、政府通貨制度であれば、金利を操作する必要はありません。政府(あるいは日銀)がおカネを発行して、それを国民に配ったり、公共投資として利用すれば、そのまま世の中におカネが流れ出して「おカネが直接的に」増えます。ですから確実にインフレ目標を達成できます。何より、「政府がおカネを発行すれば、世の中のおカネがその分だけ増える」というあたりまえの現象が起きるわけです。

準備預金制度の場合は、いくら日銀が通貨を発行しても、世の中のおカネが増えないという「意味不明」の現象が生じますし、逆に、日銀がおカネを1円も発行せずとも、世の中のおカネがどんどん増加してインフレになるという「意味不明」の現象も生じます。

さて国民の皆様にはぜひ考えて欲しいのです。ちょっと聞いてもわからないような、金融政策に関する難解な用語を多用する通貨制度のままで良いのか、それとも、誰でも理解できる、シンプルな通貨システムに改めて、誰でも理解できる金融政策が行なわれる方が良いのか?

そして、ほとんどの有権者が理解できない難解な金融システムと、すべての有権者が容易に理解できる金融システムと、そのどちらの方がより民主主義に相応しいのか?