2018年11月2日金曜日

金融緩和はニューノーマル(新常態)

時代と共に技術や社会は進化し、経済環境は変化してきました。その中で、現在の金融緩和の状態が生まれてきました。ところが、出口戦略とは、無理に昔の状態に引き戻そうとすることです。

出口戦略という逆行思想を捨てて、
ニューノーマル(新常態)を目指すべきです。

出口戦略とは何をすることなのか?簡単に言えば金融緩和と逆のことをするわけです。ですから、マネタリーベースすなわち「現金」を回収し、現金を抹消することです。現金とは普通の人がイメージしている紙幣や硬貨だけではありません。市中銀行の名義の日銀当座預金もそれに該当します。これら現金を抹消することが、いわゆる「正常化」と呼ばれます。

新聞マスコミや御用学者はもちろん、国民民主党のように、出口戦略に前向きな野党すらあります。しかし、なぜそこまでして現金を消そうとするのか?現金を消すことが、なぜ「正常化」と呼ばれて歓迎されるのか、実に不思議ですね。

ところで、日銀の発行した現金を消滅させるとどうなるか?世の中のおカネが減ると思うかもしれません。しかし、実際にはそれが即、世の中のおカネ(マネーストック)の減少に結びつくとは限りません。なぜなら、企業や家計が保有しているおカネのほとんどは、市中銀行の信用創造によって作り出された「預金」だからです。

ですから、仮に日銀の発行した現金がどんどん抹消されても、代わりに市中銀行がどんどん預金を発行すれば、世の中のおカネが減ることはないのです。

つまり、出口戦略とは何か?
日銀の発行するおカネ(現金)を減らして、
市中銀行の発行するおカネ(預金)を増やすことです。

そんなこと、うまくいくのか?
おそらく、不可能でしょう。

そもそも、日銀はどうやって現金を抹消するのでしょう。現金がどうやって発行されるかと言えば、それは、資産として「国債」を買い入れ、その代金として「現金」を発行します。ですから、この逆の操作が現金を抹消する行為になります。

といっても、日銀が国債を額面で売ったところで誰も買いません。相当な赤字覚悟で売るしかないわけで、そんなことはできません。そんなことをすれば、日銀が大損して、買い手が丸儲けしてしまいます。

しかし、日銀が保有する国債は、やがて償還期日を迎えます。この際、政府から日銀が現金を受け取りますから、この受け取った現金と国債を帳消しにすることで償還が完了します。では、政府が日銀に払う現金はどこからくるのか?国民の払った税金になります。つまり、

国民から税金で集めた現金を帳消しにして抹消する。
これが、金融正常化の正体です。

普通にそんなことをすればどうなるか?世の中のおカネが激減してしまうでしょう。しかも、税金を集めるために、さらなる増税もありえるでしょう。そうなれば、たちまち激しいデフレ不況に見舞われます。ですから、そんなことはできません。

もし現金を減らすなら、預金の増加と同時でなければなりません。すなわち、市中銀行が貸し付けの際に、新規に預金を発行する額と同じ額だけ、それにあわせて、現金を抹消しなければなりません。つまり、景気がどんどん良くなって、銀行から借金する企業や家計がどんどん増えるようになり、税収が増加すれば、現金を抹消することが可能になるでしょう。しかし、

抹消する現金の額は、およそ300兆円。

金融緩和によって日銀が発行した現金は300兆円を超えます。金融正常化とは、300兆円の現金を抹消する行為なのです。日本ではサラリーマンの賃金は低下しており、生活の苦しい人が多いですし、子供の貧困も社会問題化しています。そんな状況で、300兆円の現金を抹消するというのです。これが正常化の正体です。

だから景気が良くならないうちは出口戦略はできない、と日銀が考えるのは当然なのです。

ところが、そんなことおかまいなしに、新聞テレビは「外国は出口戦略を行なっている」「日本も乗り遅れるな」と血気盛んに主張しています。しまいには国民民主党のように、法律で強引に出口に向かわせろ、という始末です。

出口は必要はありません。
今の状態が「ニューノーマル(新常態)」なのです。

少し考えればわかりますが、300兆円以上も日銀が国債を買い入れて、ようやくこんな程度の景気回復なのです。それを強引に元に戻そうとすればどうなるか、火を見るより明らかでしょう。つまり、今日の金融緩和の状態こそが、これからのニューノーマル(新常態)であると認識すべきです。

金融緩和の副作用が騒がれています。しかし、それはマイナス金利政策です。マイナス金利政策は、日銀当座預金の一部にマイナスの金利を課す政策です。なんなら、これは止めたらよいでしょう。日銀当座預金はすべて金利ゼロにすればよいと思います。

ゼロ金利の状態を続けていると、次に金融危機とデフレ不況が生じた際に、金利対策が取れないとの批判もありますが、それは間違いでしょう。ヘリコプターマネーという政策がバッチリ残っていますので、心配ありません。

いつデフレに逆戻りするかわからない経済環境では、金融緩和はニューノーマル(新常態)だと考えるべきでしょう。