2018年8月7日火曜日

インフレ暴走が心配ならソブリンマネー

国民におカネを給付する政策「ヘリコプターマネー」に対して、インフレが止まらなくなると騒ぐ人々が居ます。それならソブリンマネーを導入すれば良いでしょう。

ソブリンマネーとは、政府(ソブリン)通貨(マネー)のことです。これはとんでも理論などではありません。スイスでは本年、ソブリンマネーの導入の是非を巡って国民投票が行なわれました。残念ながら否決されましたが、国民投票に掛けられるほどの政策なのです。その考え方の起源は世界大恐慌の後にまで遡ることができ、今日の経済学の基礎を築いたフッシャーやフリードマンらが提唱していたほどです。

基本的な内容は簡単です。市中銀行(主に民間銀行)が行なっている通貨発行である「信用創造」を禁止して、政府(基本的には日銀のような中央銀行)だけに、信用創造に基づく通貨発行の権限を限定する、というものです。

早い話が、今は民間銀行が世の中のほぼすべての流通通貨(預金)を発行しているのですが、そうではなく、通貨はあくまでも政府が発行して流通すべきだとする考えです。これがソブリンマネーです。

これによって、民間銀行が恣意的に通貨を発行することを禁止し、民間銀行が通貨を発行することで引き起こされる「資産バブル」を防止し、また信用創造の暴走による通貨供給の過多が引き起こす「ハイパーインフレ」を防ぐことが出来ます。

ところで、多くの人は新聞マスコミの識者に脅されています。つまり通貨を発行して国民におカネを配ると、ハイパーインフレになるという脅かしです。しかし、考えてみればそんな心配はありません。もし仮に世の中のおカネの量が2倍になったら物価は2倍になるかもしれませんが、それ以上に高くなるはずはありません。なぜなら、もし世の中のおカネが2倍になって、物価が10倍になるとすると、おカネが足りなくて、モノが売れなくなってしまいます。すると、市場では物価が下落します。つまり市場原理が働くので、インフレが止まらなくなることは理論的にあり得ないのです。

仮に世の中のおカネの量が2倍になるとすれば、およそ900兆円のおカネを国民に配ることになります。900兆円は1億2000万人の国民1人当たりにして、750万円です。例えば、4人家族の家庭なら3000万円を配ると、物価は2倍になるかも知れません。いきなり3000万円配るなどという、馬鹿げたことをしたとしても、その程度であり、実際にヘリコプターマネーを実施するとすれば、国民1人当たりにして、年間12万円とか、24万円とか、そういうレベルでしょう。ですから「ヘリコプターマネーによるハイパーインフレはまったく心配ない」と考えられるわけです。

それでも、恐らく一部のマスコミ識者がこう言うでしょう「一旦、インフレになると巨石が坂道を転げ落ちるようにインフレが止まらなくなるぞー、タイヘンダー」と。しかし、こういう感情論には理論がありません。巨石が坂道を転げるのは、引力という物理法則であって、経済学とはまるで関連性がありません。

もし、インフレが止まらなくなることを経済理論的に説明できるとすれば、それは「民間銀行による信用創造の暴走」です。なぜなら、政府・日銀の発行した現金の量が、民間銀行の信用創造によって何十倍にも膨れ上がるからです。これがハイパーインフレの原因です。

ですから、ソブリンマネーを導入することで民間銀行の信用暴走を禁止すれば、ハイパーインフレの心配は皆無になると断言できるでしょう。物価が上がるのは、おカネの量が増えるからです。しかし、おカネの増えるペースを遥かに超えて、いつまでも物価が上昇し続けることは、理論的にありえません。民間銀行の信用暴走がなければ、ハイパーインフレはあり得ない。ソブリンマネーを導入しましょう。