2018年8月9日木曜日

自由貿易より大切なのは「ヘリマネ」

トランプ米大統領による保護主義的な貿易政策を受けて、新聞テレビは「自由貿易の危機」であると大騒ぎ。しかし、自由貿易が堅持されたところで、庶民の生活が良くなるわけではありません。大切なのは国民所得です。

新聞テレビは、トランプ米大統領による保護主義的な政策によって景気が押し下げられ、経済成長に悪影響があると盛んに喧伝しています。自由貿易の毀損が国民生活を圧迫するといわんばかりです。しかし、冷静に考えてみると、これまで自由貿易の推進が日本の景気を押し上げた実績はあるのでしょうか。この20年間、少なくとも庶民にそんな実感はありませんね。

バブル崩壊後、日本は自由貿易をどんどん推し進め、生産拠点を海外にドンドン移転して、海外で生産された財が日本に自由に輸入されるようになりました。しかし、国内産業は空洞化し、低賃金のサービス業、派遣業が増加し、ブラック企業が跋扈して労働者の国民所得は減り続ける結果となりました。

もちろん、その間、自由貿易によってグローバルな取引を行なうグローバル企業は大儲けしたのでしょうが、それらの儲けは大企業の株主役員、あるいは一部の社員に分配されただけで、庶民に分配されたわけではありません。つまり、自由貿易によって庶民の生活は何も良くならないどころか、むしろ悪化したと思われるのです。

そうした状況から言えば、新聞テレビが「自由貿易の堅持を!」とワンワン叫んだところで、白々しい響きしかありません。庶民の生活のためではなく、財界やマスコミ自身の権益を守るために、必死になって叫んでいるとしか思われないからです。

とはいえ、長い年月をかけて自由貿易を推進してきた結果、サプライチェーンおよび、おカネの循環は、いまやグローバルに依存した状態になっています。ここで急激な保護主義に舵を切れば、そうしたモノやカネの流れを阻害することで、世界経済を悪化させるリスクは否定できないでしょう。すでに世界は自由貿易にドップリ「依存した体質」なのですから、例えるなら薬物依存と同じように、急に抜くことはむしろ危険です。何十年もかけて変えた体質は、戻すのに何年も必要になります。

ところがトランプ米大統領は、何十年もかけて自由貿易依存になった世界経済を、わずか数ヶ月で元に戻そうとするのですから、世界経済に混乱を引き起こす危険性があります。これは避けるべきでしょう。

しかし、ここで重要な点は、必ずしも「自由貿易がよいから守る必要があるのではない」ということです。そもそも自由貿易が推進されたことで、庶民の生活が良くなって来た実績はありません。庶民の生活にとって自由貿易の恩恵はほとんどありませんでした。ただし、もはや自由貿易依存体質になってしまった社会では、急に自由貿易を抜けば害悪だけが出るリスクがある。

つまり、自由貿易を堅持したところで、庶民にとってはマイナスにならないだけであって、何らプラスの側面は無いわけです。最低ですねw。だから新聞テレビが「自由貿易の堅持を!」といくら叫んだところで、白々しい響きしかありません。

では、こうした保護主義的な動きの中で、国民生活を向上するためには何が必要でしょうか?「内需拡大」でしょう。家計消費が景気にとって重要であることは、しばしばマスコミの記事にも登場します。消費を拡大するとは、すなわち国民生活を向上することに他なりません。そして、消費つまり内需によって景気を押し上げれば、マスコミがさかんに騒ぐ「保護主義による経済成長への悪影響」も軽減されます。

消費の拡大は国民所得を引き上げるだけで可能です。拝金主義の経団連をみれば、賃上げによる国民所得の向上はあまり期待できません。ここは国民の通貨発行権を行使することで、ヘリコプターマネーを実施すればよいでしょう。全国民、1人当たり毎月1万円を給付する(年額12万円一括給付でもよい)わけです。これは政治によって可能です。

自由貿易を堅持したところで、グローバル企業の利益は守られるでしょうが、庶民の生活はちっとも良くなりません。ここは自由貿易に固執するより、むしろ、保護主義の台頭を絶好の機会としてヘリマネを実施し、内需を強化して国民生活を向上する政策に方向転換すべきだと思います。