2011年12月8日木曜日

良いインフレと悪いインフレ

財源はカネの問題なので、不足したなら通貨を発行して配れば良いだけだ。問題は通貨の供給に見合うだけの量の財(商品やサービス)を生み出す事ができるかどうかだ。

財の生産力が十分にあれば、インフレなど何も恐れることはない。その場合、インフレは財の単価が上昇するだけであって、財そのものが不足するわけではないので、通貨の発行と分配によって国民の豊かさは保たれ、社会保障は維持される。これは「良いインフレ」だ。しかし財の生産力が低下してインフレを引き起こすようになったら、日本はおしまいだ。いくらカネがあっても、必要な財が供給できないのだから、国民は貧困化し社会保障は破綻する。これが「悪いインフレ」だ。

日本はデフレなので、もし今、通貨を供給して経済を活性化した場合に生じるのは「良いインフレ」だ。デフレとは生産力が余って、生産の担い手である労働者が大量に失業している状態だ。つまり潜在的な生産力が大量にあるため、財の供給が不足する心配が薄い。今の段階で通貨を供給すれば生産活動が活発化して、生産力が維持される。もしインフレが生じても、この場合のインフレは財の不足を伴わない良いインフレとなる。

ところがデフレを放置すると生産設備が使われず老朽化したり、海外への移転が加速して日本の生産力がガタガタになってしまい、供給力が低下してしまう。すると、カネがあっても財が不足した状態が生じてインフレが発生し、人々に商品やサービスが行き渡らなくなる。財そのものが不足するので、いくら通貨を供給してもインフレが悪化するだけという恐ろしい事態となる。国民を貧困化する悪いインフレだ。

だから日本の財の生産力をいかに維持・拡大するかに腐心すべきなのだ。

残念ながら日本は今、財務省と日銀の政策失敗によって「悪いインフレへの階段」を上り続けている。そして、インフレになってからその事に気づいた時は手遅れだ。生産力が破壊されるのは実に簡単だが、失った生産力を回復するには長い年月と努力が必要なのだ。