2018年8月14日火曜日

復興支援には通貨発行も国債発行も同じ

日本では毎年のように大規模災害が発生し、復興支援のための予算が必要になっています。その財源をどうするか。もし国債を発行するのならば、むしろ通貨を発行すべきでしょう。どちらも実質的にほどんど同じだからです。

災害の復興支援として、財務省の役人ならば直ぐに「増税だ」と騒ぐでしょう。しかし、長期デフレから脱却していない日本経済にとって、増税はますます景気を悪くするだけです。そうではなく、増税をせずに、復興支援のために財政出動を増やすほうが、復興需要の拡大によって長期デフレからインフレへと経済局面をかえるきっかけになるかもしれません。

では、増税せずに災害復興の財源をどのように確保すべきか。これまでの常識から言えば、大抵の政治家やマスコミは「国債を発行すべし」と考えるでしょう。しかし、国債を発行するとなれば、すでに大量に発行されている国債をさらに増やすことになりますから、財務省の役人がまたまた出てきて「国のシャッキンガー」と騒ぐことになります。

ですから、国債を発行するのではなく、通貨を発行して財政出動の財源とするべきだと考えます。

ところが、「国債を発行するのよいが、通貨を発行するとインフレになるから良くない。あくまで国債にすべきだ。」と主張する人もいるでしょう。これは認識としては、完全に間違いです。なぜなら、国債を発行した場合でも、結果的には通貨が発行され、世の中のおカネが増えるからです。

つまり、国債を10兆円発行しても、政府・日銀が通貨を10兆円発行しても、世の中のおカネ(マネーストック)は同じ10兆円増えます。ですから、もしインフレを引き起こす経済状況であれば、国債発行であろうと通貨発行と同様なインフレを引き起こします。

では、こうした「国債はインフレにならない」という誤解を招いている原因は何でしょうか。それはマスコミの垂れ流す「国債は民間が貯めているおカネを再利用する方法だ」という、間違った常識があるからでしょう。ところが実際には、銀行が国債を購入すると、おカネ(預金)が発行されることになるのです。これはバランスシートの仕組みから言って明白です。

ですから、復興財源として国債を発行するのではなく、通貨を発行して財源としたとしても、大きな問題はないのです。むしろ通貨発行によって財源を確保すれば、財務省の役人がしゃしゃり出てきて「国のシャッキンガー」「消費税をどんどん上げろ」などと騒ぐ心配はありません。

では、国債発行と通貨発行はまったく同じなのか?通貨供給という点では同じですが、実際には大きな違いがあります。

国債を発行した場合、例えば10年国債の10兆円であれば10年後に10兆円を返済しなければなりません。返済のためには、10兆円のおカネを税金として世の中から回収しなければなりません。すると、世の中のおカネが10兆円減ることになります。つまり、国債の場合は、世の中のおカネを必ず減らすのです。これは10年後の社会にデフレを招く強烈な原因になります。

一方、通貨発行の場合、例えば10年後に、発行したおカネを世の中から回収する必要はありません。世の中のおカネは減らないのです。とはいえ、もしインフレが酷いのであれば、10年後といわず、いつでも増税等によって世の中のおカネを減らすことが可能です。つまりインフレでなければ、無理に世の中のおカネを減らす必要はありませんし、インフレならおカネを減らせばよい。

と、考えてみれば、国債よりも通貨発行の方が政策として柔軟性が高いと思われますね。ですから、国債ではなく通貨発行によって財源を確保するほうが賢いと思われるのです。

国債によって財源を確保する方法は、もはや時代遅れです。生産性が低く、慢性的にインフレを警戒しなければならなかった、昔の時代の手法だと思います。前世紀の遺物ですね。

いまや生産性が飛躍的に向上し、これからは人工知能やロボットによって、ますます供給力過剰な社会になると考えられます。そうした時代の変化に対応し、これからの財源は国債発行に頼るのではなく、通貨発行によって賄う必要があると思うのです。