2017年7月6日木曜日

ベーシックインカム議論に時間軸を

ベーシックインカムに関するネット上の議論で違和感を覚えるのは、それが「今すぐ完全BIをやったらどうなるか」という話が中心になっていることです。しかし段階的に推進する前提で考えるとまた話は別だと思うのです。

ベーシックインカムに反対する人たちの主張は、例えば人々が働かなくなるとか、労働意欲が低下するとか、あるいはそれに伴って供給力が低下してインフレが生じたり、人手不足から介護等が困難になるとか、そういう話です。

しかし、これらは「今すぐに、ベーシックインカムを完全に、つまり月額10万円以上のおカネを無条件にすべての国民に支給するとどうなるか」という懸念です。確かにベーシックインカムはまったく新しい経済システムなので、いきなり毎月10万円以上でスタートすると社会にそうした混乱を招かないと言い切れないでしょう。しかし、そういう前提がそもそもおかしなはなしです。

未経験の制度は段階的に導入されるのが当然であり、それゆえベーシックインカムに関する議論も、段階的な導入を前提として行われるのが妥当だと思うのです。話が極論(ネガティブ)と極論(ポジティブ)のぶつかり合いなので、まるでピンと来ません。

現実的に考えれば、毎月1万円の支給から開始するとか、高齢者年金や子供手当てのような本来養育されるべき人々への支給から開始するとか、そうして段階的にステップアップするはずです。しかし、そうした話が新聞マスコミにはほとんど無い気がします。ネットの話も極論が多い気がします。

ベーシックインカムを支えるためには、財源(カネ)にあまり意味はありませんが、供給力(モノ)が不可欠です。供給力をささえるテクノロジー、人工知能やロボット、生産設備への投資などは徐々に増大しますから、そうした状況から考えても、ベーシックインカムはあくまでも段階的に導入する前提で、そのステップを検討すること、ロードマップを議論することが不可欠だと思います。

いきなり導入したらどうなるか、という議論では、話がかみ合うはずがないとおもいます。だから議論は「やるか」「やらないか」になってしまいます。人工知能とロボットが高度に進歩を続けている現代において必要な議論は「やるか・やらないか」ではなく、「どうやったらスムーズに導入できるか」だと思います。