2017年10月27日金曜日

安倍首相の賃上げ要請 評価するが効果は?

安倍首相は経済財政諮問会議で企業の3%賃上げを期待したいと述べ、賃上げを要請した。同時に賃金引上げの見返りとして税制上の優遇措置を検討するという。これは評価すべきことだが、効果はあるのか?

首相自らが企業に賃上げ目標を示すのは異例とはいえ、賃金引上げを重視する姿勢は評価に値するでしょう。労働組合に代わって賃上げ交渉をしているわけなので、連合は安倍政権を歓迎すべきだし、左派系の朝日・毎日などの新聞は、安倍首相の賃上げ要請を高く評価すべきではないのだろうか。「企業は安倍首相の要請に応えて3%賃上げを実施せよ」なんていう社説があっても良いくらいです。

では、経済全体にどれほど効果があるかと言えば、あまり期待はできないでしょう。そもそも賃上げが出来るほど儲かっているのは一部の大企業であって、雇用の大部分を担う中小企業はそれほどゆとりがあるとは考えられません。

安倍首相は「生産性の向上と同時に賃上げを」というが、ITやロボットなどを導入しても、それだけでは生産性はあがらない。ざっくり言えば、「生産性=売り上げ利益/コスト」だから、売り上げが増えるか、雇用をカットしなければ生産性は向上しない。もし売り上げが増えなければ、生産性革命は失業を促進する。

まして、2019年には「消費増税」である。その後にはオリンピックも終了するから消費が減り、近い将来に景気後退に突入することは目に見えている。この時期に固定費(=人件費)を増やすのは、不合理極まりない判断だろう。自分が経営者ならこう考える。

「消費増税は目と鼻の先だ。そうすればデフレ逆戻りで利益は減少する。経営の安定化のためには、今から貯めるだけ貯めこんでおくべきだ。しかし設備投資はすすめておこう。そして増税後に景気が悪化したら、非正規雇用の従業員を大量解雇して、生産性を高めて乗り切る。そして、安倍首相の要請に応えて賃上げに先走った企業に対し、コスト面で有利に立ち、シェア拡大を図る。」

というわけだから、企業は今から二年後の増税と景気後退への対応を考えるはずだ。賃上げすれば負け。もし企業に賃上げして欲しいなら、次のことをすれば良い。

①消費増税は中止する
②国民にカネを配って消費を増やす

そうすれば、わざわざ首相が企業に「3%賃上げしろ」と圧力をかけずとも、景気が劇的に良くなり、売り上げ増加と人手不足によって、企業は放って置いても賃上げするようになります。それが自然な「経済の好循環」ですよ。

下ネタで言えば、3%で圧力をかけるのは下剤で便秘を解消するようなものです。飯も食わないで、自然な排便もあったものじゃない。飯をいっぱい食えば、勝手に出るんですw。