2017年7月26日水曜日

加計問題における大衆の心理

加計学園に安倍首相が便宜を図ったかどうかで国会が大騒ぎになっていますが、冷静に状況を判断すれば、結局は空騒ぎに終わると予想できます。しかし、なぜこんな空騒ぎで世論が盛り上がるのでしょうか。

加計学園に首相が便宜を図ったかどうか、この事実関係を確認することは不可能です。言った、言わないの話だからです。推論だけで断罪することはできません。そんなことをすれば世の中は冤罪だらけになってしまいます。ですから首相が交代するかどうかは、最終的に自民党内の権力争いで決まります。

しかし、そう簡単に交代するとは考えられません。FNNの世論調査でも、「今、誰が首相に相応しいか」の問いに、一位は「ふさわしい人がいない」が21.6%で最も多く、石破氏が20.9%、安倍氏が19.7%と、特に決定的な状況が生まれているわけではありません。こうした状況では自民党内で首相の交代を求める声が高まるとは考えられないのです。

ですから、空騒ぎで終わると予想されます。ただし、空騒ぎでも国民は「安倍にお灸を据えてやった」と満足するでしょう。

なぜ、こうした現象が毎度毎度、発生するのでしょうか。これは今回の安倍首相に限りません。福田首相のときも、鳩山首相のときも、国会がつるし上げ大会になり、マスコミが騒ぎ、人々が興奮するのです。左派支持者、右派支持者にかかわらず、3時の奥様向け番組でも大騒ぎなのです。

それは、人々がそれに「快感を覚える」からです。権力者という強い立場の人間をその地位から引き摺り下ろすこと、これに人々は興奮するのです。だから安倍であろうと鳩山であろうと、世間は内心で面白がっているのです。これは人間の「衝動」や「無意識」に近いレベルで生じているので、意識していない人がほとんどでしょう。こうした快感を覚えながら、したり顔で「う~ん、疑惑が・・・」などと言うのです。

また、新聞テレビなどのマスコミで報道される内容は、いつもいつも「政治家が悪いことをした」という内容ばかりです。そのため人々の潜在意識には「政治家=悪いやつ」という観念が完全に刷り込まれています。そのため「政治家がよいことをした」という事実より「政治家が悪いことをした」という事実の方が、刷り込まれた常識にマッチするため「やっぱりそうか」と、共感を覚えるのです。こうした、自分の潜在意識にある常識と一致する現象を人々は好む傾向があります。

また、争いごとは人々を興奮させます。ローマ時代から、大規模な見世物として利用されています。それが国会で行われています。怒声罵声の飛び交う国会に興奮する。まさに劇場ですね。

こうしたことから、国会で政治家・権力者がつるし上げになると右派左派無党派に関わらず、人々は興奮しやすくなります。

そうした大衆の心理に付け込むのが「新聞テレビなどのマスコミ」なのです。大衆扇動の考えから言えば、興奮状態にある人々は、操作しやすいのです。いわゆるポピュリズムの図式がそこにあります。こうして新聞マスコミによって大衆は操作され、政治が動かされてゆくわけです。

悪い政治家が交代するのは問題ありません。しかし、悪いかどうかわからない政治家が、大衆心理をたくみに利用する新聞マスコミなどの操作によって交代させられる可能性があることを、人々はあらかじめ理解しておく必要があると思うのです。