2017年2月15日水曜日

「平等に貧しくなろう」の時代錯誤に驚く

あるご高齢の学者が「日本はもう人口が増えないのだから平等に貧しくなろう」と中日新聞の紙面に書き、ネットで騒ぎになっています。それなりの学者ですら、こんな程度の認識なのです。これでは日本が本当に貧しくなってしまう。

こうした高齢者は人工知能やロボットの現状と未来を知らないのでしょう。おそらく自分は先が短いからと思って未来に何の興味もない。だから「20年後に日本の約半分(6500万人)の仕事が機械に代替可能になる」という野村総研の研究レポートも、「AIに47%の仕事が奪われる」という米国政府のレポートも見たことがないはずです。もし見ていれば「平等に貧しくなろう」と考えることが、どれほど愚かであるか誰でも気付くはずだからです。

誰か学者先生に教えてあげたほうが良い。

とはいえ、厚生労働省も新聞マスコミも似たようなものです。彼らの大好きなフレーズは「1人の高齢者を何人の現役世代で支ええるか」です。発想がまるでこの学者と同じ。つまり彼らは生産活動を「人力に頼っている」わけw。人力車の時代に生きています。

1人の現役世代が人力車で運べる高齢者の人数はせいぜい2人です(逆に言えば2人で高齢者1人を支える)。ところが文明が進化すると1人の現役世代が「バス」というものを使います。こいつは1人の現役世代で40人くらいの高齢者を運べるわけです(逆に言えば40人で高齢者1人を支える)。さすがに高齢者でもバスはご存知でしょう。同じことです。1人の現役世代がロボットを使えば10人くらいの高齢者をらくらく養えるかも知れません。

高齢者を養うのは人力ではない。テクノロジーです。

高齢化による日本における生産年齢人口の減少は今後20年でおよそ600万人と推計されていますが、野村総研や米政府の推計が正しければ、20年後に機械に代替可能な労働者は最大で3000万人(労働者の約半分)*にもなります。つまり、生産年齢人口の減少の5倍の速度で機械化が進む可能性がある。人間が居なくとも機械が自動的に生産(サービス含む)してしまうのです。

機械が使い切れないほど富を自動生産する時代になるのに、どうすれば人々は貧しくなれるのか。意図的に貧しくならない限り、貧しくなることは困難を極めるでしょう。それとも「意図的に貧しくなることを望んでいる」のでしょうか?

しかし問題は、厚生労働省と御用学者、新聞マスコミそして大部分の高齢者の認識が未だに「人力車の時代」から一歩も先に進んでいないという驚愕すべき事実が明らかになったことです。人力車の時代を前提にして社会政策を論じられたのでは、たまったものではありません。これでは本当に日本全体が衰退して貧しい国になってしまう恐れがあります。

厚生労働省、御用学者、新聞マスコミ、高齢者の「人力車思考」を変えるべく、言論活動、ネット活動に励みましょう。

*修正しました