2016年9月9日金曜日

労働がすべての付加価値を生んでいるのではない

労働することによって付加価値が生まれる、と多くの人は考えています。確かにそれは間違いではありませんが、実際にはあなたの労働だけではなく、同時に、あなたの利用しているパソコンや工作機械のような「資本装備」が価値を生み出しています。また道路や電気ガスなど、あるいは学校教育などインフラが価値の創出に大きな効果を持っています。つまり、あなたの労働の付加価値の大部分はあなた(=就労者)の労働が生み出しているわけではないのです。

そんなバカな、オレが働かなければ機械は動かず、何も生産されない。だからすべての付加価値はオレが生み出したものだ。と思うかも知れません。しかし、もし人工知能や自動生産機械が普及するようになると、あなたの仕事は、そうした機械の起動ボタンを押すだけになるかも知れないのです。起動ボタンを押すだけで、付加価値がどんどん生み出されてきます。それでも、あなたの「ボタンを押す」という労働がすべての付加価値を生み出したといえるでしょうか。

もちろん、それは極端な話です。しかし、機械をまったく使わない状態のときと比較すると、実は機械(資本装備)が付加価値の大部分を生み出していることに気が付くはずです。

つまり、機械が生み出した付加価値を、あなたが独占しているのです(実際にその利益の大部分は企業が吸い取りますが)。確かにそれは既得権であって、問題ないと思われるかも知れません。しかし、あなたの仕事が自動生産機械の起動ボタンを押すだけだったとしても、そうでしょうか?

もっと問題なのは、あなたの起動ボタンを押す仕事すら、自動化されてしまったら、あなたには何の仕事も残りません。仕事が無くても、既得権として、機械が生み出した付加価値をあなたが独占することは可能でしょうか?

このような矛盾が、科学技術の爆発的に進化する現代社会において、社会構造のゆがみをもたらし、格差や貧困を生み出す背景となっている可能性も否定しきれないと思うのです。その問題を解決する方法が、ベーシックインカムと呼ぶべき、基礎的な通貨循環システムだと考えます。