2017年4月25日火曜日

自由貿易・移民政策は薬にも毒にもなる

新聞マスコミは盲目的に自由貿易・移民政策の擁護に余念が無い。まるで宗教のような印象すら与えます。しかしそれが薬にも毒にもなることを理解しないため、世界の分断をますます助長することになると思います。

経済における諸政策を観察すると、その多くは薬にも毒にもなることがわかります。つまり、政策を実施するときの経済状況(インフレ・デフレ等)や、同時に実施される政策の組み合わせ(金融・財政・税制等)、あるいは政策の実施順番によって、あるいは合成の誤謬の影響により、同じ政策であっても、効果的であったり、逆に問題を引き起こす場合が見られます。

つまり、一言で言えば、政策の効果は「ケースバイケース」です。常に正しい、という魔法のような政策はないと考えるべきです。政策の組み合わせ、タイミング、実施順位が重要であり、それによっては、今すべきではない政策も当然ながらあると考えるのが自然だと思います。

ところが、こと自由貿易・移民政策になると、新聞マスコミの態度は「絶対善」「魔法の政策」になります。どんな問題が発生しても自由貿易・移民政策は絶対善であり、避けられないと称して、何としても自由貿易・移民政策に固執する状況が見て取れます。

まるで宗教運動を見ているようです。

なぜ新聞マスコミが、政策の柔軟性を欠く過激主義的な態度を示すのか理解に苦しみます。結局のところ、何か宗教じみた動機をその中に見出さざるを得ないのです。

自由貿易の理論から言ってもまったく合理性が無いのは、「自由貿易・移民政策」と「緊縮財政」を同時に組み合わせる政策ミックスです。そもそも自由貿易・移民政策の経済的合理性は、貿易圏内における労働生産性の向上、それによる財の総生産量の最大化にあります。そして増加した財を貿易を通じて貿易圏内で分配することで、すべての国民が利益を得ます。これはリカードの考え方です。

ところが、緊縮財政を組み合わせるとどうなるか?

自由貿易で労働生産性は上昇するものの、カネが回らないため、貿易圏内において財の総生産量と総分配量が上昇しません。これでは自由貿易の総利益は増えないのです。総利益が増えず、利益の分配先だけが資本家サイドに偏ることになる。本当に馬鹿げています。自由貿易・移民政策と同時に行うべきは、通貨の供給であり、ヘリマネによって国民の購買力を向上させ、生産性の向上による財の生産拡大を各国の国民に行き渡らせることなのです。それをしない自由貿易はナンセンスです。

新聞マスコミには、こうした基本的な認識すらないのです。そんな記事を見たことがありません。ただ盲目的に騒ぐだけ。まさにポピュリズム(愚衆)の先頭を走っているのが新聞マスコミです。

政策に絶対善などあり得ません。常に客観的に経済状況を観察し、タイミング、組み合わせ、実施順位を冷静に見極めなければ、社会はますます混乱するだけだと思います。