2018年7月12日木曜日

財政再建に通貨収縮以外の意味はない

財政再建には特段の意味でもあるかのようにマスコミでは報じられますが、財政再建によって生じる現象を客観的に観察するなら、財政再建に通貨収縮以外の意味はありません。

世俗的・通念的に言えば、財政再建は何やら道徳的な意味合い、借りたカネを返すとか借金財政からの脱却といった意味が付与されるようです。しかしマクロ経済的すなわち科学的に言えば、財政再建によって生じる現象は、世の中の通貨量(マネーストック)あるいは通貨供給(マネーサプライ)の縮小です。それ以外のことは直接に生じません。つまり、マクロ的に言えば、そうしたマスコミが騒ぐような世俗的・通念的な特段の意味は意味を持ちません。

そのようなマクロ経済の観点からニュースの見出しを見直せば、つまり、「財政再建を通貨収縮と読み替える」なら、例えば「財政再建の必要性」とは「通貨収縮(通貨供給の抑制)の必要性」と言っていることになります。「財政再建目標の達成」とは「通貨収縮(通貨供給の抑制)目標の達成」を意味します。そう理解すれば、途端に、マスコミの見出しから受ける印象が変わってきます。「何かへんだな」と感じるはずです。

マクロ経済的に考えると、マスコミの言うほど財政再建に特段のすばらしい意味が無いことは誰にでもすぐに理解できます。なにしろ財政再建とは「世の中のおカネを減らせ、おかねを増やすな」と言っているだけのことなのです。それだけのことです。財政再建という、世の中のおカネを減らす政策にどれほどの意味があるのか?

もちろん、仮に現在の経済がインフレ年率10%を超えるような状態にあるのなら、財政再建は世の中のおカネを減らすことでインフレを抑制する点において意味がある政策と言えるしょう。すなわちインフレ時における財政再建は効果的と言えます。しかし現状はどうでしょう?デフレ状態にあります。つまり「使われるおカネが足りない状態」にあるわけです。こんなデフレのときに財政再建によって世の中のおカネを減らすど、まったくのナンセンスに過ぎないのです。これはマクロ経済的つまり科学的に言えば当たりまえのことです。

財政再建の意味を世俗的・通念的な道徳心によって理解することは誤解と弊害にしかなりません。科学的に言えば、財政再建は通貨収縮政策にすぎません。「財政再建を通貨収縮と読み替える」ことで、世俗的なマスコミ報道のミクロ脳思考を超えて、経済を科学的・客観的に理解する必要があると思うのです。

もし財政再建を科学的・客観的な立場からではなく、世俗的・通念的な道徳観などに基づいて「借金は返すべき」などと主張するなら、まさに非科学的な、それこそ中世の「天動説」を信じているようなものです。その弊害は説明するまでもないでしょう。

残念ながら、新聞マスコミは世俗的・通念的な常識にどっぷり浸かっているままであり、科学性や客観性は欠落したままですが。