2018年4月28日土曜日

社会主義失敗の原因は市場の否定

社会主義(ソビエト等)の失敗の原因は「市場原理の否定と排除」を行なったことであり、ベーシックインカムの推進が社会主義と同じ失敗を招くことはありません。

ベーシックインカムを社会主義的な政策であると考え、ゆえに、ベーシックインカム政策を推進すると社会主義と同じように経済が失敗すると考えている人がいるようです。しかし社会主義国(共産主義国)の経済が失敗した根本的な原因は「市場原理の否定と排除」にあります。

マルクスは当時の資本主義社会における労働者の悲惨な境遇を目の当たりにして、その原因が市場経済にあると考えたわけです。実際、何の対策も施さずに市場経済を放置すると、労働者は搾取され、貧富の格差が拡大することはあまりに明白です。つい最近でも中国を見ればそれは明らかでしょう。

そこでマルクスの影響を強く受けた共産主義国家では、諸悪の根源と考えた市場原理を否定し、市場原理を排除した経済を構築しました。計画経済です。しかし市場メカニズムを排除したことにより、資源の最適配分が機能しなくなりました。資源の利用効率が低下し、研究開発も生産も非効率化して、結果として資本主義経済の先進国に大きく遅れを取ることになったわけです。

資源の利用効率が低いにもかかわらず、それに加えてソビエトでは軍事産業が毎年のように巨大化して資源の多くを奪っていましたから、なおさら人々の生活を圧迫する結果となり、ソビエトは経済的に破綻してしまいました。

一方、今でも自らを社会主義国だと主張している中国は、実際には強烈な資本主義国であって、市場原理に基づいて経済が動いています。社会主義を主張したところで、市場原理を用いなければ、資源の配分を最適化することは難しいと考えられます。

とはいえ、中国における貧富の格差、労働搾取の実態は、むき出しの市場原理が社会に歪みをもたらすことも証明しています。ですから、市場原理を採用しつつも、それによって発生する社会の歪みを是正する政策が同時に必要となります。そのため多くの資本主義先進国では、市場原理に加えて再分配政策を併用することで社会の不安定化を防いでいるわけです。

ただし、再分配政策は市場原理の機能を損なう傾向もあるため、そのバランスに苦慮することになります。そうした中で、ベーシックインカム政策は市場原理の機能を大きく損なうことなく、市場原理がもたらす社会の歪みを解消する方法として注目されています。

一方、社会主義の失敗を「人々が働かなくなったから」と思っている人も多いような気がします。昔から新聞マスコミでは社会主義国における人々の労働モラルの低さを何度も何度も繰り返し報道してきましたから。そうした側面がないとは言えないでしょう。しかし仮に社会主義国において労働者のモチベーションが高い状況(ミクロ)であったとしても、資源の配分が適切でなければ(マクロ)、経済は停滞することになります。

また、社会主義国におけるモチベーションの低さは、「働いても働かなくても給料が同じ」ためであると何度も報道されてきましたから、そうだと思い込んでいる人も多いと思います。しかし、ソビエトでは生産が非効率的であると同時に、軍事産業へ資源を吸い取られた結果、「働いても働かなくても、生活が一向に良くならないどころか、ますます貧しくなる」という状況にあったと考えられます。これでは働かなくなるでしょう。

もし仮に、労働の結果として毎年のように生活が向上するのであれば、多少ズルしてサボっている奴が同じ給料を貰っているのを目撃したとしても、それで「働くのや~めた」となるとは思えません。年功序列時代の日本みたいなものです。

この場合でも、ベーシックインカムは「働かなくても所得は得られるが、働けばより多くの所得を得られる」わけですから、そもそも「働いても働かなくても給料が同じ」ではありません。

ベーシックインカムを社会主義的な政策であると誤解し、なおかつ、社会主義の失敗の原因も十分に理解しないまま「ベーシックインカムを実施すると社会主義と同じ失敗になる」と懸念することは、意味のないことです。