2010年8月22日日曜日

(7)おカネを使えば使うほど収入が増える

おカネは使えば使うほど収入、つまりお給料が増えていく仕組みになっています。ところが多くの人がこの仕組みを理解していません。それは無理もないことです。なぜなら一般の人や企業にとってのおカネの性質と、国の経済にとってのおカネの性質が全く異なるからです。

例えるなら、一般人や企業にとっておカネは直線的であり、収入として得たおカネは支出として出てゆくだけです。一方、国家の経済(マクロ経済)において、おカネは環状であり、生産者と消費者の間をぐるぐる回っています。収入として入ってきたお金は支出として出てゆきますが、それは次の収入の原資になるのです。ですから、支出が増えれば収入が必ず増えます。このことを常に意識しなければ経済問題を理解することはできません。

一般の人にとって「おカネを使えば使うほど手元のおカネが減る」のが常識ですが、マクロ経済からみれば「おカネを使えば使うほど通貨循環量が増大して手元のおカネが増える」のが常識です。つまり、家計と国家ではまったく正反対の常識を持っています。家計と同じ仕組みで国家経済を考えることは無意味です。まず経済を理解するには、このことをしっかりと認識し、違いも理解しなければ始まらないのです。この仕組みを間違えると、同じ前提でも結論は正反対になります。

わかりにくいでしょうから、もう少し具体的に考えてみます。

経済全体を単純化して考えてみましょう。多くの企業で従業員が働いて商品が生産されます。従業員には労働報酬として企業から給与がおカネで渡されます。従業員はそのおカネで企業から商品を買います。するとおカネは企業へ戻ります。そのおカネを元に再び工場で商品が生産されます。これを延々と繰り返しています。おカネは企業と従業員の間をぐるぐる回り、そのおカネの循環(通貨循環)に乗って商品が企業から従業員へ渡り、従業員からは労働力が企業へ渡っています。まるでおカネはベルトコンベアのようです。このおカネの循環の量が大きければ大きいほど景気が拡大し、人々は豊かになります。

もし、従業員がより多くの商品を買ったとしたら、つまりたくさんおカネを使ったら、そのぶんだけ企業へ戻るおカネの量が増えることになります。すると企業はたくさん売れた分だけ生産量を増やして、その対価として従業員の給料を増やします。ですから、従業員が商品を買えば買うほど給料が増えるのです。もちろんこれはモデルですから単純にそうなりませんが、大枠では必ずその方向へ動きます。

このようにして、おカネをたくさん使えば使うほど人々の収入が増えるのです。では、逆の場合はどうなってしまうのでしょうか。

もし、従業員がもらったおカネを使わず貯蓄してしまったら、そのぶんだけ企業へ戻るおカネの量が減ることになります。すると企業はおカネが減った分だけ生産量を減らして、その対価として従業員の給料を減らします。ですから、従業員が貯蓄を増やせば増やすほど、従業員のお給料が減るのです。もちろんこれはモデルですから単純にそうなりませんが、大枠では必ずその方向へ動きます。

ゆえに、経済を活性化する、つまり人々の給料を増やし、様々な商品やサービスを生産して人々に供給するためには、貯蓄を減らし、消費を増やさねばならないのです。消費を増やせば増やすほどお給料が増えて、人々は豊かになれます。これは個人の収支レベルで考えると変に聞こえるかもしれませんが、国家レベルの大きな視点から考えれば当たり前のことです。ですから今の日本が不況から脱出するためには、貯蓄をやめ、消費を増やさねばならないのです。

すなわち、日本人の伝統的な価値観であり、美徳でもある「無駄をなくす」「倹約する」「貯蓄する」では経済を立て直すことができません。貯蓄をやめ、消費を増やさねばならないのです。とはいえ、こんな不安定で不況の社会において、貯蓄をやめ、消費を増やすなど私たちにとっては自殺行為です。では、どうすれば良いのでしょう。解決策は無いのでしょうか。