2010年8月15日日曜日

(6)永久に借金の無くならない社会

財政赤字がマスコミで騒がれていますが、今の日本で財政が黒字になると経済はどうなるのでしょう?世の中のおカネが不足して、ますます不況になります。なぜなら世の中のおカネはほとんどが借金から出来ているからです。財政赤字の問題はここを理解できなければ永遠の迷宮に入り込んでしまうのです。

前回と同じ話になってしまいますが、世の中のおカネのほとんどは民間銀行が帳簿上で作り出して人々に貸し与えているおカネから出来ています。この仕組みが「信用創造」と呼ばれます。この信用創造で作りだされた借金が世の中にどんどん循環して経済を支えています。誰かの借りた借金が世の中にぐるぐる回っているのです。あなたの預金通帳の中のお金も、もともとは誰かの借りた借金がめぐりめぐってそこにあるのです。世の中のおカネは9割が借金からできています。

そこから生じる問題はいくつも考えられますが、その一つは、借金を返済する際に利息を上乗せしなければならないということです。借りたおカネより返すおカネが常に多いわけです。じゃあ増えたおカネはどこから来るのか?世の中に出回っているおカネのほとんどは借金から出来ていますから、借金を返済するときの利息も元々は誰かの借金から来ているわけです。つまり、誰かが借金をしないと利息の支払いができなくなってしまいます。その借金にも利息の支払いが付いてくる。つまり、利息を払うためには、永久に借金を増やし続けなければならないことになります。もし、景気が悪くなって人々がおカネを借りなくなってしまったら、世の中のおカネは借金の返済と利息の支払いでどんどん減り続け、おカネ不足で経済は破綻し、払えるはずの無い「借金の利息」だけが膨大に残されます。なぜ世の中から借金がなくならないのか?それは上記のように、現在の銀行制度が借金を未来永劫どんどん拡大しなければ成り立たない仕組みになっているからなのです。日本は永久に借金の無くならない社会なのです。借金が永久に増え続ける仕組みなのです。

なぜ国債がなくならないか?その理由もそこにあります。経済が右肩上がりで成長した時代にあっては、国が国債(国の借金)を発行しなくとも民間が借金をどんどんしてくれますから、世の中のおカネは増え続け、利息の返済も可能です。ところが不況で民間が借金を減らそうとしている今の日本では、もし国債の発行をやめたら、世の中からおカネがどんどん無くなり、経済は破綻し、借金の山だけが残されるのです。確かに今の財政は無駄遣いが多いことも事実でしょう。無駄遣いを止めれば国債の発行額は減らせるでしょう。しかしこの問題がある限り、国債の発行を減らすにも限界があるのです。もし財政が黒字化したら?借金の利息の支払いはすべて民間に降りかかることになるでしょう。

おカネなら個人の金融資産が1500兆円もあるではないか。確かにそうです。しかし、その1500兆円も、もともとは「無から生み出されたおカネ」を元にしているため、借金をする人より返す人が多いなら徐々に減少を続けるでしょう。誰かが借金を増やさなければ金融資産は減る運命にあります。今は日本政府が国債を発行して借金をどんどん増やしているため、そのおカネが個人の資産に流れ込み、逆に個人の金融資産が増えたりしますが、国債の発行を止めれば金融資産も徐々に消えて無くなるのです。

つまり現在の金融制度では、銀行が架空に作り出した「預金」が世の中のおカネの9割を占めているため、おカネは消えてなくなる宿命にあるのです。そして、おカネが消えて無くなるとデフレを引き起こすのです。現在の金融制度では、この致命的な欠陥を補うために、国債を発行し、おカネが消えて無くならないように借金として作り出したおカネを世の中に流通させる必要があるのです。ですから余程の好景気で民間が借金を拡大し続けない限り、国債がゼロになることはあり得ないでしょう。

では、消えてなくなるお金で経済を支える必要があるのでしょうか?預金という架空のおカネに依存する必要があるのでしょうか?そんな必要はどこにもありません。消えて無くならないお金、つまり「現金」で経済を支えれば良いのです。現金とは日本銀行券であり、紙幣のことです。つまり、銀行が帳簿操作でおカネ(預金)を作り出す割合を減らし、そのぶんだけ国がおカネ(現金)を作り出せばよいのです。人々の経済活動に必要なおカネを国がきちんと準備するのです。

不況が引き起こす信用の収縮で減少するおカネを補うために国債を発行するという、今の政府のやりかたは不健全です。不足するおカネを現金(日本銀行券の発行)で補うべきなのです。国債は利息の支払いを将来の世代に残す問題がありますが、日本銀行券の発行にはそのような心配はありません。むしろ通貨の循環量を増やして将来の経済に明るい展望を開くでしょう。仮にインフレになっても、そのつけは現代の世代が払うことになり、国債のように将来の世代に負担を残すことにはなりません。しかもインフレターゲットを設定して、その範囲内で量をコントロールしながら、国による通貨供給を行うことにより、インフレを抑えることは容易です。インフレをコントロールする手段は非常に豊富にあるのです。そのように、インフレターゲットを設定して、その範囲内で量をコントロールしながら、国による直接の通貨供給を行うことにより、消えてなくなってしまうお金に依存しない、安定した経済を目指すべきです。

借金から生まれるおカネに依存する経済は永久に右肩上がりの経済成長が前提で成り立つシステムです。将来に向けてサスティナブル(持続可能)な経済を実現するためには、金融システムの大胆な改革が避けられないのです。