2019年3月15日金曜日

「銀行ごっこ」やればおカネがわかる

おカネについて本がいろいろ出ているようですが、おそらく、どれを読んでもおカネの仕組みは理解できないと思います。おかねの仕組みを理解したいなら「銀行ごっこ」をやればいいと思います。

つまり、勉強会なんかを開いて、参加者に「銀行の役」を演じてもらうわけです。銀行役の人が、会社役の人に、実際におカネを貸し出してもらうわけです。そうすると、銀行が信用創造でおカネを貸し出すしくみが誰にでもよくわかると思うのです。

例えば、Aさんが銀行役になり、まず資本金100万円で銀行を起業します(金額等は、あくまで遊びです)。この資本金100万円は銀行の金庫に保管されています。

Aさんが会社役のBさんに80万円を貸します。ここで、Aさんが銀行の金庫から80万円をBさんに貸すと思うでしょうが、そうではありません。それをやるのは、銀行ではなく、貸金業になります。それ普通の貸し借りであって、銀行の行なう信用創造による貸出ではありません。

銀行は現金を貸しません。預金を貸すのです。これが信用創造です。このときに重要なのが「預金通帳」です。銀行は貸出としてBさんの預金通帳に「80万円」と記帳します。そして、80万円の貸借契約をBさんとと結びます。

現金は減ることなく、そのまま銀行の金庫に100万円あります。

次に、Aさんが会社役のCさんに50万円を貸します。同様に、Cさんの預金通帳に50万円と記帳し、貸借契約を結びます。

さらに、会社役のDさんに100万円を貸します。同様にDさんの預金通帳に100万円と記帳します。

これで、銀行のAさんは、B・C・Dさんに合計で230万円の預金を貸し出しました。銀行の金庫にはそのまま100万円があります。これが信用創造によるおカネの貸し出しです。銀行の資本金は100万円しかありませんが、230万円を貸し出しました。

この段階で、多くの人は怪訝な顔をするはずです。一般の人が信じ込んでいる銀行とは違うからです。多くの人は、銀行が金庫にあるおカネを貸すものだと誤解しています。大変な間違いです。銀行は預金を作り出して、貸し出すのです。だから「信用創造」なのです。創造するのです。

こうして230万円の預金がポンと作り出されましたが、取引は問題なく行なわれます。例えば、BさんがCさんから事務用品5万円を買うとすると、Bさんの預金通帳から5万円を引き、代わりにCさんの預金通帳に5万円を加算すれば決済完了です。

つまり、取引に現金を使う必要はないのです。
銀行が作り出した預金のみで取引が行われます。

じゃあ、銀行の現金は何のためにあるのか?一つは、現金を手渡しして取引したい場合があるためです。そのため、一時的に現金が銀行の金庫から引き出される場合があるのです。

例えば、Bさんが事務用品を現金の手渡しでCさんから買う場合、BさんがA銀行から5万円を引き出し、Cさんに手渡しで支払います。その後、Cさんが5万円をA銀行に預金します。これで、A銀行の現金は一時的に引き出されましたが、元に戻ります。100万円のままです。

もう一つは、銀行の貸出総額を制限するためです。というのも、信用創造の原理だけで言えば、すでに見てきたように、銀行は無限に預金を作り出して貸すことができます。そんなことをしたらどうなるか?世の中がカネだらけになって「ハイパーインフレ」になるかもしれません。

だから、銀行の貸出を制限する、つまり、信用創造を制限する必要があります。そのため、銀行の貸出額に応じて、一定の割合(準備率)の現金を、日本銀行に強制的に預金しなければならない仕組みになっています。これが準備預金制度ですが、これはややこしいので、今回は説明しません。

というわけで、おかねのしくみを理解するには、実際に「銀行の役」をやって、おカネを貸してもらうシミュレーションを行うのが、最もわかりやすいかも知れませんね。