2018年10月15日月曜日

NHKマネーワールドは牛肉抜きの牛丼

NHKマネーワールド「借金に潰される」は期待はずれでしたね。マネーに詳しい人の大部分は恐らく不満足だと思います。なぜなら、マネーシステムについての説明がすっぽり抜け落ちているからです。

今日のマネーシステムの根幹は「信用創造による通貨供給」です。ですから、マネーについて考えるときは、まず信用創造を基礎として、考察を始めなければなりません。ところが、番組は市中銀行の信用創造を完全にすっ飛ばして、話を進めているのです。これではマネーに関する国民のリテラシーはいつまで経っても向上しません。子供だまし番組はやめましょう。

NHKはマネーシステムについて、詳しく説明した番組を作るべきでしょう。

今日のマネーシステムである準備預金制度はややこしいシステムですから、説明しても十分に理解できない人は多いかもしれません。しかし、だからといって報道しない、あるいは原型を留めないほど簡略化して説明したのでは、国民のレベルは上がりません。一般国民に「自分はまるでわかっていない」ことを自覚させることもまた、重要なのです。

また、複式簿記の考えもすっぽり抜け落ちています。バランスシートです。バランスシートもマネーシステムそして資本主義の根幹に当たります。それが抜け落ちているため、金融負債の話が出てくるくせに、金融資産の話が出てきません。つまり、金融負債と金融資産は対になって発生あるいは消滅する仕組みになっており、それをベースに考察をすすめなければ意味がないのです。負債だけ、あるいは資産だけみても意味がない。両者を同時に見なければならない、それが資本主義の常識です。

ついでに言えば、「おカネが消える」の回もあいまいでしたね。大部分の国民は「おカネ=現金=紙幣・硬貨」という認識をしています。日常の経験に基づいて判断するからです。しかし実際の現金は日銀当座預金も含まれ、日銀の信用通貨全般のことを指します。しかし、その説明がすっぽり抜けているので、キャッシュレス(紙幣・硬貨を使わない)のことを、おカネが消えると称しているのです。これでは、国民に誤解を植えつけるようなものです。

つまり、マネーワールドという番組は、マネーのもっとも重要なシステムの部分をまったくすっ飛ばしているので、この番組を見ても、マネーのことは何もわからないのです。視聴者を「わかったような気分にさせる」だけです。

まるで、牛肉抜きの牛丼を食べさせるようなものです。

NHKはマネーシステムについて、詳しく説明した番組を作るべきでしょう。

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