2017年6月5日月曜日

「貯蓄は社会に損害を与える」との認識が必要

生産不足(インフレ)の時代から消費不足(デフレ)の時代へと時代は大きく変化しました。それに伴い、これまでの価値観は大きく見直されるべきでしょう。その一つが貯蓄です。「貯蓄は社会に損害を与える」との認識を持つ必要があります。

戦後の生産不足の時代においては、市中銀行の信用創造が加熱すると、たちまち世の中のおカネが増えて消費が増加し、物不足からインフレを引き起こしてきました。ですからインフレを抑えるためには消費を抑える必要があります。

ですからインフレの時代において「貯蓄は美徳」でした。国民がどんどん貯蓄すればおカネが消費に向けられませんから、インフレを低く抑えることができるわけです。その一方、信用創造で作られたおカネは消費よりも投資へと向かい、日本の生産力をいちはやく向上させることができたわけです。

ところが、日本の生産力が次第に大きくなり、さらには自由貿易で途上国からも商品が供給されるようになった今日、供給力が過剰になり、相対的に消費が不足するようになりました。そうなると商品が売れ残り、商品価格が下落するデフレが生じるようになります。それが企業の収益を悪化させ、従業員の解雇、賃金引下げを引き起こします。

デフレの時代において「貯蓄は悪癖」です。国民が貯蓄すればするほど消費が減り、ますますデフレが悪化してしまうからです。そしてどれほど生産性が向上しても、貯め込まれたおカネが死蔵されたままなのですから、おカネが世の中をまわらず、デフレスパイラルへと落ちてゆきます。貯蓄が経済をダメにしてしまうのです。

貯蓄は社会に損害を与える。
「過剰な貯蓄は罪である」との常識が必要です。

時代が変われば常識が変わる。絶対王政の時代は王による統治が常識でしたが、そんな常識は時代の変わった現代では通用しません。同様に、時代が変われば貯蓄に対する人々の常識も大きく変えていかねばなりません。もちろんある程度の貯蓄が社会にとって有益であることは確かです。ベーシックインカムのようなセイフティーネットがない、今日の原始的な社会にあっては、貯蓄は人々の生活をリスクから守る有効な手段です。とはいえ、限度があります。

「貯蓄は社会に損害を与える」のですから、これを政策的に抑制する必要が生じるのは当然でしょう。それが「金融資産課税」あるいは「マイナス金利」です。おカネがおカネを生み出す。おカネを貯め込めば貯め込むほど得をする、そんな都合の良い時代は終わったのです。これからの時代は、おカネを貯め込むことで社会に与える損害を補填してもらう必要があると思うのです。