2013年6月2日日曜日

企業の租税回避 通貨発行益で対抗

Q:アメリカ議会でアップル社がアメリカに税金を払ってないと叩かれてるにゃ、何のことにゃ?

A:そうじゃな、アップル社に限らずグローバル企業や投資家はタックスヘイブンと呼ばれる、法人税の非常に低い国に幽霊会社を作って、そこで利益を出すように操作して税金を逃れとるんじゃ。たとえばアップル社の場合は、アイルランドに子会社を作り、その会社が全世界のアップル製品の販売をしたことにする。全世界のアップル製品の売り上げがアイルランドの子会社に集中して計上されるので、全世界での利益もその子会社にすべて計上されるわけじゃ。その子会社はアイルランドにあるので、利益にはほとんど課税されない。そういう仕組みじゃ。

Q:ずるいにゃー、真面目に税金を納めているのは一般市民だけにゃ。取り締まるにゃ。

A:ところがそうはいかんのじゃ。租税回避しとる企業や資産家は、違法行為をしておるわけではない。ある意味、法律の盲点をついとるのじゃ。じゃから取り締まることはできん。たとえ一円も税金を払わなくても、法律に反していなければどうすることもできんのじゃ。それに、いくら法律を強化したところで抜け道は必ずあるものじゃ。イタチゴッコじゃよ。おまけにあまりにも法律を強化しすぎると、最終的には企業そのものが国外へ逃げてしまうとも限らん。日本の法人登記を抹消してしまえば、税金など永遠に取れなくなるじゃろ。

Q:くやしいにゃ。何とかならないのかにゃ。

A:ほっほっ、税金を取ろうとするから苦心惨憺するのじゃ。税金を取らなければよい。

Q:はえ?

<徴税をやめて通貨発行益を財源とする>

A:税金を徴収するのは財政運営のための「財源」を確保するためじゃ。税金に頼らずとも財源を確保できれば良いのじゃ。つまり税金を徴収するのはやめて、かわりに政府がおカネを刷って財源とすれば良いのじゃ。これは「通貨発行益」と呼ばれるものじゃ。

Q:税金をぜんぶやめて、かわりにおカネを刷って財源にするの?

A:そのとおりじゃ。法人税も所得税も消費税も相続税もぜんぶやめるのじゃ。そのかわり、カネを刷って財源にする。これはいわゆる「インフレ税」というやつじゃ。カネを刷ると一般にインフレになるから、企業も個人も物価上昇の形で事実上「納税」することになる。こうすれば脱税は不可能なのじゃ。しかも、貯蓄を多く持っていればいるほどインフレによる資産の目減りは大きくなる、つまり大資産家ほど多くの「インフレ税」を負担する形になるから、実に公平な税制なのじゃ。

Q:でもインフレが怖いにゃ~

A:いたずらに心配する必要などないじゃろう。どの程度の物価上昇を伴うかは、需要と供給によって市場が決めることじゃ。じゃから、単純にインフレが激しくなるとは言えないのじゃ。たとえば、財源としておカネを刷れば、それはやがて消費に回るから需要が増える。その需要の増加を十分に賄うだけ供給能力が増加すれば、インフレを引き起こすことはない。発行したカネがすべて実体経済の通貨循環に吸収されてしまうからじゃ。つまり理想的に言えば、潜在的な経済成長の能力に合わせてカネを刷り続ければインフレは起きないじゃろ。もちろん、民間銀行の信用創造が生み出す通貨の影響は無視できんがな。

それに、日本人はおカネを貯めるのが好きらしいから、おカネを刷ってもかなりの額が消費ではなく貯金に回されてしまうじゃろう。貯金されてしまえば、需要は増えんから、インフレも生じにくいのじゃ。

Q:でもおカネをどんどん刷り続けるのはいいのかにゃ?打ち出の小づちにゃ。

A:思い込みにとらわれてはいかん。原点を考えるのじゃ。そもそも全世界の主流であるインフレターゲット政策とは何じゃ?実際にやっていることはアベノミクスを見てもわかるように、打ち出の小づちで「おカネを刷る」ことじゃ。全世界を見ても、毎年毎年、膨大なカネが刷られておる。ただ、現在の通貨制度では、この刷ったカネはすべて民間銀行の手に渡り、民間銀行が企業や個人に貸し付ける原資となるのじゃ。そして民間銀行に企業や個人が借金することで世の中におカネが流れ出す。これが現代の銀行制度じゃ。

だから「おカネを刷る」という意味では同じことなのじゃよ。ただし、刷ったおカネを民間銀行に渡すのではなく、政府が財源として直接に使って世の中におカネを回すのじゃ。しかも民間銀行が貸し付けする「借金」ではないので、返済する必要がないおカネじゃ。いわゆる「信用収縮」の恐れはない。

Q:う~、むずかしすぎるのにゃ。つまり、アベノミクスでもおカネを刷ってるんだから、それを、民間銀行へ渡すのではなく、政府が使えばいいだろって話かにゃ。

A:そういうことじゃ。実際のところそれに近い方法論がある。それが「日銀による新規発行国債の買い取り」じゃ。一方、アベノミクスでやっておるのは「日銀による発行済み国債の買い取り」じゃ。何が違うのかと言えば、何も違わん。どちらも日銀がおカネを刷って国債を買い取っておるのじゃ。違うのは、日銀の刷ったおカネを「政府に渡すか、民間銀行に渡すか」の違いだけじゃ。政府に渡せば公共投資になり、民間銀行に渡せば貸し付け原資になる。にもかかわらず、政府から買えば財政ファイナンスだと非難され、銀行から買えば絶賛される。実にバカバカしいのう。

「財政ファイナンスが~~」という頭の固い連中が多いので、なら政府通貨を発行して、これを財源とすればよいのじゃ。一時期、オバマが1兆ドルコインを発行するとか言っておったが、あれじゃ。政府通貨を発行して、その発行益を財源とすれば良いのじゃ。

<税の仕組みを根底から変える>

Q:へ~、税金のかからない国家にゃ。といっても、インフレ税はかかるにゃ。でも面白いにゃ。

A:考えてみると実に面白いのじゃ。税金を集める必要がなくなるから、世の中は激変するじゃろ。まず税務署がぜんぶ不要になる。これだけで膨大な経費削減になる。しかも財務官僚も減らせるし、財務官僚が「税」という権力を利用して得ていた既得権もすべてなくなる。脱税という犯罪がそもそもなくなり、節税対策とかいう無意味な事をする必要もない。税理士もいらない。そもそも各企業において、税制という複雑怪奇な制度の運用に費やされていた労働をすべてなくすることができるのじゃ。その労働力を生産活動に回した方がよほど良い。

Q:でも、おカネをどんどん刷ったら円安になるにゃ。輸入品のインフレが酷くなるにゃ。

A:確かに円安になるじゃろ。すると輸入品のコストが上がってインフレが進むこともあり得る。じゃが円安は輸出産業のコスト競争力を高める結果となり、国内経済が活性化するのじゃ。輸出が増えれば、稼いだ外貨を円に買い戻す必要量が増えるから、その分だけ円買いも増え、値を戻す。それに、輸出産業が潤えば、そのおカネがめぐりめぐって、やがて他の国民の所得も増やし、インフレの影響は相殺されるじゃろう。アベノミクスをみれば一目瞭然じゃな。

Q:面白いにゃ面白いにゃ。他にどんな事になるにゃ。

A:そうじゃな、これは単なる推測じゃが、表面上は法人や個人の税率がゼロになるから、日本が「タックスヘイブン」になるかもしれん。すると海外から膨大な数の「幽霊会社」が進出してくる。これらの会社から税を取ることはできんが、雇用を増やしてくれるかもしれないのじゃ。そして、もしかすると幽霊会社ではなく、本当に日本で財(商品やサービス)の生産を行う会社が来るかもしれない。もしそうならすごい効果じゃ。

Q:どうしてにゃ。

A:通貨発行益を財源とする以上はインフレは避けられない。じゃが、どの程度のインフレになるかは、その通貨圏における供給能力と密接な関係があるはずじゃ。すなわち、経済が成長し、供給能力が高まるほどインフレになりにくいはずじゃ。日本にどんどん企業がやってきて、日本の供給能力が高まるほど、インフレになりにくくなるはずじゃ。そうすると、それまで以上に通貨を発行しても大丈夫、という事になる。つまり、企業や個人から無理に税を取らなくても、通貨発行益として財源を増やすことが可能と言う事じゃ。もちろん、推測の域を出ないが、考えてみるには面白いテーマじゃ。

Q:面白いにゃ面白いにゃ。ぜひやるにゃ。消費税を上げるとか上げないとか、そんなミミッチイ話をしている場合じゃないにゃ。税という考えを大変革するのにゃ。

A:でも100%不可能じゃよ。なぜなら既得権益を崩壊させるほどのインパクトがあるからじゃ。まず「税務署を全部廃止する」などという考えは、役人の手で確実に潰される。通貨発行権を独占してきた銀行からも猛反対を食らうだろう。こんなことを言い出す政治家は暗殺されても不思議ではない。既得権益とは社会の支配構造そのものじゃ。

Q:やっぱり絶望的なのにゃ。何も変わらないのにゃ。

A:じゃが僅かな希望は、まがりなりにも政治体制が「民主主義」であるということじゃ。多くの国民が問題意識を持ち、マスコミの垂れ流す情報を信じることなく、自らさまざまに考えるようになれば、やがて世の中を変える事ができるかもしれん。夢のような話じゃが、今はそれを信じるしかないじゃろう。