2013年3月17日日曜日

TPPは国家弱体化への道

TPPで国家が繁栄するといます。確かに「カネ」という守銭奴的価値観によれば繁栄するかに見えるかも知れません。しかし、それが真の意味で国家の繁栄と言えるか、つまり、「カネ」に走ることが国家の繁栄なのか、問われるべきと思うのです。

<効率化は弱体化と表裏一体>

グローバリズムは国際分業という考え方に基づくのでしょう。それは世界全体としての生産性を高めるかも知れません。しかし、それは同時に世界が相互依存性を高める事であり、逆に言えば、国家としての経済的な独立性を失う過程でもあるのです。

たとえば、食料はアメリカとオーストラリアが生産し、自動車は日本が生産し、石油はサウジアラビアが生産するというような分業になったとしましょう。すると生産効率が高まり、商品単価が低下し、余剰生産力を新たな産業へ振り向ける可能性も生まれます。確かにこれだけ見れば良いことのように思われるかも知れません。

しかし、このときすでに、自国は他国に依存することなしに生きられない。
経済的な独立性を完全に失うのです。
これは極めて危険です。

<事件が起これば一気に連鎖崩壊する>

このような時、たとえばアメリカの穀倉地帯が異常気象で壊滅したらどうなるか?その影響は全世界を襲います。高度に分業化されているため、逃げることはできません。アメリカがダメになったら、世界は終わり。それが分業体制の極めて大きなリスクなのです。

一方、現在の日本のように貿易依存度が低く、自前主義で経済的な独立性が高ければ、確かに生産効率は落ちるかも知れません。しかしアメリカの食糧が全滅しても日本は生き残れる。日本の農業の効率化はTPPと無関係に推進されるべき事でしょう。しかし、それはあくまでも「カネ」のためではありません。リスクへの対処のためなのです。

<グローバリズム(効率化)は人類滅亡へのプロローグ>

今から遥か6500万年前、地上で大繁栄していた恐竜は絶滅しました。なぜでしょう?恐竜の繁栄の背景には無駄を徹底して排除し、環境へ適応した生物の姿がありました。環境が安定していれば、効率化=特殊化は生物の生存にとって有利であり、繁栄をもたらします。ただし、あまりにもその環境に適応して特殊化が進んでしまうと、環境が変化しても、もはやその変化を受け入れるだけの柔軟性は失われてしまいます。隕石衝突のような環境の変化があれば、あえなく絶滅します。

そして生き残ったのは、原始的な哺乳類。
原始的とは、まだ特殊化が進んでいない状態です。
つまり、非効率的ですが、何にでも対応できる柔軟性を持っています。

TPPをはじめ、グローバル化は世界の国々を分業化し特殊化を進めます。
それにより生産効率は高まり、カネは儲かるかもしれません。
しかし、国家としての柔軟性を失い、巨大なリスクを抱える事になるのです。