2011年8月21日日曜日

増税工作のために円高対策を放置する政府


現在(2011.8.21)、円は一時戦後最高値を付け、日本経済への懸念が高まっている。しかし政府は未だに「為替介入」「金融緩和」を検討するだけで、円通貨の大量発行という根本的な方法を避けている。そこには、日本経済より増税を最優先に考える財務官僚の下心が見え透いている。

円高対策は通貨の増量しかない

円高対策の根本は通貨の増量しか方法が無い。リーマンショック以降、米ドルが150兆円分も増えたのだから、相対的に円高になるのは当然。大量に流れ出したドルは円を買う圧力となる。それでなくとも日本円の需要が高いのに、日本円の供給を増やさないとなれば、市場で値上がりするのは市場原理そのものだ。米ドルが150兆円分も増えたのに、たかだか4~5兆円の為替介入など焼け石に水です。むしろ介入は投機筋を喜ばせ、絶好のマネーゲームの機会を与えるだけです。政府はもちろん百も承知だろう。では、なぜ通貨を増量しないか?

なぜ通貨を増量しないか?
通貨を増やすと増税に支障が出るからだ


どのようなメカニズムで、通貨を増やすと増税に支障を与えるのか?量的緩和の効果が限定的なのはすでに証明済みなので、たとえば同じ通貨供給でも、市場に直接おカネを投入する「東北地方への復興国債の日銀引受」という方法を取るとします。たとえば30兆円ほど引き受けて復興へ投入すると、GDPが30兆円増加し(成長率6%)、消費税だけでも1.5兆円の税増収となる。しかもこれが呼び水となって民間の震災復興が本格化すれば、税収は一気に増えて財政が好転する。「このままでは財政は悪化して財政破綻する」とさんざん危機を煽っていた財務省は、増税のタイミングを失う。政府=財務省=民主党の最も恐れるシナリオが「増税前の景気回復」なのだ。

仮に経済が実質的に成長しなくとも、循環通貨の量を増やせば名目成長により税収が確実に増加するのは周知のこと。これが財務省にとっては最大の懸念。だから必死に「円高は投機が原因だ」とか「アメリカや欧州の経済が原因だ」とか言ってごまかしている。やるだけ無駄な介入にも言及する。円の希少性には絶対に触れたくない。何としても通貨の増量を防ぎ、名目経済成長を止めたい。すべて増税のためだ。日本経済などどうなってもかまわないのだ。これでも日本の政府なのか?

おかしな政策はいらない
円高対策とデフレ対策だけで十分


円高で産業空洞化だというと、すぐに出てくるのが「法人税率の軽減」「労働規制の撤廃」「TPPへの対応」「産業育成政策」などだ。しかしこれらはすべて円安になれば不用になる。円安で日本製品の価格競争力が高まるからだ。複雑な事はする必要が無い。それは官僚の仕事を増やし、官僚を喜ばせるだけ。シンプル・イズ・ベスト。いますべき事は円高対策とデフレ対策そして復興。これだけです。これらの分野で確実に成果を出せば、政府が余計な事をしなくとも日本経済は自然に復活するのです。

円安になれば日本製品の競争力が強化されて輸出が伸びますし、輸入品の価格が上昇して内需産業も輸入品に対抗できる。インフレになれば死蔵されていた貯蓄が再び動き出して消費や投資にまわります。すると需要が増えて生産が拡大し労働者の所得が向上して失業が減少する。それにより国民の購買力が高まる事で新しい産業が成長する下地ができる。そうすれば、何も政府があれこれ関与する必要はないのです。政府は経済環境を整えるだけで良い。

日銀は復興国債を30兆円引き受けよ

残念ながらデフレが酷すぎて買いオペは効果が期待できない。となれば金融緩和の手段は「日銀の国債引受」しかない。もはや猶予ありません。増税工作のために通貨供給を渋る財務省と日銀を許せば、日本は終わってしまいます。