2011年6月10日金曜日

貯蓄が減る?では減ったおカネはどこへ

日本の貯蓄率が低下し続けています。そのため、将来において国債を買い支えるための貯蓄が無くなり、国債価格が暴落して金利が上昇すると騒いでいます。ところで、家計の貯蓄が減少するとすれば、その分のおカネはどこへ行くのでしょうか?

誰も何も書きませんが、貯蓄が減った分だけ、そのおカネがどこかへ行くはずでしょう。それとも、消えてしまうのでしょうか。企業へ流れるのでしょうか。企業に流れたとしても、民間の貯蓄は減りますが企業の貯蓄が増加しますので、貯蓄の総量は減りませんよね。銀行へ流れる。銀行の貯蓄が増えるので、貯蓄の総量は減りませんよね。海外へ流れる?貿易黒字の国の通貨が海外へ流出するとは普通考えられませんよね。アメリカは貿易赤字なのでドル垂れ流しですが日本は真逆です。もし海外へ流れても、海外の円貯蓄が増えるので、円としての貯蓄総額は減りません。残る経済主体は日本国政府だけですが、もとより負債しかありません。では、貯蓄率が低下して減ったおカネはどこへ行くのでしょうか?誰も何も書きません。書くと嘘がばれるからです。

では、本当に円通貨圏の全体の貯蓄が減る心配はないのでしょうか?実は減る心配があります。それは、貯蓄の減った分だけおカネがどこかへ行ってしまうからなのではなく、おカネそのものが消滅するからです。


現在おカネとして流通している「預金」は債権です。債権とは誰かがおカネを借りて、その借りた人が返済するという約束(信用)が価値として認められ、流通しているものです。預金とはだれかが借金することで生まれたおカネなのです(ちなみに預金と貯蓄の違いがわからない人は、預金制度の基礎を知る必要があります)。ということは、誰かが返済するとおカネは消えます。それでも世の中のおカネがすべて消えて無くならないのは、返済される借金が毎日大量にある一方で、新たに借りられる借金も大量にあるからです。おカネは常に生まれたり消えたりしているのです。ところが、借りる人より返す人が多くなると、世の中の預金はどんどん減少し続けます。

つまり、貯蓄が無くなるのは、貯蓄率が低下するために起こるのではなく、デフレ不況でおカネを借りる人がどんどん減っているのが原因なのです。 マスコミはこの事に決して触れませんので、専門家を除いてこれを理解している人は世の中にほとんど居ませんです。

そうは言っても、不況で借金をする人が減っているにもかかわらず日本の預金総額そのものは大きく減少していません。なぜでしょうか?誰かが借金することで預金が生まれているなら、いったい誰が借金をしているのでしょうか?それは日本国政府です。

デフレ不況でおカネを借りる人が激減し、本来であれば世の中のおカネが消えてしまうのですが、日本国政府が国債を発行することで、世の中のおカネの総量を維持してきたのです。ですから、国債の発行を減少させると預金総額が減少し、社会に循環する通貨が激減し、貯蓄そのものも急速に減少します。つまり、今の貯蓄は国債によって支えられているのです。マスコミはこのことを一切書きません。 貯蓄が減って国債を買えなくなるなど笑止であり、実際には国債が貯蓄を支えているのです。

余談ですが、麻生太郎はそのこともよく理解していたと思われます。「不況で誰も借金をしないから政府が借金をして経済を支えているのだ」という趣旨の発言をしています。さらに、借金として生まれる「預金」に依存する現代経済システムが限界に来ている事を知っていたらしく、政府通貨の発行を検討していました。政府通貨とは「消えることの無いおカネ」です。しかし、そのことが麻生政権の命取りとなりました。歴史上、政府通貨を検討した政権は必ず潰される。ケネディなど暗殺されたほどです。実際に政府通貨を発行して南北戦争に勝利したリンカーンも暗殺されています。案の定、麻生政権は社会の支配階層であるマスコミから総攻撃を受けて崩壊することになりました。

麻生は愚にも付かない失言を除けば、近年まれに見る優秀な政治家でしたので、実に残念ですが、これが民主主義の実態です。