2011年5月8日日曜日

5)財源と経済成長を同時に実現(修正

復興にかかる財源は通貨発行または資産課税により確保することが最適で、消費税や所得税などを財源とするのは不適当です。なぜなら、消費税のようにフローへ課税することは国民の富を奪う一方で、日本にある生産余力をまったく活用しない方法だからです。

通貨量と生産量の関係

財源をおカネという視点だけから考えると、迷宮入りする危険性があります。日本には莫大な生産余力があります。それがデフレギャップと呼ばれるものです。デフレギャップが無いという人も居ますが、これは単純に考えてもおかしな話です。なぜなら失業率が非常に高く、労働力という最高の資本が余っているからです。失業者とは生産余力そのものであり、それはデフレギャップなのです。デフレギャップが無いという人は、本質を間違えていると思います。

活用されていない労働力、生産設備などを100%活用することが復興の財源になるはずです。しかし、現在財務省などが推し進めようとしている消費税や所得税の場合は、これらの生産余力を無視して、現在ある生産力を裂いて復興財源とするものです。これでは国民は貧しくなり、余っている労働力も活かされないのです。それを図で考えてみました。この図は、経済を生産量と通貨量を使ってモデル化したものです(ちなみに素人考えなので、この図を引用・転写されても責任は持てません)。



この図は、おカネと財(商品やサービス)の関係を示したもので、おカネの価値の裏打ちとして、財の生産があるということから、通貨と生産を対比して示したものです。財が生産されて初めておカネは価値を持ちますから、おカネの価値の裏側には常に生産があります。循環通貨量(売買に使用されるおカネの総額)は、実生産量(売買された財の総額)と同じです。つまり国民は通貨を使って財を購入するのですから、支払われたおカネの総額と実際に生産されて国民が受け取った財の総額は同じになります。財とは実態のある商品やサービスのことで、これが本当の意味で「富」と言えます。国民が受け取る富の量は、循環する通貨の量によって決まります。循環する通貨の量が増えるということは、国民の富が増えることを意味します。循環通貨はGDPと同じ額です。

一方、貯蓄は生産活動に影響を与えず、単に貯めこまれているだけです。貯蓄が増えようが減ろうが、国民の受け取る富の量には何ら影響を与えません。貯蓄とは「そこにおカネがある」というだけです(もちろん、貯蓄が投資として活発に循環していれば別ですが)。しかも貯蓄には裏づけとなる財の生産がありません。つまり貯蓄の価値は将来の生産力を担保としているのです。将来世代への負担です。その意味で、経済にとって貯蓄とは借金に近いものです。

一方、生産力は余っています。この生産余力が稼動すると生み出される財の量が増えますので、国民の受け取る富の量も増える事になるのですが、市場経済においては、財が売買されるためにはそれに見合うだけの通貨が必要となるため、循環通貨の量が増えない限り、生産余力が活かされることはありません。生産余力に見合うだけの通貨が不足しています。

消費税では生産余力を活かせない


次に、消費税や所得税を増税し、それを財源とした場合を考えます。消費税や所得税は循環通貨に課税されますので、国民所得が減ります。所得が減りますので、国民が受け取る富も減少します。そして減少した富の部分を財源として利用することになります。つまり国民生活に必要な富を生み出す生産を減らして、その生産を財源として振り替えている事になります。国全体としての生産量は不変なので、生産余力はそのままです。しかしすぐに気づきますが、なぜ、使われずに余っている生産力を利用しないのでしょうか?なぜ生産余力を使わず、わざわざ実生産を裂いて財源にしなければならないのでしょうか。不思議です。では、生産余力を活かす方法を考えてみます。

生産余力を財源とする方法

①通貨の発行益を利用する方法


増税のかわりに生産余力に見合うだけの通貨を発行して財源とします。するとそれに応じて生産が増加し、GDPが成長します。この増加する生産量が財源の裏打ちとなるのです。もちろん、これは経済がインフレ環境下のような、生産余力の無い状況ではできません。しかし現在の日本では物価下落が止まらず、高い失業率を示しており、デフレは解消されていません。つまり生産余力がまだまだ大きいのです。ですから、不足している分の通貨を発行し、生産余力を活用することができるはずです。これによりGDPは成長し、失業は減り、デフレも解消し、税収も増加して財政再建へも近づくことが可能なはずなのです。

この場合は政府通貨または特別な復興国債を日銀が引き受けることで可能となります。ところが、どちらも日銀が猛反対しています。政府通貨は現在も発行されています。それは「硬貨」です。硬貨は日銀とは別に政府が独自に供給している通貨です。ですから、それを増額するだけでこれは可能なのです。しかし日銀は猛反対しています。彼らの権益を侵すからです。通貨発行権とは国家を左右するほどに絶大な権力なので、これを独占する日銀は絶対に反対するのです。しかし通貨の発行権は主権であり、国民の侵してはならない権利です。

②貯蓄に課税する方法


消費税や所得税、法人税等と異なり、貯蓄への課税は循環通貨を奪うものではありません。それどころか循環通貨を増やす働きがあります。貯蓄に課税しても国民所得は減少しませんので、国民への富の配分が減ることはありません。そして貯蓄への課税で得た通貨を公共事業や給付金などに使用することで循環通貨が増加します。その増加した通貨に見合うだけGDPが成長し、それが財源となるのです。つまり資産への課税はGDPを増加させ、経済を成長させて国民を豊かにし、消費税や法人税などの税収が増加して財政再建も実現へ向けて近づくことになると思われます。

ただし、通貨の発行も貯蓄への課税も、それを財源として投資する対象を間違えると効果が損なわれてしまうのではないかという心配があります。たとえば失われた10年の間に国が借金して使われた600兆円もの公共投資は、経済を活性化することなく、高額所得者の金融資産と大企業の剰余金に化けてしまったからです。

そして、資産への課税は、これら600兆円の国の借金を資産として貯めこんだ人々から、それを返していただく事に他なりません。通貨が負債として供給されている現在の金融制度においては、やむを得ないと思います。