2019年11月16日土曜日

所得倍増は簡単にできる

所得倍増とは、私たち家計の収入(多くの場合は賃金)が2倍に増えることです。ところで今のデフレの時代は、所得が増えるどころか、ジリジリと減り続けています。しかし所得が減るようになったのは1990年代のバブル崩壊以後であり、それ以前は日本人の所得は増え続けていたわけです。高度成長期の1960年には、当時の池田内閣が所得倍増計画をぶち上げ、それを実現したわけです。

 では、もはや日本で所得が倍増することは二度とないのでしょうか?そもそも、どうすれば所得が2倍になるのでしょうか?高度成長期のようにモーレツに働けば所得が2倍に増えるのでしょうか?多くの良識的といわれる識者は、したり顔で「所得を倍増するなんて不可能だ」と、考える前から諦めているに違いないでしょう。こんな無気力な連中に未来の日本を任せるわけにはいきませんね。どうすれば所得を2倍にできるか、考えてみましょう。実は、所得を2倍にするための基本的な考え方は簡単なのです。まず、そこからスタートしなければなりません。

所得倍増の条件とは?

①世の中のおカネの量を2倍に増やすこと

きわめて当然なのですが、所得が2倍になるためには、世の中のおカネの量を2倍しならなければなりません。なぜなら、世の中のおカネはわたしたち消費者(家計)と生産者(企業)の間をぐるぐる回っており、その回っているおカネの量が、所得の額を決めているからです。ぐるぐる回るおカネは、賃金(所得)として消費者に流れ、消費者がそのおカネで企業からモノやサービスを買うことで、売り上げとして企業に戻ります。ですから、このぐるぐるまわる「循環するおカネの量」が2倍に増えることが、所得倍増の必要条件であり、そのためには、世の中のおカネの量が2倍に増えなければなりません。そうしなければ、いくら頑張っても所得は絶対に2倍になりません。

とはいえ、単純に世の中のおカネを2倍に増やせば所得が2倍になるとは限りません。なぜなら、世の中には「動かないで貯め込まれてしまうおカネ」というものがあります。ですから、次のような条件も必要となります。

②増やしたおカネを誰かが死蔵しないこと

 世の中のおカネをどれほど増やしても、それを誰かが大量に貯めこんでしまうと、「循環するおカネの量」は増えません。この貯め込まれるおカネとは、家計の貯蓄、企業の剰余金、政府の埋蔵金に該当します。消費者の所得を増やすために政府がおカネをいくら発行しても、それを誰かが貯めこんでしまえばキリがありませんね。ですから、場合によっては、こうして貯め込んだままのおカネに課税して、世の中に再循環させる必要性も出てくるはずです。これが所得を倍増させるための十分条件となります。つまり①世の中のおカネの量を2倍に増やし②それを確実に循環させること、これができれは、間違いなく所得は2倍になります。基本はおそろしく簡単で、当たり前の話なのです。マスコミの良識的な識者は決して言いませんがw。

そして、世の中のおカネの量を増やしたり、おカネを再循環させることはそれほど難しいことではありません。なぜなら、それは単なるルールであり、そのような仕組みを法律で決めて行政で実行すれば良いだけだからです。例えば、政府(日銀を含む)には通貨を発行する権限を国民から委託されています。その権限に基づいておカネを発行することは可能です。あるいは、徴税権に基づき、貯めこまれて死蔵されているおカネを徴収して、給付金などとして世の中に再循環させればよいのです。これらはルールの問題に過ぎません。つまり所得倍増は、本気になれば、とても簡単に実現できることがわかります。

③実質所得の向上には供給力が欠かせない

 とはいえ、ただ単に所得を2倍にしただけでは、必ずしも国民の豊かさが2倍になるとは限りません。なぜなら、インフレの問題があるからです。つまり、名目上の所得(手取り額)を2倍にすることができても、実質的な所得(得られる財)を2倍にできるとは限らない。そこで、実質的な所得を2倍にするには、モノやサービスの供給力を2倍にする必要があるわけです。

 所得を2倍にすることは、単にルールを実行するだけで実現できます。しかし、供給力を2倍にすることは簡単ではありません。供給力を増やすためには、生産設備を増強したり、設備の生産性を向上させたり、資源の調達を増やしたり、新しい技術を研究開発する必要があります。これは単にルールを決めただけで実現できるものではありません。さまざまな分野に投資が必要です。従って、所得を倍増することは比較的簡単にできるのですが、実質的な生活向上につなげることは一筋縄ではいかないわけです。ですから、やたらに名目所得だけ増やせばよい、というわけではありません。

しかし、今の新聞マスコミに出てくる識者や政治家は、名目所得を上げること「すら」しようと考えないのです。こんなことでは、初めから所得など増えるはずがありません。なぜ世の中のおカネを増やして国民の所得を増やそうとしないのか?所得だけ増えても、供給力が増えないから意味がない、と考えているからでしょうか?いえいえ、そんな頭の良い識者も政治家もほとんどいません。何もわかっていないのです。民間企業で営業や経営の仕事をしたことがないから、わからないのでしょう。

 というのも、名目上の所得が増加することは、それだけでも経済活動にとって十分に意味があるからです。なぜなら、経済活動は実質値ではなく「名目値で動く」からです。一番身近な例では賃金があります。例えば、賃金の支給額が上がらなくても物価がデフレだと実質賃金は増えます。しかし、人々は実質賃金が増えても、「賃金が増えた」とは感じません。あくまで給与明細にある名目賃金の増加が人々に影響を与えるのです。そして名目の所得が増えれば、財布の紐を緩め、消費が増える可能性が出てくるわけです。

企業の場合もそうです。企業は「売り上げを何パーセント伸ばすか」、という目標を立てます。これも名目上の売り上げが論点となります。デフレだから売り上げ金額が伸びなくても、実質売り上げが増えたから良し、なんて話はありません。名目上の売り上げが伸びるからこそ企業は設備投資するのです。利益率もそうです。投資家が投資するのは、名目上の利益率で判断するわけです。左様に、世の中は実質ではなく、名目上の金額を元にして動きます。だからこそ、名目上の所得が増えることにも、十分な意味があるのです。

 しかし、新聞マスコミは、そんなことすら考えません。さらに酷いのになると「賃金が伸びないのは日本の労働者の生産性が低いからだ」などと真顔で話す識者まで出てくる始末です。呆れるばかりです。実際には、賃金向上にとって労働者の生産性などほとんど無関係であり、世の中のおカネの量を増やし、貯めこまれているおカネを再循環させるだけで賃金はどんどん増えるのです。なぜなら、おカネはぐるぐると世の中を循環するからです。この件に関しては与党・野党を問わず、政治家の大部分も似たような認識レベルであり、まったく期待のできる政治家はいません。

 新聞マスコミも政治家も官僚も馬鹿なのですから、せめて国民だけでも賢くなって欲しいと思うのです。

(サイトに同時掲載)