2017年12月28日木曜日

金融財政一体化と国債の廃止

今日の社会では金融政策と財政政策は別のモノだと考えられています。しかしそれは通貨制度に原因があるのであり、100%マネーの通貨制度を採用すれば、金融と財政の政策は一体化します。そして国債を廃止し、借金財政に終止符を打つことができます。

(じいちゃん)
「新聞やテレビでは、金融緩和政策の効果に対する疑問や、膨張する国債の問題がさかんに取り上げられておる。そうした課題を一気に解決できる可能性を秘めた方法論があるのじゃが、それが金融政策と財政政策の一体化じゃ。」

(ねこ)
「ふにゃ、金融政策と財政政策を一緒にしてしまうのかにゃ。」

(じいちゃん)
「左様じゃ、金融政策と財政政策を一つの政策に統合する。といっても話は簡単じゃ。そもそも金融政策と財政政策が分離しておるのは現在の通貨制度に原因があるからであり、100%マネーという通貨改革を行えば金融政策と財政政策は自動的に一体化するのじゃよ。」

(ねこ)
「う~ん、ちっとも話が簡単じゃないにゃ、どういうことなのかにゃ。」

(じいちゃん)
「通貨制度とは世の中におカネ(マネーストック)を供給するしくみじゃ。現在の通貨制度は準備預金制度と呼ばれる制度じゃ。このサイトで何度か説明しておるが、この制度において世の中におカネを供給する場合、それはすべて「民間銀行からの貸し出し」として行われる。貸し出しの際に「銀行預金」が新規に発行されることで世の中のおカネを増やしてきたんじゃ。つまり世の中のおカネが増えることは、銀行からの借金が増えることを意味する。

一方、100%マネーという通貨制度は、民間銀行の信用創造を禁止することで、貸し出しにおける「銀行預金」の発行を停止する。あくまでも銀行が預かっているおカネだけを貸す。では新たなおカネは誰が供給するかと言えば、政府(日銀)が供給するのじゃ。今までの通貨発行は民間銀行が行ってきたが、100%マネー制度になると日銀あるいは政府がおカネを発行するんじゃ。しかし冷静に考えてみると、それは当たり前の話じゃろう。」

(ねこ)
「確かにそうにゃ。日銀あるいは政府がおカネを発行して世の中に流通させるのは当然なのにゃ。でも、それと金融・財政政策の統合と何が関係するのかにゃ。」

(じいちゃん)
「仮に日銀がおカネを発行したとしても、日銀がそのおカネを世の中に流通させる手段はない。まさか日銀がおカネを撒いて歩くわけにはいかんじゃろう。おカネを世の中に流通させる手段を持つのは政府じゃ。政府は財政支出として公共投資を行ったり、社会保障を行ったりする。このとき世の中におカネが流れ出すのじゃ。つまり日銀が発行したおカネは、財政支出を通じて世の中に供給されるのじゃ。

ところで、金融政策とは世の中のおカネの量を増やしたり減らしたり調整することじゃ。一方、日銀や政府がおカネを発行して財政支出をしたり、逆に税金としておカネを徴収したりすると、世の中のおカネの量が増えたり減ったりする。つまり両者は事実上同じことをしておるのじゃ。従って金融政策=財政政策になるというわけじゃよ。」

(ねこ)
「なるほど、財政政策と課税の組み合わせで世の中のおカネを増やしたり減らしたりすれば、それは金融政策と同じことになるんだにゃ。だから100%マネー制度になれば、金融政策と財政政策は同じ意味になるのにゃ。それだと、金融政策はいらないという話じゃないのかにゃ。」

(じいちゃん)
「ほっほっほ、そうではない。財政政策でおカネを増やすにしても闇雲におカネを増やすわけにはいかん。金融政策的な考えも必要なんじゃ。

金融財政一体政策における金融政策の側面は「どれだけの通貨供給を行うのが適切なのか」という量を管理することなんじゃ。この供給量によってインフレ率が管理されることになる。もしインフレ率が高いようなら、財政支出の量を減らしたり、徴税によって世の中のおカネの量をコントロールしなければならん。適切な通貨供給量の判断が金融政策であり、これは日銀が引き続き関与すれば良いじゃろう。

一方、財政政策の側面としては「発行されたおカネをどれだけ効果的に支出するか」という質の管理をすることになるんじゃ。財政支出と言ってもその方法は給付金や社会保障として支給すること、あるいは研究開発やインフラへ投資することなど多岐に渡る。現在の日本においてどの分野に財政支出を行うことが最も有効かを検討しなければならない。それはこれまで通り国会において決めれば良いと思うのじゃ。」

(ねこ)
「金融政策や財政政策が不要になるのではなく、あくまでもそれらが一つの政策に統合されて、総合的に推進されるんだにゃ。どっちかが不要になるわけじゃないにゃ。」

(じいちゃん)
「そうなのじゃよ。こうすれば今日騒がれている「金融政策優先か、財政政策優先か」という迷いはなくなる。スッキリするんじゃ。インターネット上で一部のリフレ派やケインズ派が「金融政策優先か、財政政策優先か」で対立しておるが、そうした対立は無意味になる。検討すべきは「どれくらいおカネを供給するのか、それを何に使うのか」という判断なんじゃ。

もちろん、財政支出は通貨供給量の範囲だけに収める必要はない。より充実した社会保障や社会資本が求められるのであれば、それに応じて国民や法人に必要最低限の課税を行い、先ほどの通貨供給量に加えて政府予算を検討すれば良いのじゃよ。

いずれにしろ、これまでは歳入をすべて税金によって賄う必要があったために歳入が厳しくなり、消費税増税や国債の発行を余儀なくされてきたんじゃ。もし通貨供給(=通貨発行)を歳入として利用できれば、国民の負担である税金や国債発行を軽減することが可能になるのじゃよ。」

(ねこ)
「すごいにゃ~、100%マネー改革による金融・財政政策の一本化を是非やるべきなのにゃ。でも、通貨を発行して財政支出をすると「財政ファイナンスがー」「ハイパーインフレがー」って大騒ぎする人がいるにゃ。

(じいちゃん)
「財政ファイナンスもハイパーインフレも、どっちもインフレを心配しておるのじゃ。しかし以前にも説明したように、国債を発行して財源を確保しても、通貨を発行して財源を確保しても、同じ金額の財政支出をすれば世の中のおカネ(マネーストック)は同じ金額だけ増える。どちらも同じだけインフレを引き起こす点では違いはない。だから国債の代わりに通貨を発行して財政支出しても問題ない。

ただし、現代の通貨制度のばあいは民間銀行の貸し出し(信用創造)によって世の中のおカネが膨張するから、これが過剰なインフレリスクになるのじゃ。100%マネー制度になれば民間銀行はおカネを発行できなくなるから、必然的にインフレリスクは低下する。」

(ねこ)
「うにゃ、わかったのにゃ。ところで年間にどれくらいのおカネを供給すればいいのかにゃ。」

(じいちゃん)
「金融・財政を一体化した時に毎年どれくらいの通貨を供給するか。例えばバブル崩壊前、「デフレ日本」になる前の水準である年率7%~10%で考えてみてはどうじゃろう。それまではそれが当たり前の水準だったからじゃ。とはいえ、いきなり年率7%も供給するのは不安なので、まずは5%から開始すると良いと思う。

すると「ハイパーインフレがー」と言い出す人がおるかも知れん。しかし現在もマネーストックはおよそ年率3%伸びておる。現在のマネーストックはおよそ900兆円なので、その3%は27兆円じゃ。日本では年間27兆円のおカネが増えてもインフレ率はほとんどゼロに近い状態なのじゃよ。

そこで伸び率を5%にすると、通貨供給量は年間45兆円になる。この45兆円を財政支出を通じて通貨供給するわけじゃ。今の日本の税収はおよそ60兆円あるから通貨供給量と合計すれば100兆円くらいの歳入が確保できる。今の国家予算はだいたい年間100兆円くらいだし、国債関係の支払いを除いた実質的な歳出(プライマリーバランスの部分)は年間75兆円程度じゃ。25兆円も黒字になるぞw。

つまり今の税収と通貨発行を合わせれば、国債を発行しなくとも社会保障の充実や社会資本の充実は十分に可能なのじゃ。これによって国債に頼ることのない歳出が可能となり、プライマリーバランスが保たれることは間違いない。国債が廃止されれば将来世代への借金は根本的になくなるのじゃよ。」

(ねこ)
「すごいにゃあ、これで「借金ガー」の呪いから開放されるのにゃ。消費税増税も必要ないにゃ。でも、インフレの心配はないのかにゃ。ハイパーインフレにならなくても、あまりインフレ率が高すぎるのは嫌なのにゃ。」

(じいちゃん)
「確かに高すぎるインフレは好ましいと思えない。日本の高度成長期のインフレ率は5%程度じゃ。じゃからこれを超えるのはあまり望ましいとは思えない。そこで例えばインフレターゲットとして3%を設定する。

これは簡単に言えば、インフレ率が3%に達するまでは例えば年率5%ペースの通貨供給を行うが、インフレ率3%に達したら通貨供給のペースを落とす、あるいは消費税などを増税して世の中のおカネを回収してしまうのじゃ。これによってインフレ率を3%を中心とした数値に収めることができる。多少は上にオーバーシュートするかも知れないが、民間銀行の信用創造を停止してあるのでインフレが止まらなくなる心配はまったくない。

そして、金融・財政を一体化した制度、つまり100%マネーを採用すれば、通貨供給量を政府・日銀が直接コントロールできるから、これまでのような民間依存の通貨供給とは比較にならないほど正確に物価をコントロールできるようになるのじゃよ。

まずは、安定的に通貨供給量を5%とし、それを利用して毎月1万円のベーシックインカムをスタートする(予算15兆円)経済活性化策をお勧めしたいのじゃ。

(本編サイトにも同時掲載)