2017年6月2日金曜日

二つの異なるグローバリズム

グローバリズムは大きく異なる二つの種類がありますが、新聞マスコミはその二つをごちゃ混ぜにしてグローバリズムと呼んでおり、それが大きな誤解を招いています。その二つとは、

①世界規模の課題解決としてのグローバリズム
②拝金主義的な単一市場化のグローバリズム

①世界規模の課題解決のためのグローバリズムに反対する人々がいるとは思えません。人類の活動が世界にわたり、かつ大規模化することにより生じてきた、環境問題、人口爆発などの地球規模の危機への対応。あるいは全人類的な貧困撲滅、疾病の根絶など、今日におけるグローバルな協力関係が重要であることは疑いもありません。こうしたグローバリズムはますます活発化すべきでしょう。世界はグローバルに協調すべきです。

問題は②拝金主義的な単一市場化のグローバリズムです。

世界に広がる民族主義や社会主義的なうねりは、拝金主義的な単一市場化のグローバリズムが生み出す「経済格差、失業者」に原因があります。それは反グローバリズム運動が右派にも左派にもあることからわかります。民族主義的な色合いの濃い右派、例えばフランスの国民戦線やイギリス独立党もあれば、左派ではスペインのポデモス、また中道としてはイタリアの五つ星運動があります。

彼らの共通点は「拝金主義の追放」です。

カネ儲けのために行き過ぎた市場原理主義が容認され、世界を強制的に単一市場化し、それを新聞マスコミがやれグローバル化とはやし立ててきました。その結果、貧富の格差が拡大し、失業者が生まれ、人々が苦しんでいる。政治家もマスコミも御用学者も、上っ面で「チェインジ」などと言いながら、根本的な問題解決を放置してきたのです。

現在のEUで何が起きているのか?金融のグローバル化がもたらした巨大バブルとその崩壊を発端とする緊縮政策。それによって失業者が溢れ、格差が拡大する一方で、グローバル資本とその関係者だけが利益を独占する。この状況に対する人々の怒りが反グローバリズムを押し立てています。

ですから、反グローバリスムの共通にあるのは「拝金主義の追放」であって、自由、平等、博愛を追求するグローバルな取り組みに対しては、何ら反対するものではないのです。

しかし新聞マスコミはこうした論点にはあまり触れようとせず、グローバリズムに批判的な右派政党の民族主義的な側面を捉えて、グローバリズムに反対する人々は「極右や反知性主義の台頭だ」と決め付け、あるいはそうした人々が増えている現状を「ポピュリズムだ」と批判しています。

新聞マスコミの一面的な報道によって、
問題の本質は大きく歪んでゆく。

多くの人々は、民族同士が争う世界や排他的な社会を望んでいるのではなく、極めて単純な動機で動いています。「まともな生活がしたい」。それだけ。にもかかわらず、政府も御用学者もマスコミも、拝金主義に染まり、そうしたごく普通の庶民の夢と希望を打ち砕いてきたのです。

国際分業やテクノロジーの進化の恩恵を多くの人々に分け与えるのでなければ、庶民にとって経済的なグローバリズムは何のメリットもありません。緊縮財政をただちに中止し、ベーシックインカムなど分配政策を推進する必要があります。そんなものはシステムとしては単純なので、政府がその気になればすぐにできます。

それが行われない限り、市場原理主義に基づく、単一市場化のグローバリズムは格差や貧困を生み出すだけであり、絶対に受け入れるわけにはいかないのです