2019年5月9日木曜日

MMT(現代貨幣理論)の基本とは

MMT(現代貨幣理論)が注目をされていますが、そもそも貨幣理論なのですから、貨幣の話がまず最初にあるべきはずです。しかし、マスコミ等の報道では、その肝心な部分が欠落しています。とても不思議ですね。

MMTは貨幣理論と銘打っているのですから、当然ながら、貨幣の理論がその根幹にあるわけです。そして、その前提に基づいて、MMTにおけるすべての考察が成り立っているわけですから、当然、議論の入り口の段階において、その貨幣の話が正しいのか、間違っているのか、という議論がなされるべきでしょう。

しかし、新聞記事を見る限り、そんな話は出てきません。そこをすっとばして、MMTの結論部分が正しいのか、間違っているのか?という話になっています。入り口の話をすっとばして、結論部分だけ正しく議論することなどできるのでしょうか?これは、およそ、科学的な姿勢とはかけ離れているとしか思えませんね。

MMTの基本は、貨幣の発行のしくみ、つまり、「現代のおカネは、(ほぼ)すべてが銀行の信用創造によって作られている」という点を理解することにあります。

信用創造によっておカネが作られるとは、世の中のおカネは、貸し出しによって作られるということを意味します。言い換えれば、「世の中のおカネは、すべて、誰かが銀行から借金することによって作られている」ということです。

逆に言えば、銀行から借金する人が居ないと、世の中からおカネが無くなることを意味します。借金しないと、おカネが不足するのです。これは事実です。

それは、また同時に、これまで新聞マスコミが、銀行の業務に関して説明してきたことが間違いであることを意味します。つまり、これまでマスコミは「銀行は預金者から預金を集めて、それを貸し出す」と説明してきましたが、そうではなく、「銀行が誰かにおカネを貸し出すことで、預金が発生する」という説明が正しいことになります。

実際のところ、銀行の金融業務をみれば、「銀行が誰かにおカネを貸し出すことで預金が発生している」のが、紛れもない事実です。それはバランスシート(会計の仕組み)から明白です。

まず、このカネの仕組みを正しく理解すること、これがMMT(現代貨幣理論)の基本になります。この認識があって、そこから、様々な考察がなされてきます。私はMMTにそれほど専門的な知識を有するわけではありませんが、どこにMMTの「肝」があるか、それは見抜いているつもりです。

というか、普通に考えて、貨幣理論だ、と言っているのだから、貨幣の理解がまず先に立つのは当たり前ですよね。

その点、新聞等が書いている、MMTに関する説明は、およそ普通の国民が理解できるような内容ではありません。珍奇なものです。新聞には次のように書いてあります。

「自国通貨の発行権を持つ政府は、無限に通貨を発行できるため、物価の急上昇が起きない限り、(政府の)借金が増えても問題ないとする経済理論(読売新聞)。」

意味不明ですねw。こんな説明では、MMTを理解するどころか、変な誤解を広めるだけでしょう。もっとわかりやすく、説明する文章を考えてみました。

「現代の貨幣(現金および預金)は、ほぼすべてが負債(借金)によって作り出されている(信用創造)(貨幣理論)。そのため、民間負債の量が不十分だと、世の中のおカネが不足した状態となり、これがデフレを引き起こす。一方、政府の負債もまた世の中のおカネを増やすことから、民間負債の不足分を政府の負債によって補うことで、通貨供給を確保できる。ゆえに、デフレ環境下においては、政府の負債は必要不可欠であって、負債は問題にならないとする経済理論。」

少し文章の量が多いかも知れませんが、これなら、おそらく普通の人でもわかりやすいと思います。もし短縮するなら、ちょっとわかりにくくなりますが、

現代の貨幣は負債によって作り出されているため、民間負債が不十分であれば、政府負債を増加させなければデフレから脱却できない。その意味から政府債務は必要である、とする経済理論。」

MMTオタクの人に言わせれば、正確じゃない、と批判されそうですが、国民の誰も理解できないような表現では、仮に正確であったとしても意味がありません。ナンセンスです。そもそも、MMTを一言で正確かつ誰でも理解可能な表現で説明することなど100%不可能だ、と断言します。

MMTは貨幣理論です。まず、貨幣の話があって、はじめてMMTを説明したことになると思いますね。