2018年5月27日日曜日

高プロ成立をベーシックインカムの好機に

高度プロフェッショナル制度は脱時間給へ向けた「蟻の一穴」になる恐れがあります。しかし、ただ反対しても世界的な時流に押されてしまうでしょう。これに対抗するには「ベーシックインカム」が有効です。

企業が求める「脱時間給」の手始めとして、高度プロフェッショナル制度が導入されました。高プロは対象が限定されるため、これそのものはあまり問題ありません。しかしこれまでの流れから言えば、これが蟻の一穴となり、なし崩し的に「脱時間給」がすべての職種に拡大される恐れがあります。

グローバル資本主義の国際競争社会にあっては、企業のコストダウン競争がますます激化する一方であり、脱時間給もその流れに沿ったものと思われます。こうした動きに対して徹底的に反対し、脱時間給を無きものにしようとする試みは、相当に苦戦を強いられると思います。仮に脱時間給を廃止に追い込んだとしても、日本がグローバル競争で敗退してしまう恐れもあります。

こうした世界的な流れに対しては、新たな社会ステムの導入によって対抗することが賢明だと思います。それが「ベーシックインカム」です。ベーシックインカムは脱時間給がもたらす労働者の不利益を補い、場合によっては脱時間給をむしろ労働者のメリットに代えてしまう可能性もあると思われるからです。もしベーシックインカムが導入されたならどうなるか。

①導入前:成果が出なければ賃金が下がるため、長時間労働してまで会社の要求する成果を出す必要がある。→導入後:ベーシックインカムによって所得が上昇するので、残業して成果を出さなくても生活レベルは維持できる。むしろ労働時間の拘束がないので、毎日6時間労働でも文句は言われない。

※もちろん、長時間労働して成果を出し、会社から多額の報酬を貰うのも自由。

②導入前:脱時間給でブラックな労働環境の会社でも、辞めたら生活できなくなるので、ブラックと知っても働かざるを得ない。→導入後:所得が保障されるので、ブラックな労働環境の会社は、いつでも退職できる。社会からブラック企業を一掃できる。

③導入前:転職したくても失敗すると路頭に迷うので、できない。→導入後:万一失敗しても、所得が保障されているので転職しやすくなる。チャレンジできる。雇用の流動化を促進して社会の生産性を向上させる。

④導入前:景気が悪いと、いくら労働しても成果が出ない。→導入後:国民の購買力上昇によって好景気になり、労働の成果が出易くなる。

最終的には、労働時間と無関係に所得が保障されるので、働いても、働かなくても生活できる社会になります。長時間労働して成果を出せば、リッチな生活にも道は開かれています。社会全体として所得レベルを引き上げるため、大企業だけに偏りがちな賃上げメリットを、すべての労働者に与えることができます。

もちろん、明日から完全にそういう社会が実現できる、という話ではありません。しかし、そのようなビジョンを持って、着実に「脱時間給への対抗策」を進めてゆかなければ、またしても後手に回るだけでしょう。脱時間給の適用範囲が拡大されてから騒いでも遅すぎるのです。

例えば、毎月1万円の小額ベーシックインカムから始めるなら、直ぐにでも始められます。そのようなくさびを打ち込んでおけば、それこそ、それを蟻の一穴にして、完全なベーシックインカムを実現できると思うのです。

2018年5月26日土曜日

人口減少は社会の異常性を示唆する

通常の環境下においてすべての生物種は個体数を増加します。ところが人間は社会が近代化するほど個体数が減少し、生物としてあり得ない方向にあります。これは環境に異常があることを示唆します。

人間も生物種のひとつに過ぎませんので、そうした観点から見る必要があります。生物は通常の生息環境においては、必ず個体数を増やします。生物は環境に強く影響されます。ですから、人間が個体数を減らすことは、その生息環境が劣悪化していると考えることはある意味で当然でしょう。

では、どのような劣悪化が考えられるのか。まだ検討を始めたばかりなので、分析はこれからです。しかし、人口の減少化はいわゆる近代化と深く関わっていることはほぼ間違いないでしょう。なぜなら、原始時代、あるいは途上国においては人口が増加しているからです。つまり、先進国になるほど、いわゆる近代化が進むほど人口減少傾向になるのです。

これは、一見すると近代化は人間の生息環境を改善しているかにみえて、その本質的な部分において、むしろ何らかの環境が劣悪化していると推測されます。それは一体なにか。


単なる価値観の多様性、価値観の変化が人口減少の原因であるとの考え方には否定的です。もし仮に価値観だとしても、その価値観を生み出している社会環境に、繁栄を抑圧する何らかの悪環境があるはずです。

原始時代と現代において、あるいは途上国と近代資本主義国において、どのような環境相違があり、そのうち、どれが人間の個体数増加に対する抑圧を生み出しているのか?これは大きなテーマのような気がします。

翻って、新聞テレビの軽薄なこと。日本が人口減少すれば、移民をつれて来れば良いと主張する。根本的な課題の分析もされず、対症療法で問題解決を先送りする姿勢。絶望的なほどの無能さです。失礼ながら、彼らの知的レベルを疑わざるを得ません。こんな連中の主張を聞いていても、本質は何も理解できず、ただ人類は流されるがままに滅んでゆくかも知れません。




2018年5月20日日曜日

どこから賃金が湧いてくるのか?

世界で日本だけ賃金が減っている。その理由は企業がカネを貯めこんでいるからと言うが、それだけでは説明できません。そもそも世の中のおカネを増やさずに、どこから賃金が湧いて来るのでしょうか?

ネットで拾った図によれば、世界の国は賃金が伸びているのに、日本だけ賃金が伸びていないという。



これは名目賃金ですから、実質賃金であればデフレである日本と、これほどまでの差はないでしょう。しかし人間は感情で動く動物なので、実質よりも名目手にする賃金)が増えるか、増えないかが消費者心理に大きく影響するわけです。

一部の人は「賃金が伸びないのは、企業がカネを貯めこんでいるからだ」と主張します。では、カネを含めて日本の金融資産全体はどうなっているのでしょうか。



日銀資金循環統計を用いて、純資産(資産-負債)の推移をざっくりみると、家計の資産だけがどんどん増え続けています。なぜこうなっているかと言えば、企業の資産が増える一方、企業の負債もそれ以上に増えているからです。つまり企業が一方的に貯めこんでいるとは言い切れないわけです。むしろ家計が一方的に貯めこんでいます。

ところで、世界のマネーサプライの推移はどうでしょうか。


これは通商白書に掲載されたデータを再加工したものですが、「日本だけがおカネを増やしていない」ことが明白です。おカネも増やさないのに、賃金が増えるはずがありません。

そもそも、どこから賃金の元になるカネが湧いて来るのか。働けばおカネが自動的に増えるわけではありません。どんなに働いても、おカネを増やさなければ賃金は決して上がらないのです。

日本だけ賃金が伸びない理由は「日本だけカネを増やさないから」です。企業を悪者にして叩いても、賃金は1円も増えません。おカネを発行して増やし、それを国民に配れば良いだけです(ヘリコプターマネー)。そうすれば給付金で国民所得が増えるだけでなく、名目賃金も間違いなく上昇し、デフレなどウソのように解消すると思います。

2018年5月19日土曜日

プライマリーバランスではなくインタゲが正解

新聞マスコミは財務省の意を受けて「プライマリーバランスの黒字化」をさかんに喧伝します。しかしプライマリーバランスを黒字化しても財政が均衡するだけであり、日本経済にとって何のメリットもありません。インフレターゲットこそ正しい方法です。

プライマリーバランスとは、税収と歳出を均衡させること、つまり税収の範囲で歳出を考えるものです(財政均衡主義)。プライマリーバランスのメリットがあるとすれば、それはいま以上に国債の発行残高が増えることを防げる点です。国のシャッキンガーと年中騒いでいる人たちにとっては良い方法かも知れません。

しかし、プライマリーバランスの均衡にこだわれば、財政は果てしなく収縮する危険性が非常に高いと言えます。なぜなら、貯蓄によって循環するおカネの一定量が常に退蔵(貯めこまれて使われなくなる)されるため、循環するおカネは常に減り続ける性質があるからです。

今日の税制においては、循環するおカネに課税する方式がほとんど(消費税、所得税、法人税など)であるため、通貨の退蔵によって循環する通貨が減ると、必然的に税収が減る仕組みになっています。そのため、税収は毎年必ず減少を続け、それにつれて歳出も毎年縮小せざるを得なくなります。

ですから、もし歳出額を毎年減らすことなくプライマリーバランスの額を均衡させるためには、貯蓄によって退蔵される通貨を上回る量の通貨を通貨循環に投入する必要があります。そのためには、従来、経済成長による通貨量の増加、つまり「信用創造貸し出し)による通貨の増加」が必須でした。

しかし、経済成長に必要とされる投資を促進するには、金利が必要であり、先進諸国の均衡金利がマイナスである今日では、信用創造(貸し出し)で金利をプラスにするだけのインフレを起こすことは難しいと思われます。これが流動性の罠の状態です。

その一方、高齢化に伴って医療費・年金などに必要とされる社会保障費は必ず増大します。毎年のように税収が減る一方で社会保障費は必ず増加する状況でプライマリーバランスを維持するためには、増税(税率の引き上げ・新たな税の導入)しか方法はありません。

しかし、増税は明らかに消費を冷やして経済をデフレへ向かわせてしまいます。これは通貨循環をますます縮小する結果を招き、仮に税率の引き上げによって一時的にプライマリーバランスを保てたとしても、増税が引き起こす景気後退によって徐々に税収が減り、再び増税が必要となるのです。

これは「増税緊縮スパイラル」とも呼ぶべき現象であり、増税→経済不況→増税→経済不況と連続的に経済が収縮し、やがてデフレ恐慌によって破綻し、日本経済は崩壊します。

すなわち、プライマリーバランスは日本経済を崩壊させます。

ではどうすれば良いのでしょうか?そこでプライマリーバランスに代わって用いられる政策が「インフレターゲット政策とヘリコプターマネー政策の併用」です。ヘリコプターマネーによって、毎年のように退蔵される通貨の減少および経済成長に伴い必要とされる循環通貨を投入しつつ、インタゲによってその投入量をコントロールします。

例えば小額ベーシックインカムとして全国民に毎月1万円(年間財政支出15兆円)を実施し、インフレを3%程度に設定しつつ、給付金額を毎年徐々に増やしてやれば、消費拡大によって景気が回復するだけでなく、実質金利がマイナスになって投資も促進されますから、供給力の向上も期待できます。

この方法であれば、日本経済がデフレ恐慌に陥る心配はなく、またハイパーインフレになる心配もなく、しかも国民所得が向上し、日本の供給力も向上を続けることで、間違いなく日本は成長軌道に乗ることができます。

プライマリーバランスはデフレ恐慌への道です。インフレターゲットとヘリコプターマネーの組み合わせにより、景気をやや過熱気味にしたまま、税収も安定させ、社会保障による再分配をフルに活用できる強い日本経済を目指すべきだと思うのです。


2018年5月13日日曜日

「世の中にそんなうまい話はある」のです

おカネを配りましょうと主張すると、世の中にそんなうまい話はない、との反論がマスコミに登場する。それに騙された庶民がそう思っている間に、うまい部分を支配層が持っていく、世の中はそういう仕組みらしい。

国民にタダでおカネを配る行為は、自らの首を絞めることになる、という主張が必ず出てきます。しかし、冷静に考えてみれば、世の中の方向性は「うまい話」に向かって進化しているのです。人工知能やロボット、完全自動生産工場が進歩すれば、やがて人々が労働しなくても機械が生産してくれる世の中になることは自明であり、また、それを目指して文明は進化してきたわけです。

そして機械が生産活動をしてくれるなら、人間はタダでおかねを貰えるようになる事もまた明らかです。もちろん、今はまだ100%そうした状態になっているわけではありません。しかしテクノロジーがこれだけ進化した時代なのですから、10%くらいはそうした時代に足を踏み入れていると考えることは、ごく自然なことでしょう。つまり、毎月1万円や2万円はタダでおカネを貰えるのが当然の社会になっていても不思議はないわけです。

事実、今日の日本経済は消費の伸び悩みが景気回復の足を引っ張っているのであり、これは庶民におカネが不足していることを意味します。こうした状況は、テクノロジーの進化に伴って本来はおカネをタダでくばるべきところ、おカネを配らないがために消費が不足していることを示唆しているとも考えられるのです。

ですから、本来は配られるべきおカネをタダで全国民に配るなら、消費が増えて国民が豊かになると同時に、景気も回復してインフレ基調になります。これがテクノロジーの発達した社会の、本来のあるべき姿だと考えることができるのです。

ところが、こうした考えを完全にスルーして、「タダでおカネを配る(フリーランチ)は、国民の首を絞める」との主張がマスコミに登場します。

しかし、考えてみてください。テクノロジーの進化によって毎月1万円や2万円のおカネをすべての国民がもらえるところを、「そんなことは禁じ手だ」といって封印してしまえばどうなるか。テクノロジーの進化がもたらすはずの利益は、国民へ向かわず一体どこへいくのでしょうか。

支配層の利益に化けると考えることができます。おカネが直接支配層に流れる場合は、それが資産上位1%の富裕層の膨大な貯蓄に化けていると考えることができます。

また、仮におカネが流れなくても「デフレ」というかたちで支配層の利益になります。なぜかと言えば、デフレはおカネの価値が上がること(インフレの逆)ですから、デフレになれば、しこたま溜め込んでいる貯蓄の価値が増えるのです。庶民が消費をしないことで経済がデフレのままであることは、支配層にとって大きな利益になるわけです。

しかし、「働かない人がおカネを貰うことは許されない」という常識の元に暮らしてきた多くの人々は、「タダでおカネを貰えば、自分の首を絞めることになる」というマスコミの主張に騙されがちです。テクノロジーの進化について深く考えることはないからです。

こうして、多くの国民が「タダでおカネを配るなんてうまい話はない」と思い込んでいる間に、そのうまい部分を支配層がすべて持って行く、世の中はそういう仕組みになっていると思われます。

2018年5月12日土曜日

世代間対立の原因は緊縮主義

若者が「自分達は高齢者に搾取されている」と批判し、高齢者が「俺たちは苦労して働いたのだから、若者も苦労しろ」と批判する。実に不毛な世代間対立です。しかし対立の原因は緊縮主義にあります。

日本はバブル崩壊以降、失われた20年の間に賃金が低下し続け、ブラック企業がはびこってしまったため、若い世代には不満を持つ人々も少なくないでしょう。バブル以前の人々だけがいい思いをしたと感じるのです。それに輪をかけて若者に不満を抱かせる事例があります。年金制度です。

新聞マスコミが好んで用いる表が「世代ごとの年金保険料支払い額と支給額のバランス」です。この図では、世代ごとに生涯支払うことになる年金保険料の総額と、生涯受け取ることになる年金支給額の総額の差を計算し、比較しています。

それによれば、今の20~30代の若者世代は負担が大きく、2000万円以上も損するとの試算がされています。それに対して65歳以上の高齢者は2000万円以上も得すると試算されています。こんな表をこれ見よがしに見せられれば、それでなくとも所得の伸び悩んでいる若者は怒るでしょう。そして高齢者を敵視し、悪者扱いし、なかには「若者は高齢者に搾取されている」と主張する者まで現れてきます。

「若者は高齢者に搾取されている」。こうした批判を受けた高齢者もまた、怒るでしょう。高齢者だって昔は若者だったわけで、その時代には、生活するために相当な苦労を強いられてきたわけです。戦後の荒廃した国土の復興に寄与してきたのは、紛れもなく今は高齢者となられた方々です。その彼らには高齢となったいま、ゆっくりと余生を送る権利があって当然でしょう。それを軽率な若者が「高齢者に搾取されている」とわめけば、怒るのは当然です。

その一方、若者に火をつけて、世代間対立を引き起こしている新聞マスコミは、ほくそ笑んでいるでしょう。もちろん、これを消費増税や年金支給額の引き下げに結びつけるためです。したり顔で上から目線でこう言うのです「若者の負担を軽減するため、広く、高齢者にも応分の負担を求める必要があるだろう」。

はあ?

しかし、良く考えてください。生産性、生産能力は向上し続けています。機械化がこれだけ進化した時代、さらには人工知能やロボット、無人工場がますます急速に普及されると予測される時代にあって、なぜ若者の負担が年々増加するのか?高齢化が進行していることは間違いない事実ですが、テクノロジーの進化により、それに見合うだけ生産性は向上しているのです。

単純化して言えば、支えるべき高齢者の数が増えたとしても、それを人工知能やロボットが支えるなら、若者の負担が増えるはずがないし、それが未来の社会の姿のはずなのです。

にもかかわらず、現在の年金システムでは、どんなにテクノロジーが進化しても、そうした未来には到達できません。これは現在の年金システムそのものに、重大な瑕疵があると判断せざるを得ないでしょう。そして年金システムはマクロ経済の大きな部分を占めているのであり、現在の年金システムはマクロとしても大きな欠陥を内在していると思わざるを得ないでしょう。

このような問題に解決方法を提示してくれるのも、ベーシックインカムとその財源に関する考え方でしょう。テクノロジーの進化がもたらす恩恵、高い生産性を、高齢者の生活保障にどうすれば十分に活用できるのか?新しい発想とシステムが求められています。それこそが本質です。

新聞マスコミと財務省連合による、増税、福祉切捨ての誘導に載せられ、世代間で対立している場合ではないと思うのです。

2018年5月7日月曜日

日本には革新政党がない

人工知能、ロボット、3Dプリンタなどテクノロジーの革新は目覚しいものがあります。一方で政治は前世紀の政治闘争から一歩も進化しておらず、革新と呼べる政党はありません。日本にあるのは保守右派と保守左派だけです。

左派と言えば昔は「革新」などと言われたらしいですが、今や懐古趣味おびただしい保守左派に過ぎないと感じます。前世紀から主張がまったく変わらない。いまだに東西冷戦の政治イデオロギー、つまりアメリカ寄りか中国寄りかという争いが色濃く、経済面にしても労働闘争のごとく、労働者=善、企業=悪のステレオタイプな態度から、労働者の権利や賃上げに固執しています。もう50年は同じことをやっているでしょう。

そんな左派が「革新である」などとは間違っても言えません。日本の左派は昔ながらの(=保守)「保守左派」です。そのため、安保闘争時代を懐かしむ高齢者の方々の支持率は高いものの、若者の支持率はむしろ自民党の方が高い。そりゃあ若者にとって今の左派は「保守」の代表みたいなものですからね、未来へ向けて左派は打破すべき古い価値観になってしまいました。

もちろん右派である自民党は名実とも保守そのもの。旧来の資本主義の形を守る政策を行なっています。とはいえ安倍政権は保守左派の主張である労働者の賃上げ、同一労働同一賃金、子育て支援などをたくみに取り込み、保守左派の存在価値を打ち消す戦略に出ています(いわゆる論点つぶし)。実に賢いですね。今の左派は「保守左派」ですから、保守である自民党にとっても与し易いのでしょう。

そうした中で、左派はますます存在感を失うでしょう。今の左派はあまりにも古い。もし左派が情勢を挽回したいと思うなら、前世紀の殻に閉じこもるのではなく、未来を軸に据えた革新政党を目指すべきです。

これからの時代に「革新」と呼べる政党は、急速に進化するテクノロジーによる社会変革を見据えた政策を提案できることはあまりに当然でしょう。テクノロジーの最前線に立つビジネスマンや学者の意見を積極的に取り入れるべきです。具体的な政策は様々でしょうが、少なくとも次の点は重要な政策課題になると思います。

・ベーシックインカムとその導入方法
・通貨改革による政府債務問題の解決
・通貨改革によるバブルとバブル崩壊の解決

左派は相変わらず完全雇用と賃金に固執し、税収の不足に悩まされ、バブル崩壊の歴史を繰り返すことを、ただ受け入れるだけの保守左派政党であり続けるのでしょうか。


2018年5月6日日曜日

ベーシックインカムの財源と通貨循環

2018.5.5

財源を考える際に重要な点は「通貨循環」です。おカネは経済を循環していますから、出て行ったおカネは再び戻り、また出て行く。ですから循環を考えずに歳入と歳出だけで財源を考えることは、ほとんど無意味だとわかります。

(じいちゃん)
今日はベーシックインカムにおける世の中のおカネの循環について考えてみたいのじゃ。

(ねこ)
なんでそんなこと考えるのかにゃ。

(じいちゃん)
世の中の経済は、多くの人々や企業が、生産した財(モノやサービス)を交換することで成り立って居るが、その交換の媒介を担うのがおカネじゃ。人々や企業の間をおカネが循環することで経済が成り立っており、もしその循環が滞ったりすると、たちまち経済が不況になってしまうんじゃ。じゃから、経済にとっておカネの循環が極めて大切であり、ベーシックインカムのような経済の仕組みも、おカネの循環から理解しておく必要があると思うからなんじゃよ。

(ねこ)
ふにゃ、おかねの循環がうまく行かないと、ベーシックインカムもうまく行かないんだにゃ。

(じいちゃん)
その通りじゃ。さて、まずは人間の労働が関係することですべての財が生産されている今日の経済について考えてみよう(図1-A)。なお図は極めて簡略化しており、金額は仕入れや経費のようなもの、あるいは設備投資などはすべて差し引いた後の額(付加価値)と思って欲しいのじゃ。また、金額の数値はあくまでもシミュレーションのための仮の数字であることは言うまでもないのじゃ。



財は生産者である企業で生産される。そして企業は労働の対価として労働者に対して、例えば①賃金100を支払う。労働者は同時に消費者でもあり、家計と呼ばれる。②家計は得られた賃金100を企業に支払い、③財100を得ることができる。企業に支払われた100のおカネは、再び賃金として家計に支払われる原資になる。このように、おカネが生産者(企業)と消費者(家計)をぐるぐると循環することで経済が成り立っておるわけじゃな。

次に、テクノロジーが飛躍的な進化を遂げ、人工知能やロボット、無人工場などですべての財が生産されるようになると、人間は働く必要がなくなり、いわばすべての人が失業状態になると考えられる。もちろんこれは最終的な話じゃが、仮にそうなったら、おカネはどのように循環するのじゃろうか(図1-B)。



すべての仕事を機械が行なうようになると、すべての人は失業状態となってしまう。それでは誰も企業から財を買うことができなくなってしまう。そこでまず①通貨100を発行する。それを②政府がベーシックインカムとして家計に100支給するんじゃ。家計は③100のおカネを代金として支払い、④100の財を得ることができる。⑤企業が代金として受け取った100のおカネは税金として政府に支払われるんじゃ。政府に支払われた100のおカネで、政府は100のおカネをベーシックインカムとして再び家計に支給することができる。

(ねこ)
ふにゃ、売り上げ利益をみんな税金で取られたら企業は潰れないのかにゃ。

(じいちゃん)
それは大丈夫なんじゃ、というのも、最初に100のおカネを発行しておるからじゃ。このおカネはそもそも政府がベーシックインカムを回すために発行したおカネであって、それによって企業の売り上げが生じておる。じゃから企業から政府がそのおカネを回収したとしても、企業には何の問題もない。回収しなければベーシックインカムを継続するためにおカネを発行し続ける必要があるし、一方で、毎年政府が発行する通貨を企業がどんどん貯め込み続ける結果になる。

またその逆に、もし仮に最初に100のおカネを発行せず、初めから税金として100のおカネを企業から回収すれば、企業の資産が100だけ減らされることになるじゃろう。これでは企業は潰れてしまう。

最初に、ベーシックインカムとして循環するためのおカネを発行し、これを家計に支給するところからスタートすれば、仮に税金を課されても経済に大きな悪影響を及ぼす恐れはないと思うのじゃ。

(ねこ)
なるほど、最初におカネを発行することがポイントなんだにゃあ。

(じいちゃん)
さて、それでは、人間の仕事が完全に機械に置き換わってしまう前の場合を考えてみよう。たとえば、50%の仕事が機械に置き換わるとすれば、およそ50%の人が失業状態になるわけじゃから、企業から家計に支払われる賃金も50%にへると予想できる。ならば、残りの50%のおカネをベーシックインカムとして支給する必要があると思うのじゃ。それを(図1-C)にしてみた。



この場合も、①最初にベーシックインカムとして支給する50のおカネを発行する。そして②家計にベーシックインカムとして50のおカネを支給するんじゃ。一方、50%の人は仕事をしておるから、③家計は賃金として50のおカネを受け取る。すると家計はベーシックインカムと賃金を合わせて100のおカネを手にすることになる。④家計は代金として企業に100のおカネを支払い、⑤100の財を得ることができる。企業は100のおカネを受け取り、⑥そのうち50のおカネを税金として政府に納め、残り50は次回に労働者へ支払う賃金の原資となるわけじゃ。そして、政府は企業から回収したおカネを再びベーシックインカムとして家計へ支給できる。

以上が、ベーシックインカムの基本的な通貨循環だとワシは考えておるのじゃよ。なお、ここでは株主へ支払われる利潤は省略しておる点に留意いただきたい。また、いくら政府がベーシックインカムのために発行したおカネだとはいえ、税によってすべて政府に回収されてしまうと、企業のモチベーションが下がるとの話もあるじゃろうから、すべて回収はせずに企業の内部留保などとして蓄えさせ、その分だけ通貨を少し多めに発行するという方法もアリじゃと思う。

(ねこ)
そうにゃ、政府が発行したおカネを企業がすべて貯め込むのは問題だけど、逆にすべて回収するのも酷なのですにゃ。すべて回収するんじゃなくて、企業の成績に応じて企業におカネが残る仕組みも必要なんだにゃ。バランスが大切にゃ。

(じいちゃん)
さて、もう少し具体的に考えてみよう。というのも、企業からベーシックインカムのおカネを回収する際に税制を利用するにしても、税制にはいろいろある。そこで、二つのケースを考えてみたいと思うのじゃ。一つはストック(資産)に課税する方式、もう一つはフロー(利益)に課税する方法じゃ。前者は資産課税、後者は消費税を考えてみよう。

最初は資産課税じゃ。これは内部留保、あるいは剰余金と呼ばれるいわば「企業の貯蓄」に課税する方式じゃな。人間の仕事の50%が機械に置き換わって、50%の人が失業状態にある場合を考える(図2-A)。



まず①通貨を50発行し、②ベーシックインカムとして家計に50を支給する。③家計には企業から50の賃金が支払われるので、家計の所得は合計で100となる。そして④代金として100を払うことで⑤100の財を手に入れる。企業は売り上げとして受け取った100のうち、50を次回の賃金の支払いに使うわけじゃが、残りは⑥企業の利益として貯め込まれることになる。これが剰余金じゃな。普通は企業の利益から株主に配当が支払われるのじゃが、ここでは支払わないものとする。すると企業の剰余金はどんどん増え続けることになるので、⑦これを資産課税として政府が50回収という寸法じゃよ。これがストックに課税する一つの方法じゃ。

ワシとしてはこれが良いと思っておるのじゃが、「内部留保に課税するとはけしからん」と経団連などが大騒ぎするかも知れないのう。おまけに「何が何でも消費税で」という人がいるので、消費税で考えてみよう。また、「働く人からカネを取って働かない人に配るのは反対」という人も多いので、なら消費税という形で消費者全てが広く負担するかたちにすることも一つの方法かも知れない。消費税を財源とすると、次のようになると思われるのじゃ。



まず①通貨を50発行し、②ベーシックインカムとして家計に50を支給する。③家計には企業から50の賃金が支払われるので、家計の所得は合計で100となる。そして④家計が企業に代金を100支払うわけじゃが、この代金には消費税も含まれておる。ここでは分かり易いように消費税を100%にしてある。すると、支払い100のうち50が消費税になる。⑤家計は100の財を手に入れて、企業は100の代金を受け取るが、このうち50は次回に支払う賃金の原資となり、⑥50は消費税の仮受金なので、これは政府に納めることになる。

この方法であれば、企業から文句を言われる筋合いはない、むしろ経団連は消費税を増税したくてウズウズしているほどじゃからのう。だが消費税とは付加価値税でもあるので、企業の付加価値に税を課しているとも言えるんじゃ。付加価値税を増税されて喜ぶ不思議な人たちじゃ。

いずれにせよ、最初にベーシックインカムを行なうためのおカネを発行して供給しておるから、家計にも企業にも大きな負担はないと考えられるのじゃ。つまり、財源が資産課税だろうと消費税だろうと、ベーシックインカムは通貨の発行を先行して行なう必要があると思うのじゃ。

(ねこ)
なるほど、消費税を増税してベーシックインカムを行なう場合でも、通貨を発行し、そのおカネを回すようにすれば、家計や企業に大きな負担を強いることなく運用できるかも知れないにゃ。

(じいちゃん)
ところが「通貨発行などけしからん、ベーシックインカムの財源はあくまで消費税だけ、しかも財政再建しろ」という考えの人も居るようじゃ。こういうタイプのベーシックインカムをワシは「緊縮型ベーシックインカム」と呼んでおる。では、消費税を財源とした、緊縮型ベーシックインカムはどうなるか、考えてみよう(図3)。



緊縮型ベーシックインカムの場合は、通貨発行はしない。税収等で通貨を調達して①ベーシックインカムとして20を支給する。おカネを発行しないのだから、当然、支給される額は小さくなる。②家計は企業から賃金50を受け取るが、ベーシックインカムと合わせて所得は70しかない。もし財100を購入しようとすれば、貯蓄を切り崩す必要がある。そこで③家計は貯蓄30を切り崩し、④代金100を企業に支払って、⑤財100を手に入れる。企業に支払われた代金100のうち、50は次回の賃金支払いに、⑥残り50は消費税として政府に納められる。政府は納められた税金のうち⑦仮に30を財政再建に回すとすれば、残りは20となり、これがベーシックインカムの財源となる。

つまり、このサイクルを繰り返すたびに、家計の貯蓄(金融資産)が切り崩され、政府の借金(負債)が減ることになる。家計の貯蓄を財源として財政再建する仕組みなのじゃよ。なにか妙な気がするかも知れんが、金融資産(おかね)は金融負債(借金)によって生じるのが現代の通貨の基本システムじゃから、借金を返済する以上は、誰かの資産(貯蓄)を取り崩さねばならないわけじゃ。

(ねこ)
酷い話しだにゃあ、もし、家計が貯蓄を切り崩さないとどうなるのかにゃ。

(じいちゃん)
家計が貯蓄を切り崩さなければ、財を買うためのおカネが不足する。この場合、ベーシックインカム20と賃金50の合計である70しか収入がない。だから財の売り上げは100から70に減少する。つまりデフレ不況に突入するというわけじゃよ。最悪の場合、家計の貯蓄が減る上に、さらにデフレ不況になる恐れもある。おそらく、財務省がベーシックインカムを主張し始めると、これが起きると思うのじゃ。緊縮型ベーシックインカムには大きな注意が必要なんじゃ。

(ねこ)
ふにゃ、緊縮型ベーシックインカムには気をつけるのですにゃ。

(じいちゃん)
では、消費税によるベーシックインカムについて、もう少し細かく考えてみよう。無職の人はベーシックインカムだけで生活することになる。このばあいの通貨循環はどうなるじゃろうか(図4-A)。



まず①通貨を50発行して、②ベーシックインカム50を支給する。無職者の家計はこの50がすべての所得なので、③企業に50のおカネを支払って、④財50を入手する。この財の量で最低生活が可能であれば、最低生活保障となる。さて消費税が100%ということは、家計が支払った50のうち、25が消費税に該当する。従って企業は受け取った50のうち⑥消費税として25を政府に納付するが、無職者に賃金を支払うことはない。となると、企業には剰余金として25のおカネが貯まることになる(配当金の支払いがない場合)。そうなれば、政府に回収されるおカネは25となり、ベーシックインカム50を支給するには足りなくなる。これを防止するためには、企業の剰余金25を回収する必要があるため、消費税だけではなく⑦資産課税を併用することで剰余金25を回収する。このように考えられるのじゃよ。

(ねこ)
ふ~ん、消費税単独でベーシックインカムを行なうのは難しそうだにゃ。ちなみに働いている人の場合はどうなるのかにゃ。

(じいちゃん)
働いている人の場合はあまり問題なさそうじゃ(図4-B)。



同じような図を何度も説明しておるので、詳細は省くが、この場合は企業に剰余金が貯まり続けることはないと思うのじゃ。

(ねこ)
うにゃ、それじゃあ、ベーシックインカムの財源としては、「資産課税の方法」と「消費税+資産課税の方法」のどっちでも成り立つから、どっちでも構わないのかにゃあ。

(じいちゃん)
「資産課税の方法」と「消費税+資産課税の方法」のどちらでも同じかと言えば、そうとは限らない。これはおカネの循環を単純化したマクロのモデルに過ぎない。人々がそれに沿って合理的に行動するわけではないのじゃ。実際の社会は個々の人々や企業の多様な行動が合成されて方向性が決まる。たとえば消費税を財源とする場合は、いくら最初におカネを発行して配ります、と言ったところで、いきなり消費税が100%だとそれだけで消費者心理が冷え切って、消費が抑制されてしまうかも知れない。おまけに、このモデルでは家計の貯蓄は考慮していない。人間はおカネを貯め込むのが好きらしいので、そうなった場合は家計の貯蓄に課税する方法も検討する必要が出てくる。人間が常に合理的な行動をするなら、誰も苦労はしないじゃろう。

とはいえ、おカネの循環から考えるとスッキリわかりやすいと思う。財源ガーとかシャッキンガーとか、単にそれだけを見て騒ぐ連中のバカバカしさがより明確になる。税と通貨循環の関係も分かるはずじゃ。マクロにおいてはおカネを介して全てが繋がっており、一体のシステムなのじゃ。

じゃがこうした考え方は新聞マスコミには決して出てこないじゃろう。マスコミの意図がバレてしまうからな。マスコミは報道しないことで世論を操作する。もちろん、これはワシが勝手に考えたシミュレーションじゃから完璧なものではない。ミスもあるじゃろ。じゃが、単にプライマリーバランスだの、国の借金だのという話ではなく、こうした通貨循環から経済、あるいはベーシックインカムを考えることの大切さを理解して欲しいと思うのじゃ。

(ホームページにも同時掲載)