2019年8月24日土曜日

緊縮・MMT・政府通貨制度の違い

2019.8.24

(ねこ)
リフレとかMMTとか、経済論には考え方がいっぱいあって、なんだか違いがよくわからないにゃ。違いを説明して欲しいにゃ。

(じいちゃん)
そうじゃな、では、今回は経済的な派閥として「緊縮派」「リフレ派」「MMT派」そして「政府通貨制度派」について、その違いを説明しようと思う。なお、各派閥の主張に関しては、人によって認識に違いがあるから、その点は、あらかじめお断りしておくのじゃ。

(ねこ)
そうだにゃ。じいちゃんは学者先生じゃないから、アカデミックな正確さは求めないにゃ。それより「わかりやすく」説明して欲しいのですにゃ。

(じいちゃん)
さて、まず各派について簡単に説明しておく。まず「緊縮派」じゃが、これは財務省の考えとほぼ同じだと思えばよい。税収と財政支出のバランス(プライマリーバランス)、財政の収支をあわせることを最も重視している派閥じゃ。彼らは、さかんに財政危機を煽り、消費増税の必要性を唱えておる。また、日本の大部分の新聞・マスコミも、この緊縮派に沿った論陣を展開している。

次に「リフレ派」じゃが、これはアベノミクスに近いと思えばよい。アベノミクス三本の矢の金融緩和政策に該当する。世の中におカネを供給することを重視しており、金利を下げて銀行からの貸し出しを増やそうとする。銀行からの貸し出し増加によって投資を刺激し、景気を活性化するものだ。

「MMT派」は最近になって注目されてきたが、昔からあるケインズ主義に近い流れじゃ。金利操作ではなく、財政出動によって世の中におカネを供給し、消費を刺激し、景気を活性化する手法になる。

「政府通貨制度派」は、まだまだ少数派だが、ワシが最も重視しておる考え方であり、あえてここで説明する。最近、スイスで「ソブリンマネー」の導入に関する国民投票が行われたが、ソブリンマネーとはまさに、この政府通貨制度のことじゃ。

では、以下の表に、各派の各政策に関するスタンス(考え方)を一覧表にしたので、見て欲しい。これを用いて、各派の考え方の違いを説明しようと思うのじゃ。



<緊縮派>

緊縮派は、何よりも財政の収支を重視する。財政の収支をプライマリーバランスと呼ぶ。具体的には税収と財政支出のバランスのことじゃ。財政支出はあくまでも税収によって国民(企業含む)から吸い上げた税金の範囲に収め、国債の発行による財政支出は避けたいとする。極端に言えば、仮にデフレ不況が深刻化しようと、経済が衰退しようと、財政の収支(プライマリーバランス)さえ黒字ならよしとする考え方なんじゃ。人々の生活より、帳簿の収支が大切だという、とんでもない連中じゃな。

そのため、日本経済の状況や世界経済の状況がどうあろうと、とにかく「消費増税」することに執念を燃やしている。

驚くべきことに、彼らは金融緩和、つまり世の中のおカネを増やすことにも否定的なんじゃ。まったく意味がわからないのう。というのも、世の中のおカネの量が増えて経済が活性化すれば、税収が自然に増加し、彼らの目的である財政の収支も改善することは明らかだ。にもかかわらず、金融緩和による税収の増加に対しては否定的であり、とにかく、税金の「税率を引き上げる」ことに固執する。

金融緩和に否定的なため、インフレターゲット政策に関しては懐疑的だ。インフレターゲット政策は、インフレ目標、すなわち、現在であれば2%の消費者物価上昇率に到達するまで、金融緩和を拡大あるいは維持する考え方だが、金融緩和を重視していないのだから、当然、この政策に対して懐疑的になる。それどころか、「2%に到達しなくてもいいじゃないか」と、金融緩和の中止や中断を促し、出口戦略と称する「金融引き締め(世の中のおカネを減らそうとする政策)」の必要性に言及する。それは、あたかも、金融緩和による税収の自然増を阻止しようとする動きに見える。何としても、「税率」を上げることに固執するがゆえであろう。

だから、緊縮派にとって「消費増税は絶対」であり、「プライマリーバランスの黒字化は絶対目標」となる。当然ながら、プライマリーバランスを悪化させる「財政出動の増加」には強く反対するし、「国債の増加」にも反対する。彼らの行動は「税金の税率を引き上げて国民からカネをむしり、財政出動を抑制して国民に流れるおカネの量を減らし、ひたすら政府の負債を減らそうとする」に集約できる。

ところで、表にある「市中銀行の信用創造」とは何か?現在の通貨制度(準備預金制度)においては、世の中を流通しているおカネのほぼすべては、市中銀行からの借金によって作り出されている。この、「借金によっておカネが作り出される過程」を信用創造と呼ぶ。つまり、市中銀行からの借金によっておカネが作り出されるという現在の金融システムに対して、それを積極的に肯定するか、否定するか、という立場の違いが生じる。

ちなみに、緊縮派は市中銀行の信用創造については、あまり関心は示さないと思われる。彼らは金融緩和に否定的であるし、興味の中心は「増税」にあるからだ。

<リフレ派>

リフレ派の政策は、基本的に金利操作にある。銀行からの貸出金利を引き下げることで銀行からの貸し出しを増加し、投資を刺激し、世の中のおカネの量を増やす(あるいは循環を良くする)政策になる。実質金利という、実際には存在しない概念も導入するなど、あくまで金利操作に固執する。リフレ派は、世の中のおカネの量を直接増やそうとしない、という点に注目すべきじゃ。

リフレ派はインフレターゲットを重視している。というのも、リフレ派の重視する実質金利の概念を有効にするには「インフレ率が2%になります」と人々に信じ込ませる必要があるからじゃ。人々が「インフレになる」と信じることをインフレ予想という。もし、誰もインフレ率が2%なると信じなければ、実質金利という考え方が成立しない。だからインタゲは非常に重要になる。もちろん、インフレターゲットに達するまで金融緩和を行う、という指標として重要だ。

消費税の増税に関しては否定的だ。というのも、人々に「インフレになるぞ」と思い込ませたいにも関わらず、消費税を増税なんかしたら、人々のインフレ予想は消えてしまう。予想だけではく、現実的にもインフレ率(増税分を除く)は上がるどころか下がる可能性が大だし、そうなれば、リフレ政策の失敗は目に見えている。実際、2014年の消費増税によってリフレ政策は失速してしまった。

とはいえ、リフレ派はいわゆる「自由主義経済」の流れを汲むため、財政出動に関しては消極的であり、あくまでも「補助的手段」として、必要最低限の範囲で認めているだけじゃ。景気刺激策としては、その基本は金融緩和にあると考える。というのも、自由主義経済では、市場原理を重視するので、財政出動は市場(需要と供給の関係)をゆがめるから良くないと考えるからだ。

従ってリフレ派は、どちらかと言えば、財政収支の黒字化(プライマリーバランス)についても肯定的な考えを持つことになるのじゃよ。というのも、もし財政収支を拡大すれば、それだけ市場をゆがめることになるからじゃ。そのため、できるだけ税収を減らし、財政支出も減らし、政府が経済に関与しない「小さな政府」を指向する。

当然ながら、国債については、あまり増やしたくない。増やすことは、つまり、財政支出を増やすことに繋がりかねないからだ。

そして市中銀行の信用創造については、極めて積極的だ。というのも、リフレ派は世の中のおカネを増やすことをひとつの目標とするが、それはこの「市中銀行の信用創造」によって成されるからだ。リフレ派は直接に世の中のおカネを増やそうとはせず、あくまで、市中銀行からの借金の増加によって世の中のおカネを増やそうとする。

ただし、この方法だと、実体経済だけではなく、マネーゲームにも膨大なおカネを供給することになる。それがバブル経済を引き起こすリスクがあり、経済の不安定要因となる。

<MMT派>

MMTとは現代貨幣理論のことで、おカネの発行の仕組みについて正確に理解することを出発点とする考え方じゃ。間違っても「政府の借金を無限に増やしても良い」という考えではないw。MMTのおカネに関する考え方はまったく正しい。すなわち「現代のおカネは、ほぼすべてが銀行からの借金によって作られている」のじゃ。これがすなわち信用創造である。この場合の銀行とは、日銀も市中銀行も含まれる。

世の中のおカネがすべて銀行からの借金によって作られるのであれば、世の中のおカネの量を増やす、あるいは維持するためには、常に誰かが銀行から借金をしなくてはならない。では、いったい、誰が借金を負うべきなのか?それが問われるのはあまりに当然なのだが、驚くべきことに、それがこれまで真剣に論じられてこなかったのじゃ。アホみたいな話じゃなw。

つまり、政府の借金が増える理由も、現代のおカネのシステム(金融システム)に根本的な原因があることが明白なんじゃ。すなわち、経済規模が大きくなり、世の中のおカネの量が増えれば増えるほど、それだけ多くの借金を誰かが背負わねばならないシステムになっている。

であれば、政府の借金が増えるのは当たり前の現象だし、今日のように、民間が借金を引き受けたがらない時代になると、政府が借金を引き受けなければ、借金の引き受け手が不足して、経済が成長できなくなる。そのように考えるのがMMT派の考え方になる。だから、政府の借金は悪ではなくむしろ「善」となる。

そして、政府が借金しておカネを作り出し、それを財政支出すれば、世の中のおカネの量を直接に増やすことができる。この場合、貸出金利は関係ない。だからインフレ予想があろうがなかろうが、財政支出によって世の中のおカネを確実に増やすことができ、景気を活性化することができる。これは、デフレを脱却するための効果がリフレ政策よりも強いことを意味する。

とはいえ、無限に政府が借金を増やして無限に財政支出を拡大できるはずがない。実際には世の中のおカネの量が増えると消費が拡大して供給が追いつかなくなり(供給制約)、インフレが生じてくる。だからMMT派はインフレターゲットを重視し、その範囲内で財政支出の拡大をすべきだとする。

それらのことから、MMT派は国債の増大は問題としない。また、プライマリーバランスの黒字化が必要であるとも考えない。世の中おカネがすべて誰かの借金から出来ているのだから、むしろ、プライマリーバランスが赤字であることは当然となる。

市中銀行の信用創造については、中立的な立場にある。つまり、リフレ派のように、金利操作によって市中銀行の信用創造を活性化する必要はないが、民間銀行の信用創造に反対するわけでもない。銀行が国債を買えば、それで財政支出ができるからだ。

<政府通貨制度派>

政府通貨制度の考え方は、人によって違いがある。これが絶対という考えはない。自分が考えるところでは、MMTの考え方にとても近いと思う。というのも、「世の中のおカネはすべて銀行からの借金によって作り出されている」という点を認識するところからスタートしているからなんじゃ。

ただし、MMTは「世の中のおカネはすべて借金からできている」という事実を受け入れて、肯定し、それを前提として政策を組み立てようとするのに対して、政府通貨制度派は「世の中のおカネがすべて借金から作られるのはおかしい、おカネが借金である必要はないはずだ」という考えを持つ。

つまり「そもそも通貨発行権を持つはずの国民の代行者たる政府が、なぜ、わざわざ銀行から借金をしておカネを調達しなければならないのか。そして、銀行に国債の金利を払うために国民から税金を徴収するのか。借金をせずに通貨を発行すれば良いではないか。」と考えるのが、政府通貨制度の考え方になる。

つまり、MMTが国債を発行しておカネを作り出すのに対して、政府通貨制度では、おカネを発行しておカネを作り出すのである。一見すると違うように見えるが、「政府がおカネを作り出す」という意味においてはMMTも政府通貨制度も同じである。

そして、政策としては基本的にMMTの考えに近い。例えば政府通貨制度派は、財政出動には積極的である。なぜなら、世の中のおカネを増やすには、財政出動を行う必要があるからじゃ。民間銀行が勝手におカネを増やすことはできないので、おカネを増やすには政府がおカネを発行するしかない。

例えば、現在の日本のおカネ(M1+M2)はおよそ1000兆円であり、これを年間5%のペースで増やすとすれば、年間50兆円のおカネを発行し、これを財政支出として世の中に供給する必要がある。この50兆円が歳入に加えられるのだから、これまでの税収を加えれば、国債を1円も発行せずに100兆円の財政支出がラクラクできる。年金や社会保障の財源問題など、たちどころに解決する。

とはいえ、MMTの場合と同じく、無限におカネを発行して供給すれば高インフレを招く恐れがあるため、通貨の供給量はインフレターゲットの範囲内でコントロールする必要がある。

政府通貨制度の場合、国債を発行する必要がないため、国民が国債の金利を負担する必要はない。そのため、金利負担の軽減分だけ、より多くの財政支出が可能となる。また国債を発行しないのだから、財政が破綻するリスクは、まったくない。よって、消費税の増税の必要はない。

また、歳入が不足しても、不足分は通貨発行で賄われるのだから、プライマリーバランス(財政収支)という概念そのものが存在しない。ただし高インフレにならないように、財政支出の総額はインフレターゲットによって、毎年、見直される必要があることは言うまでもない。

なお、どのような分野に財政支出を行うか、という点については、様々な議論があってよいと思う。自由主義的な立場であれば、ベーシックインカムのような給付金として国民に支給する方が市場を歪める恐れはないが、一方、教育・科学振興や国土強靭化もまた重要であるから、そうした分野への支出も検討されるべきだろうと思う。

<MMTと政府通貨制度の違い>

非常に似ているMMTと政府通貨制度の考え方じゃが、一つ、大きな違いがある。それは、民間銀行の信用創造に対する考え方の違いじゃ。

政府通貨制度の最も大きな特徴は、世の中のおカネは「すべて政府が発行する」ことにある。今日の準備預金制度のように、民間銀行が勝手におカネを作り出すことは禁止される。つまり、政府通貨制度においては、民間銀行の信用創造を停止する。

一方、MMTの場合、民間の信用創造を禁止しない。これはリスクの原因になると考えられる。一つは、主流派がさかんに主張する「MMTはハイパーインフレになる」というものじゃ。というのも、インフレターゲットで世の中のおカネの供給量をコントロールしたとしても、もし、民間銀行の信用創造を放置していたなら、景気過熱に伴って、民間銀行の信用創造が暴走を始めるリスクがある。そうなったら、財政支出を抑えても、民間銀行からのおカネの供給が止まらなくなり、ハイパーインフレに至る恐れもある。

そうした場合、金利を引き上げて信用創造を抑制するという方法もあるが、そもそも金利による通貨供給は非常に不安定で崩壊し易い。バブル崩壊がその例だ。市場が連鎖的に反応するため、暴落、暴騰がおきやすい。金利の引き上げが、経済を混乱させてしまう恐れもある。従って、本来であれば、MMTにおいても、民間銀行の信用創造を停止した上で、政府支出による通貨供給を行う方が、より安定的な経済運営が可能になるはずだ。

また、民間銀行の信用創造を停止することで、主流派がMMTを批判する「インフレが止まらなくなる」という指摘を完全に封じることができる。なぜなら、政府だけがおカネを発行するのであれば、世の中のおカネの量をコントロールすることが容易になるし、勝手におカネが増え続けるといった心配が一切ないからだ。

また、民間の信用創造はバブルとバブル崩壊の主たる原因であるため、MMT政策に伴う財政出動によって景気が過熱すると、資産バブルを引き起こすリスクがある。バブルとバブル崩壊は経済を不安定化させ、人々の生活に多大な悪影響を生じる。政府が国債を発行することでおカネを供給できるのだから、あえて民間銀行の恣意的な信用創造を認める必要はない。

国債は日銀がすべて引き受ければ良い。国債の日銀引受は通貨の発行そのものである。そして、民間銀行の信用創造を禁じることで、バブルとバブル崩壊に伴う経済の混乱を根本的に解決することができる。

と思うのじゃが、なぜか、彼らはそう考えていないようだ。

このように、民間銀行の信用創造に対する考え方において、MMT派と政府通貨派には大きな違いがあるものの、それ以外の部分においては、共通点が多いと思うのじゃ。

(ねこ)
う~ん、やっぱりむずかしいにゃ。でも、なんとなくわかった気もするにゃ。

(じいちゃん)
そうじゃな、今回は各派の違いを比較する記事なので、各派についてさらに突っ込んだ解説は行わなかった。より深い理解のためには、それぞれの派閥の考えを掘り下げる必要はあるじゃろうと思う。まあ、あまり長い記事だと読み飽きてしまうだろうから、このへんにしようと思うのじゃ。

(サイトに同時掲載)



2019年8月12日月曜日

「一億・総公務員社会」を実施せよ

一億・総活躍社会なんてやめて、「一億・総公務員社会」を実現したほうがいいと思います。そして公務員には、もれなく基本給を支給するわけです。これでデフレ脱却間違いなしw。

「一億・総公務員社会」では、とりあえず、日本国民全員を国家公務員として雇用します。赤ん坊から高齢者まで、1人残らず雇用するので、完全雇用まちがいなしですわ(あたりまえ)。名称は「基本公務員」とか適当につける。日本国民はすべて基本公務員。それで、すべての基本公務員に基本給を支給するのです。

現時点で、普通の会社に勤めている人はどうするのか?基本公務員が政府から「派遣されている」ということにします。政府派遣事業w。泣く子も黙る派遣労働w。でもマージンをはとらない。なにせ、国民はもれなく税金を国に払っているわけだから、それがマージンみたいなもの。そして今までの会社の給料に、基本公務員としての基本給が上乗せされるわけです。

現時点で公務員の人は、やはり公務員なんですが、「格が上がります」。クラスアップですわw。といっても、名称を「正規公務員」とかなんとかにするだけですね。そして、いままでの給料に、基本給が上乗せ。

こうして、すべての国民を公務員化することで、全国民の所得が増えるわけ。といっても、基本公務員の基本給として、いきなり法定の最低賃金の額を払えるかというと、さすがにそうはいかないので、例えば「基本給=毎月5万円」くらいの支給からスタートするわけです。

無職のヤツにカネを配るな、という緊縮脳の人がいるので、全国民を公務員として雇用してしまえば問題ないでしょうw。無職の人はいなくなりますし、国民におカネが行き渡るので、デフレ脱却間違いナシですよ。

基本公務員の仕事は何かって?それは、「きちんと生活すること」です。犯罪を犯さず、ルールを守って、みんな仲良く生活するのが仕事です。あるいは選挙に行って投票する、地域の活動に参加する、ゴミをポイ捨てしない。それって、結構大変なのです。実際、出来ない人がおおいですよねw


みんなが気持ちよく生活できる社会にすること、それが基本公務員の大切な仕事です。