2019年3月19日火曜日

MMTに反対するなら富裕層に重税を

世界の投資家の中にはMMT(現代金融理論)を否定する人が少なからずいるようだが、彼らは自分達の所有している金融資産の多くが、政府の借金のおかげで成り立っているという事実から目を逸らせている。

現代の経済活動はバランスシートという帳簿の仕組みに基づいて運営されている。例えば金融資産もバランスシートによって記述されることで意味を持つ。これは会計の原則だ。さて、バランスシートにおいて金融資産がどのように記述されるかと言えば、それは常に負債と対になって記述されるルールである。

ややこしいので、簡単に言えば、誰かが金融資産を保有するということは、それと対になって、誰かが金融負債を負う事になる。つまり、誰かが借金しなければ、金融資産は1円も生まれない。もちろん、借金といっても、広く言えば借り入れだけでなく、債券、証券も含まれる。そして、当然ながらそこには「国債」が含まれることになる。

世界中の政府のほとんどは「赤字」である。つまり、政府が借金を抱えているのである。ということは、会計のルールに基づけば、それと対になって金融資産が生まれているはずである。では、その金融資産は誰が保有しているのか?紛れもなく、富裕層の人々である。

世界の1%の富裕層が、世界の富の50%を所有するとの研究レポートもあるほどだ。つまり、世界中の政府が借金することで生み出された金融資産の大部分を、投資家のような超富裕層が膨大に溜め込んでいるのである。彼らの金融資産は、いわば「政府の借金のおかげ」で出来ているのである。

その富裕層が「政府の借金を増やすことはけしからん」と主張しているのである。彼らには、自分らの資産が政府の借金によって成り立っているという自覚がないのだ。

ところで、MMT(現代金融理論)について簡単に言えば、「政府が財政赤字になるのはやむを得ない」という考え方だ。つまり、政府の財政(プライマリーバランス)が赤字なのは当然であり、ムリに財政再建する必要はない。政府の赤字が拡張し続けることも問題ではない、という考え方になる。財務省が聞いたら発狂間違いナシの理論であるw。

しかし、すでに説明したように、金融資産は金融負債によってのみ、つまり、誰かが借金を負わなければ1円も生まれない。もし、みんなが貯蓄を増やしたいと思うなら、その代わりに誰かが借金を負わなければならないのだ。では、だれが借金を負うべきなのか?

家計に借金を負わせたら、自殺者が激増してしまうだろう。また、景気が良くないから企業も借金をしたくないという。ならば、政府が借金を負うしかない。当然の帰結なのだ。

それでも、もし、政府が借金を増やさないのであれば、世の中のおカネの量は増えなくなる。そうした状況でも、経済強者である富裕層の貯蓄だけは増え続ける。世の中のおカネの量が増えないのに、富裕層の貯蓄が増えるとすれば、そのカネはどこからくるのか?そう、庶民の貯蓄が減って、富裕層に流れるのである。

つまり、資産格差がますます拡大することになるはずだ。

こうして庶民が貧しくなれば、必然的に税収は減ってしまうことになる。ますますプライマリーバランスは悪化する。となれば、残された方法論は明白だ。政府が借金して生み出されたカネを、しこたま貯めこんでいる富裕層に、容赦なく重税を課すのである。そうすれば、プライマリーバランスを改善することは簡単にできる。

というわけで、MMTに反対するのであれば(=政府の負債が増えることを許さないのであれば)、富裕層の資産に重税を課さなければならないのである。


2019年3月15日金曜日

「銀行ごっこ」やればおカネがわかる

おカネについて本がいろいろ出ているようですが、おそらく、どれを読んでもおカネの仕組みは理解できないと思います。おかねの仕組みを理解したいなら「銀行ごっこ」をやればいいと思います。

つまり、勉強会なんかを開いて、参加者に「銀行の役」を演じてもらうわけです。銀行役の人が、会社役の人に、実際におカネを貸し出してもらうわけです。そうすると、銀行が信用創造でおカネを貸し出すしくみが誰にでもよくわかると思うのです。

例えば、Aさんが銀行役になり、まず資本金100万円で銀行を起業します(金額等は、あくまで遊びです)。この資本金100万円は銀行の金庫に保管されています。

Aさんが会社役のBさんに80万円を貸します。ここで、Aさんが銀行の金庫から80万円をBさんに貸すと思うでしょうが、そうではありません。それをやるのは、銀行ではなく、貸金業になります。それ普通の貸し借りであって、銀行の行なう信用創造による貸出ではありません。

銀行は現金を貸しません。預金を貸すのです。これが信用創造です。このときに重要なのが「預金通帳」です。銀行は貸出としてBさんの預金通帳に「80万円」と記帳します。そして、80万円の貸借契約をBさんとと結びます。

現金は減ることなく、そのまま銀行の金庫に100万円あります。

次に、Aさんが会社役のCさんに50万円を貸します。同様に、Cさんの預金通帳に50万円と記帳し、貸借契約を結びます。

さらに、会社役のDさんに100万円を貸します。同様にDさんの預金通帳に100万円と記帳します。

これで、銀行のAさんは、B・C・Dさんに合計で230万円の預金を貸し出しました。銀行の金庫にはそのまま100万円があります。これが信用創造によるおカネの貸し出しです。銀行の資本金は100万円しかありませんが、230万円を貸し出しました。

この段階で、多くの人は怪訝な顔をするはずです。一般の人が信じ込んでいる銀行とは違うからです。多くの人は、銀行が金庫にあるおカネを貸すものだと誤解しています。大変な間違いです。銀行は預金を作り出して、貸し出すのです。だから「信用創造」なのです。創造するのです。

こうして230万円の預金がポンと作り出されましたが、取引は問題なく行なわれます。例えば、BさんがCさんから事務用品5万円を買うとすると、Bさんの預金通帳から5万円を引き、代わりにCさんの預金通帳に5万円を加算すれば決済完了です。

つまり、取引に現金を使う必要はないのです。
銀行が作り出した預金のみで取引が行われます。

じゃあ、銀行の現金は何のためにあるのか?一つは、現金を手渡しして取引したい場合があるためです。そのため、一時的に現金が銀行の金庫から引き出される場合があるのです。

例えば、Bさんが事務用品を現金の手渡しでCさんから買う場合、BさんがA銀行から5万円を引き出し、Cさんに手渡しで支払います。その後、Cさんが5万円をA銀行に預金します。これで、A銀行の現金は一時的に引き出されましたが、元に戻ります。100万円のままです。

もう一つは、銀行の貸出総額を制限するためです。というのも、信用創造の原理だけで言えば、すでに見てきたように、銀行は無限に預金を作り出して貸すことができます。そんなことをしたらどうなるか?世の中がカネだらけになって「ハイパーインフレ」になるかもしれません。

だから、銀行の貸出を制限する、つまり、信用創造を制限する必要があります。そのため、銀行の貸出額に応じて、一定の割合(準備率)の現金を、日本銀行に強制的に預金しなければならない仕組みになっています。これが準備預金制度ですが、これはややこしいので、今回は説明しません。

というわけで、おかねのしくみを理解するには、実際に「銀行の役」をやって、おカネを貸してもらうシミュレーションを行うのが、最もわかりやすいかも知れませんね。


2019年3月11日月曜日

おカネの価値は信用で決まる?

おかね通貨)の信用、という言葉をマスコミや御用学者は好んで使うようです。そのため、多くの人がおカネは信用によって価値が決まると誤解しています。これは大変な間違いです。

そもそも、信用、という言葉はまったく科学的、学問的でありません。抽象的であいまいであり、口先三寸でなんとでも言えるからです。客観性も乏しい。数字で表すこともできません。ただし、直感的で印象的で宗教の教本のなかで用いるには適しているでしょう。

ですから、もし、科学的、客観的におカネの価値を考えるのであれば、信用という言葉ではなく、例えば、通貨と財の交換レートである物価、物価の変動率であるインフレ率として定義されるべきものです。

信用という抽象的な表現によれば、おカネの量を増やすと、信用が薄まって、おカネの価値が毀損する、といいます。驚くべきことに、本来は学問的であるはずの経済学者の中にも、こんな抽象論を堂々と述べる人がいたりするので、腰が抜けるほど驚いてしまいます。ところが、学者先生が言うから、こんな抽象論でも一般庶民は少なからず騙されることになります。

しかし、おカネを増やせば単純にインフレになるわけではありません。日本のマネーストックの供給すなわち、おカネの伸び率は、バブル期に比べれば落ちたものの、それでも毎年2~3%程度増え続けています。しかし、インフレ率はその半分にも届かないのです。なぜなら、おカネが増えても、使う人が少ないからです。これは「おカネ信用説」では説明できません。

つまり、信用ではなく、おカネの価値は市場原理で決まります。需要と供給の関係です。需要に対して供給が多ければ、おカネの物価はあがり(デフレ)、需要に対して供給が少なければ、おカネの価値は下がります(インフレ)。仮におカネが増えても、需要が増えなければ、おカネの価値は下がらないのです。もちろん、グローバリスムが発達した今日は、貿易や為替といった要因が絡んでくるため、単純ではありません。

しかし、基本的なおカネの価値決定のメカニズムは、需要と供給の関係にあります。信用というあいまいな概念で説明できるものではありません。信用のあるなしは、口先三寸で、どうとでも言えてしまうからです。

次に、通貨の価値を、財との交換の保証であると定義するなら、それは「法定通貨」であり、「強制通用力」になります。法律と国家による強制力によって交換が保証されています。ですから、強制通用力が通貨の信用である、と表現するならアリだと思います。法貨でなければ、保証は低いものになります。

例えば、市中銀行は信用創造によって、事実上、恣意的に通貨を発行しており、いわば「信用の水増し」を堂々と行なっています。しかし、それら銀行が発行する信用通貨が信用力を有するのは、それが「法定通貨」だと法律で認められているからです。

銀行と言うシステムが誕生した昔の時代では、銀行の発行する銀行券通貨)は、法定通貨ではなく、それぞれの銀行ごとに違ったものでした。国家権力による保証はありませんので、その価値を保証するには金(ゴールド)との交換が可能である必要があり、ゆえに、銀行券は兌換紙幣である必要がありました。

といっても、銀行は、兌換に必要十分な量のゴールドを保有しているわけではないため、取り付け騒ぎが生じると、預金封鎖がおきます。そもそも、信用と言っても綱渡りなのです。

今日の銀行システムでは、法律によって強制的におカネの信用が担保されています。そのため、ゴールドによる裏付けは必要なくなりました。

しかし、法律は日本国というシステムがなければ強制力を失いますので、日本国がおカネの信用の要になります。そして、途上国に比べて日本の通貨が圧倒的に高い価値を有するのは、日本の経済力がとても大きくて生産性が高いからです。もし、カネ不足によるデフレを放置し続ければ、やがて日本経済がガタガタになってしまうでしょう。それこそが、おカネの価値を低下させる原因になるのです。

しかし、そうしたメカニズムも、「信用のあるなし」で説明することはできません。なにしろ、おカネを発行したら、信用が薄まるという理屈しかないからです。




2019年3月8日金曜日

政府債務の原因は「世の中のすべてのカネが借金」だから

財政再建を考える上で必要不可欠の知識は「世の中のすべてのおカネは借金からできている」ということ。これを抜きに国の借金問題は考えられません。

世の中のすべてのおカネは借金から作られます。これは、わたしたち国民が最も理解すべき基本常識です。こんな常識も知らないまま政治や経済を考えることなど、笑い話にしかなりません。

「世の中のすべてのカネは借金だ」という、現代のおカネのしくみを正しく理解することが、財政問題を論じるうえで最優先です。なぜなら、「世の中のすべてのカネは借金からできている」のであるなら、国の借金に対する人々の考え方は大きく違ってくるはずだからです。

しかしなぜか、そのことが新聞やテレビで報道されることはありません。いわゆる「報道しない自由」です。もし、それが報道されたなら、多くの国民が「それって、何か変じゃね?」と気付いてしまうからです。

しかし、財務省とその御用マスコミが消費税の増税を焦るあまり、景気がイマイチ悪いにもかかわらず、暇さえあれば「国のシャッキンガー」「消費増税まったなし」「国民は痛みを受け入れろ」の報道を繰り返すため、いい加減にウンザリする人が続出。ネット上では、増税ボットのような財務省の馬鹿さ加減にぶちきれる人が増加しています。やぶ蛇みたいなもんですね。景気が良くなるまで大人しくしていればいいものをww。

そのおかげで、ネット上では「国債を減らすことは、おカネをゴミ箱に捨てることと同じである」と理解する人がどんどん増えてきました。つまり、世の中にあるおカネが、すべて借金から作られていることが、ネット上ではバレバレになってきつつあります。

もちろん、新聞やテレビは無視しています。ですから、新聞やテレビしか見ない情報弱者の人々は、そのことに気付くことは少なく、まだまだ全国民の金融リテラシーは低い状態にあると思われます。これが、財政再建を正しく理解しないまま、政治が増税へ向かって暴走するリスクを高めています。

世の中のすべてのおカネは借金から出来ている。つまり、誰かが銀行(日銀あるいは市中銀行)から借金することによってのみ、おカネが世の中に供給される。もし、企業も家計も借金を減らそうとするならば、政府の借金は必然的に増加することになる。

という話の動画を制作しました。今回はその第1話であり、導入部分になります。第1話はたいへん大雑把に説明してますが、第2話では、その内容をもう少し詳しく説明する予定です。

なお、銀行制度の根幹である「信用創造」は、金融の知識のない人が始めて聞くと頭が大混乱になるので、それは全部すっ飛ばし、正確性を犠牲にして、わかりやすさ優先で説明しています。

「財政再建の必要なし」第1話
https://youtu.be/E8Z-iRoxQYY

※記事アップ直後に、動画再生できない事態が発生しましたが、修正しました。ご迷惑をおかけしました。