2016年8月9日火曜日

マイワシの生態研究を推進すべき

近年、ずっと不良続きだったマイワシが徐々に増え、豊漁になりつつあると言います。平成16年に5万トンだったマイワシの漁獲量は平成26年には20万トンに回復しました。とはいえ、マイワシの最盛期だった1980年代には年間400万トンを超えるマイワシが水揚げされていた事を考えると、まだまだ回復したとは言えません。

ところで年間400万トンといえばとんでもない量です。何しろ毎年の日本のすべての漁獲量の合計が400万トン程度に過ぎないからです。400万トンもマイワシが取れたら、安くておいしいマイワシが食べられるだけでなく、マイワシを餌にして養殖されている魚の値段も安くなるでしょう。日本の水産物の自給率は60%ですから、自給率の向上にも寄与すると思われます。

では、なぜ1990年に入ってマイワシが激減したのでしょう。普通に考えると400万トンも獲ったら、獲りすぎで全滅したと思うでしょう。ところがそうでもないのです。マイワシはとんでもなく増えるので、年間400万トンくらい獲っても減りません。ではなぜ減ったのか。調査によれば、何らかの原因によって、子供のマイワシが大人になる前にほとんど死んでしまったことがわかっています。しかもそれが数年にわたって続いたため、マイワシが激減してしまったと考えられています。

では、なぜ数年にもわたってマイワシの子供の生存率が低下してしまったのか、確実な証拠はまだ見つかっていませんが、地球規模の周期的な気候変動に伴う海洋環境の変化が指摘されています。一説には、この変化によって、マイワシの子供の餌が少なくなってしまい、子供の生存率を低下させたのではないかと言われています。しかしまだ仮説の域を出ません。

もしそれが本当だとすれば、海洋の環境がマイワシの成長に良い状態で保たれるなら、極めて膨大な量のマイワシが毎年毎年、生産されることになるのです。海洋環境の変化を人間がコントロールすることは難しいのですが、もしそれによって餌が不足しているだけなのであれば、何らかの形で餌を増やすなどの方法によってマイワシの子供の生存率を高めることが可能になるかも知れません。

マイワシの子供の餌は動物プランクトンですが、動物プランクトンの餌となる植物プランクトンが増えれば動物プランクトンも増えます。植物プランクトンは陸上の植物と同じように肥料(栄養塩)があると爆発的に増えます。これを利用して、マイワシの子供の餌環境を、場所とタイミングを適切に選んで改善してやれば、マイワシの豊漁をずっと維持し続けることが可能になるかも知れません。

もちろん、マイワシの増殖は今の段階では夢物語に過ぎません。まだまだマイワシの生態については研究が十分ではありませんので、こうしたことが可能かどうかすらわかりません。しかし、日本は世界で7番目に大きい排他的経済水域を持っており、しかも基本的に豊かな海なので、海洋の資源開発において日本は他国よりも有利です。政府には、未来技術の育成としてぜひ海洋資源の生産技術の開発を推進していただきたいのです。