2019年5月10日金曜日

MMT(現代貨幣理論)のステップ論法

MMT(現代貨幣理論)について考えるとき、いきなり結論の是非で騒いでも混乱するだけです。段階的に検証をすることをおすすめします。そのほうが、ずっとわかりやすいでしょう。

段階的な検証、これを「ステップ論法」としておきます。説明します。

①現代の貨幣(現金および預金)は、すべて銀行(日銀も含む)からの借金によって作られている、という「事実」をみんなで確認する(ここが貨幣理論に当たる)。つまり、貨幣はすべて負債として発行される(硬貨は除く)。

②ゆえに、もし企業や家計のような民間部門が十分な額の借金をしないなら、世の中のおカネの量が不足して、需要不足つまりデフレ状態を生み出す、という事実をみんなで確認する。ちなみに金融緩和政策とは、民間部門に借金させることで、世の中のおカネを増やすための政策である。

③従って、デフレ環境下においては、民間部門の借金が不十分であるため、代わりに政府が借金を負う事によって、世の中におカネを供給することで、おカネの量を維持する結果になっている、という事実をみんなで確認する。ゆえに、デフレ環境下においては、政府の借金は必要不可欠であって、財政再建してはいけないことが理解される。

④仮にデフレ状態が解消しない、あるいは、景気回復のテンポが極めて遅い状態にあるのであれば、政府の借金を増やすことによって、経済を回すために十分なだけのおカネを世の中の供給することが可能であることをみんなで確認する。

⑤では、実際にどれだけの国債をさらに発行すべきか、については、様々な議論があって良いし、計量経済学の観点から予測することも可能でしょう。ただし、あくまでも①~④を踏まえたうえで、議論すべきです。

さて、MMTに激しい拒絶反応を示しているリフレ派ですが、はたして、①~⑤のステップの、どの段階で異論を唱えるのか。そうすることで、論点は明確になると思います。①~③は「事実」なので、これに異論を唱えるとなれば、かなりイタイことになるでしょう。

④については、政府の借金を増やすのではなく、あくまで、民間部門が借金を負うことで、世の中におカネを供給すべきだ、とリフレ派は主張するかもしれません。何が何でも、民間に借金させなければ気がすまないわけです。

①の段階から激しく拒否反応を示すのが新聞マスコミや御用学者、それに財務省でしょう。彼らのこれまでの主張が「ウソだったのか!」となるからですw。しかし、このさいですから、事実関係を明確にするチャンスなので、大いに議論してほしいですね。①~③をスルーしてはいけません。マスコミや財務省は必ず逃げますので、国民の皆さんは、ぜひ監視してほしいですね。

というわけで、MMTについては、いきなり結論部分、つまり、「政府の負債は問題ないから、国債を発行して財政支出を増やせ」という話の是非を議論してはいけない、ということをご理解いただきたいと思います。